ナナ話 おっさんとリトライ
野営も終わり、先を目指して進んでいた。
ちなみに、昨晩はあまり魔物も出ずに、出ても昼間のような集団でも魔物は出なかった。もしかしたら集団で出現するのは昼になにか原因があるのかもしれない。
ちなみに、あのあとの見張りの人達とはあまり話が合わず、退屈な夜を過ごした。
ブーーーン
しばらく進んでいると、ちらほらとバトルブンブンが現れ始めた。
しかもその数は進むにつれて増えている。
間違いない、この先にクイーンブンブンがいるのだろう。
最初はバラバラだったバトルブンブンたちも次第に統率の取れた動きをし始めた。
「どうするんですかっ、オウカさん!?この数は対処しきれませんよ」
「大丈夫だ。もうそろそろ相手は攻撃してこなくなるはずだ」
このバトルブンブンたちには女王の元へ餌を運ぶ役割があるはずだ。魔物は基本的に生きている生き物を殺して食う習性がある。
だから前回のようにクイーンブンブンの方へと向かうように誘導してくるだろう。それを証明するかのように一か所だけバトルブンブンがいないスペースがある。
「あそこに向かって進め、攻撃してくるやつ以外は基本的に無視でいい」
ゆっくりと、警戒しながら進んだ。
元々集団で出現する魔物ではないためか何匹か攻撃してきたが、難なく倒した。
しばらく進むとバトルブンブンたちがいない開けた所に出た。
目の前には、前回のぼることのできなかったどこに続いているのかわからない階段。
ブーーーーン
不気味な羽音を立てながらバトルブンブンたちが周りを囲みだした。
囲まれていたところが1箇所開けてそこから二匹の巣を持ったバトルブンブンが現れた。
「来るぞ!!」
掛け声とともに皆が武器を構える。そしてそれと同時に巣から隻腕のクイーンブンブンが現れた。
あのときのクイーンブンブンだろう。
覚えているのかこちらを向いた瞬間目を赤くして「プシュー」と息?をはいた。
クイーンブンブンがジョーに向かって鎌を振りかざす。
ジョーはそれを大剣で正面で受け、そのすきに横からアイトが攻撃を入れる。
見事な連係プレーだ。
緑の血が噴き出たが、傷が浅かったようで何事もなかったかのようにホバリングしている。
アイトが鎌のない右側から攻める。振り向いて鎌で合わせようとする。その瞬間、ジョーが背中を切りつけようとするが
ギィ--------ン
金属音とともにジョーの大剣がはじかれた。
ジョーの大剣をはじいたのはクイーンブンブンの羽。ある程度力のある飛行型の魔物は生命線である羽が弱点にならないように、切られてもすぐに再生するか、羽の強度がとても強くなっている。そして、クイーンブンブンは後者の方だったようだ。
ジョーの攻撃を防げたのが嬉しかったのか「キシキシ」とクイーンブンブンが笑う。
だが、ちょうどその直後、後衛の冒険者たちが周りのバトルブンブンを倒し終わった。
「次はサポーターはジョーたちの援護に、魔術師とアーチャーは巣を撃ち落とせ」
俺の指示通りに動き、巣を撃ち落とす。
すると、そこから何匹かバトルブンブンが顔を出した。
「よし、今だ。魔術師は炎魔法で巣を焼け」
魔術師達がインフェルノ(炎を出すBランク魔法)を放つ。
するとしばらくして二匹クイーンブンブンが出てきて、バトルブンブン達は我先に巣から出ようともがいていたが、入口が詰まって出られずに死んでしまった。
そしてちょうどそのころ、サポーターを加えたジョーたちの方も決着が着いたようだった。
いくらAランクの魔物といえど!片腕を失ったうえにBランクの冒険者二人と幻影魔法をつかえるサポーターを前に勝てるはずもなく、あっさりと負けてしまった。
残るは二匹のクイーンブンブンとなったわけだが…………
「よしっ、行くぞー!!」
「「おおー!!」」
1匹目を倒してテンションが上がったジョーの掛け声にほかの冒険者達が応える。
すぐにサポーターが幻覚魔法をかける。すると、クイーンブンブン同士で戦いを始めた。
そこでアイトが片方のクイーンブンブンに攻撃を仕掛ける。
しかし、タイミング悪く幻覚魔法が切れた。
クイーンブンブンがアイトに気づき、鎌で迎え撃つ。
鋭い金属音とともにアイトの盾が弾け飛ぶ。
そして、もう一匹のクイーンブンブンがアイトの腹を鎌で切りつけたが、切られたそばから回復魔法で治っていく。
「クイーンブンブンを別れさせるぞ」
「一匹を前衛とヒーラー。もう一匹を魔術師、アーチャーとサポーターだ」
すると、「そっちの前衛は誰がやるんですか」とら鎌を受け流しながらジョーが言う。
「大丈夫だ、そっちは俺がやる。こんなけサポーターがいりゃ多分お前らが来るまでは持つだろう」
「分かりました、それで行きましょう」
そう言ってジョーは右方向へと走り出した。二匹のクイーンブンブンが追いかけていく。
そのうち一匹を俺が攻撃してこちらに気を向かせる。
「サポーター、俺にターゲット(注目させる魔法)と(ハード防御力をあげる魔法)をかけろ」
サポーター達が俺に魔法をかける。その直後、俺に向かってクイーンブンブンが攻撃を仕掛けてきた。
当たる寸前のところでかわし、剣を鎌に叩き込む。だが、鎌は思いのほか固く弾かれてしまった。
弾かれた反動で一瞬動けなくなる。その一瞬を狙って攻撃を仕掛けてきた。
その瞬間、後方から炎弾が飛んでくる。
ナイスタイミングだ。
炎弾を防ごうと鎌を防御に使い、攻撃はされなかった。
そうだ、このまま保てばジョー達が来るはずだ。ここは、防御に徹するべきだ。
そう思って俺は防御に徹するのだった。
******
桜華たちがクイーンブンブンと戦っている頃、ジョーたちもまたクイーンブンブンと戦っていた。
クイーンブンブンが鎌を振り下ろす。それをジョーが防ぎ横からすかさずアイトが剣を叩き込む。
だが、もう片方の鎌がまるで別の生き物のように動き目の前に現れてそれを防ぐ。
さっきのクイーンブンブンは片腕をなくしており、実力であればBランク相当でしかなかったが、本来クイーンブンブンはAランクの魔物、いくら実力がある冒険者とはいえBランクごときで勝てる相手ではないのだ。
だが、回復魔法の支援とジョーたちのセンスにより、大したダメージを受けることもなく体力が尽きた方が負けという消耗戦が始まったのであった。
******
ダメだ、押し切られる。
最初こそはダメージを受け流していたものの、だんだんと疲労がたまるにつれて腕が鈍っていき微弱ながらもダメージを食らうようになってた。
それにしてもジョーたちが遅い、向こうも向こうでてこずっているのだろうか。
それにしても硬い外骨格が鎧のように全身を覆っている。
何故か弱点腹だけが柔らかいが………………ん?
鎧…………腹……
「そうか!」
俺が突然叫んだのに後衛が多少驚くが、そんなこと考えてられない。
分かった、分かったのだ、クイーンブンブンのもう一つの弱点が!
「今から俺は全力で攻撃をする。全力でフォローをしてくれ!!」
唖然とする後衛たち、そりゃそうだ、今まで全力で防御に徹していたのがいきなり攻撃するなんて言い出すんだ。
だが俺が「いいから早く!」と言うと、ステータスアップの支援魔法をかけられる限りかけ始めた。
鎌をギリギリで避けながら懐へと潜り込む、反対のかまも来たが剣で防ぎ引かない。
そして一か八か、攻撃を仕掛けた。
もう一つの弱点である可能性がある、鎌の付け根の関節へと。
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あれから数十分ジョー達はギリギリのところで戦っていた。
ヒーラーも魔力切れで、次攻撃をくらったら死ぬ。
その緊張感がジョーたちの感覚を最大限まで引き伸ばしていた。
引き伸ばされた感覚の中、ギリギリのところで攻撃を避け、弾かれない程度に全力で攻撃を叩き込む。
精神面的にも、体力的にも限界を超えたその攻防にジョーとアイトは慣れ始めていた。
そんな時、二人の脳内で同時に『ピコーン、スキル「死線」を習得しました。』
と、音が鳴る。その音に驚いて一瞬体が止まる。
そして、この戦闘の中でその一瞬が命の危険に繋がる………………ことは無かった。
それはスキルのためだ。彼らが手に入れたスキル「死線」は死を感じた時に、その時間の感覚を何倍にも増やし、それに応じてて身体能力を一瞬だけ上げるものだった。
そしてその直後、彼らの後ろから「鎌の付け根を狙え」と桜華の声が聞こえた。
彼らは何も考えなかった。死なないことにだけ集中して、鎌の付け根を狙う、「死線」によって引き伸ばされた感覚の中で正確に、それぞれが違う鎌の付け根を切りつける。
すると、驚くほど簡単に鎌のついている腕が取れた。
どんな鎧にも隙間があるように、この魔物、クイーンブンブンの外骨格にも隙間があった。
それが、関節に当たる部分だった。
かまのないクイーンブンブンが、逃げようと羽をばたつかせる。
鎌を切り落とした途端「死線」の効果が切れるが、鎌のないクイーンブンブンを倒せないほど彼らは弱くはない。
結局そのままクイーンブンブンの腹を剣で切り裂き、なんとか死人を出さずクイーンブンブン戦を終えたのであった。
クイーンブンブンを倒した桜華一行。
次は前回桜華がたどり着くことの出来なかった階段を登ることにした。
階段の上ではどんな世界が広がって、どのような魔物が潜んでいるのか。
次回おっさんとダンジョン「おっさんと二階層」乞うご期待。
今回は長めになりました。基本的に戦闘は1つの話で終わらせようと思います。
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