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おっさんとダンジョン  作者: シロガネ
5/11

ヨン話 おっさんとAランク

 光が収まり目を開ける。


「………何がおきたんだ?」


 状況が、飲み込めない。ついさっきまでダンジョンにいたはずがいつの間にか、ダンジョン前の広場にいる。辺りを見回すと、ほかの死にかけの冒険者たちや死体も一緒についてきていた。そして、どこか違和感のある右腕に目を落とすと光の文字のようなものが浮かんでいた。

 前を通る通行人が次々と足を止めていく。そして、人だかり後できた頃、「何があった!」とギルド長と数名のギルド職員が人混みを分けて入ってきた。


「…………なっ、これは?」


 あまりもの光景にギルド長も言葉を失う。


「…………うっ」


 倒れていた冒険者のうちの1人が、意識を取り戻したようだ。


「ここは…………外……か……かはっ」


 意識を取り戻した冒険者が血を吐く。


「………お、おい。はやく、はやく回復魔法を使える者を連れてこんか!!」


 ギルド長が叫ぶ。すると、啞然として固まっていたギルド職員があたふたとしながらギルドのある方へ走っていった。

 俺も状況が飲み込めてきて少しは冷静になってきた。


「『エリアヒール』」


 ギルド長が魔法をかける。すると、俺の体の小傷が塞がった。ほかの冒険者たちも少しは痛みが和らいだようだ。


「すまんの、ワシにはこのくらいしか出来んのじゃ」


 ギルド長が申し訳なさそうにしながら近づいてきた。


「いえ、小さい傷は塞がりましたし、彼らもだいぶ痛みが和らいだようです」


「ああ、それなら良かった。救護が来るまで、何があったか話を聞いてもいいかな?」


「ええ、実は______」


 出来事をあらかた話した。だが、ダンジョンの中で聞こえた声については伏せておいた。この世界から来たのではないことがばれると色々と厄介なことになると思ったからだ。だから必然的に右腕の光の話もしなかった。


「………そんな事があったのか。じゃあ、おぬしら以外は全滅したいうことでいいのかね?」


「おそらくは」


「ギルド長!連れてきました!!」


 先程走って行ったギルド職員が、7,8人の冒険者を引き連れて戻ってきた。


「はやく、治療してやってくれ」


「は、はい。皆さん状態が悪い方から治療をお願いします」


 治療が始まった。俺は治療する必要もなかったため、いつも泊まっている宿に戻ろうとすると、ギルド長が「ちょっと待て」と、声をかけてきた。


「はい、何ですか?」


「いや、その右手のことを含めてまだ聞きたいことがあるんでな。また明日昼ごろにギルドに来てくれんか」


 やっぱり右腕のことは気づいていたか。何とかうまく説明つけれるようにしとかないといけないな。


「はい、わかりました」


「じゃあ、自分はこれで」


 そう言って俺は宿へ帰った。



 ******



「はぁー、どうしたものか」


 宿のベットに寝っ転がりながら右腕を見る。

 発光は収まったものの、そこには刺青のように文字が書き込まれていた。おそらく俺にしか読めない字で。


「『管理者権限Lv1』か…………スキルでもないしなぁ」


 スキルとは同じ行動を繰り返したり、特定のアイテムを使うと手に入れられる能力で、その能力の名を念じることでその能力を使えるようになるものだ。

 だが、この『管理者権限Lv1』はいくら念じても反応しなかった。

 ダンジョン内だけでしか使えない能力だろうか。だが、そんな限定的な能力聞いたことも見たこともない。

 じゃあ、明日ギルド長に話すときに何と言えばいい?

 ダンジョンの中でしか使えないスキルだと言ってみるべきだろうか。聞こえてきた声の内容から考える限りダンジョンの中では使えそうだが、そういってしまった場合、もし使えなかった時がどうしようもなくなる。


「はあ、………どうすりゃいいんだよ」


 だめだ、ここで弱気になってしまっては。死んだタイトやガルム、その他の冒険者。そんなに親しくはなかった、それどころかガルムに対しては嫌悪感さえ抱いていたものの、やはり同じ釜の飯を食った仲間が死んだのだ。ここで弱気になっていたらあいつらに顔向けできない。


「考えるのはもうやめて寝るか」


 明日は明日の俺が何とかするだろう。そんな投げやりな考え方で俺は意識を投げ出した。

 -----------------------------------------------------------------------------------------------


 __________夢を見ている。


 明晰夢とかいうやつだろうか、意識ははっきりとしている。

 周りを見渡すと、そこには本がずらっとならんでいた。

 すると一冊の本が俺の前にやってきて勝手に開いた。

 開いたページに映し出されたのは懐かしい風景。詳しくはわからないがそこが日本というところの東京という場所だということはわかる。

 たぶん、今日ダンジョンで思い出したからこんな夢を見ているのだろう。

 だが不思議なことが一つあった。映し出された人々は皆、絶望した顔をしているのだ。


「………なんでこんな顔をしているんだ」


 すると頭の中にある一つの単語が思い浮かんだ


「『インセキ』?」


 呟いたとたん激しい頭痛が襲ってきた。


 __________だめだ、それを思い出すにはまだ早い


「早いって何が…………うっ」


 そうして俺の意識は深い闇の中に落ちた。



 -----------------------------------------------------------------------------------------------


 目を覚ます。そして着換え、朝食を済ませてギルドへ向かった。

 ギルドに入ると、様々な視線が向けられる。好奇の目からどこか軽蔑が混ざったような目まで。


「すいません、オウカです。ギルド長に用事があってきたんですが……」


「はい、オウカさんですね。少々お待ちください」


 そういってギルド職員は奥の方へと消えた。

 そわそわする。普段目立ってなかっただけにこれだけ色々な視線を送られるのにはなれていない。

 どんな行動をとっていいのか分からずモジモジとしてしまう………………よくよく考えるとおっさんがモジモジするのは気持ちが悪いからやめよう。うん。

 と、まあそんなことを考えているとギルドの職員から案内された。


 コンコン


 職員がノックをする。すると、「どうぞ」と重々しい声がした。その声に思わず少し緊張してしまった。


 ギィ


 と、少し重いドアを開ける。するとそこには長い机にギルド長と数人が座っていた。


「…………あ、あの」


「どうぞ、そこに座ってくれ」


 一番奥に座っているギルド長が俺に座るように促す。この人達が誰なのか聞きたかったのだが、まあここは指示に従った方がいいだろう。


「では、さっそくダンジョンで何があったか聞いていきたいところだが、その前に自己紹介をしようか。わしは知ってるとは思うがここ「モノ」のギルドマスターと『ギルド』の(おさ)をしている。ムージという」


「じゃあ次は私が_________」


 と、一通り自己紹介を終えた。どうやら彼等はそれぞれ『ジ』『トリ』『テトラ』『ペンタ』というこの国の五大都市のギルド長らしい。

 ちなみにエルフの金髪の美女が『ジ』のギルドマスターで名をアリス。

 獣人のムキムキのおっさんが『トリ』のギルドマスターで名をベン。

 ガリガリで眼鏡をかけた少し不気味な男が『テトラ』のギルドマスターで名をヘイス。

 10代前半くらいの少年が『ペンタ』のギルドマスターで名をタング。

 と言うらしい。


「それで、なぜギルドマスターたちが集まっているのか聞いてもよろしいでしょうか?」


「ああ、それについては後で話をさせてもらう。先にそちらから話してもらってもかまわんか?」


「…………わかりました」


 しぶしぶ俺は、ダンジョンないであったことを話した。そして、右手のことはスキルが開花したとの説明をすると、最初事こそは否定されたものの、それを否定する根拠がないと言うと、しぶしぶ納得してくれた。


「…………まったく信じられない話です」


 アリスが呟く。そしてそれに同意するようにほかのギルドマスターも頷いた。


「だが、ほかの生き残った冒険者が話していた事とあらかた一致しておるじゃろう」


「うーん、たしかに。認めたくはないような状況ですが認めざるを得ませんね」


 ギルド長の言葉に、渋々とアリスが返す。


「それよりよォ、これからどうすんだよ。Aランク冒険者が全滅だぜ、このままダンジョン調査を続ける気か?」


 ベンが足を机の上に投げ出しながら言う。

 たしかに、そのことは俺も知りたかった。自分の『管理者権限Lv1』がほんとにダンジョンから脱出できるという能力であれば出来れば少しづつでも攻略していきたい。


「ワシとしてはこのまま続けて欲しいがのお」


「ボクもギルド長に賛成だよ。そこのおっちゃんの能力があれば地上に戻れるんでしょ?」


 タングがギルド長の意見に補助する。

 おっちゃん呼ばわりされるのは気に食わんがたしかに俺としてもそれを望む。


「でも、その野郎の能力がほんとに地上に戻れるものなのかは本人もわからないと言っていたじゃねぇかよ」


 ベンが反論する。

 たしかにその意見ももっともだ。と、思った。


「じゃあこうしたらどうだい?おっちゃんが何回かダンジョンに入ってみてスキルが使えたらおっちゃん中心にチームを組んでもう一回挑戦してみるって言うのは」


「たしかに、それなら文句はないわ。でもCランクの彼を中心にして志願者が集まるかしら?」


「じゃあそいつをAランクにしちまったらいいじゃねぇか。どうせAランク今誰一人もいなくて困ってるんだからよ」


 は?Aランク?実力がないのに?今までCランクの採取や低級の魔物の討伐しかしてこなかった俺が?

 唐突のベンの提案に驚きを隠せない。


「確かにそれはいいのお」


「く、口を挟んですいませんが。長年Cランク止まりの自分にAランクというのはさすがに…………」


「大丈夫じゃよ、簡単なクエストしか受けなかったお主じゃがそれ故に培ってきたものがあるははずじゃ。器だけで言えば十分にもうAランクに届いておるよ」


「……いや、でも」


「大丈夫よ、あなたがどういう人かは知らないけれどランクなんて飾りみたいなものよ」


 そんな、思いつきみたいなものでいいのか。

 そんな考え事をしながら、俺は今日、その場のノリと思いつきでAランクへと昇格したのだった。

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