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おっさんとダンジョン  作者: シロガネ
3/11

ニ話 おっさんと油断

 ダンジョンに入ると、そこに広がっていたのは信じられない光景だった。

 そこに広がっていたのはダンジョンの大きさからは考えられないような広大な草原。

 その光景に圧倒されたのかガルムさえも棒立ちだった。


「…………わぁ…………すごい」


 タイトが呟く。


「ああ、確かにすごい。塔はせいぜい噴水広場程度でここまでの広さはなかったと思うんだが…………」


 そんな感傷に浸っていると、唐突にサポーターが叫んだ。


「探知魔法にゴブリンの群れがかかりました。前方約500メートル数は…………ひゃ…………150です」


 サポーターの言葉で冒険者達がいっきにざわつく。

 ゴブリンという魔物は知能こそ高いものの初心者でも倒せるような魔物だ。しかし、今回は数が問題だ。こちらは11に対してあちらは150。ゴブリン150匹ともなればゴブリンの集落ひとつ分にもなる。そしてギルドが推奨しているゴブリンの集落の討伐人数はCランク20人。

 圧倒的な物量差がある。


「おい、お前ら!この程度でうろたえんじゃねぇ!!」


 ガルムの一声で一気に冒険者たちの気が引き締まる。そして、自然と前衛、後衛に別れた。

 しばらくすると、ものすごい速さで向かってくるゴブリン達の群れが現れた。すると、「お前ら、そこで見とけ」と、ガルムが言い放ち__________消えた。


「「…………え?」」


 一部の冒険者たちが思わず呟く。その瞬間、ガルムがゴブリン達の群れの中に突如として現れ、得物の大剣で薙ぎ払うようにして倒していく。


「オウカさん、今のなんなんすか?」


「ああ、お前は見た事ないのか。あれはガルムの技のひとつで爆発魔法を自分の足の裏で発動させ、その反動で一気に加速してるんだそうだ」


 だそうだ、と言ったのはガルムが自慢げに話していたのを聞いただけであり、実際に目視で発動しているのを見た訳では無いからである。


「あ、でも真似しようとするなよ。普通の人間がやると足が吹っ飛ぶぞ」


「…………マジですか」


 実際、ガルムの話を聞いて真似しようとした冒険者が足を失ったとか言う話が流れてきたくらいだ。

 まあ、だからこそ()()()()技として確立している部分もあるのだろうが。

 そんな話をしていると、ガルムがいつの間にかゴブリンの群れを狩り終えていた。

 ガルムがドヤ顔でこちらを見てくる。なにか言い返したいところだが、さすがにこの状況で言い返せるものはいなかった。


「おーい、サポーター魔石化を頼む」


 魔物は本来なら1匹1匹素材を剥ぎ取っていくのだが、数が多く、剥ぎ取りが面倒な場合は魔物を圧縮して魔石と呼ばれる魔力を持った石にかえることがある。この魔石は1匹分の素材より値段こそは落ちるものの軽量化されたり、非常用の魔力としても使えるため、ゴブリンなどの低級の魔物ならばあえて魔石化させる者も少なくはない。

 そのあとも進んでいくとスライムやカマキリのようなCランク魔物のマンティスの群れなどが出てきたがどれもガルムが瞬殺していった。


「なあ、タイト。気づいたか?」


 しばらく進んで休憩している時、タイトに話しかける。


「何がです?」


「出てきた魔物たち、やけに統率が取れていなかったか?しかもそれだけじゃなく、どの魔物たちもなにかに怯えるように向かってきたろ、それに前に入ったチームが戦った痕跡が全くない」


「考えすぎじゃないですか?そういう所がダンジョンなんだって割り切るしかないですよ」


 タイトから軽く流された。

 だが、このままダンジョンだからといって流してしまっていいのだろうか、モンスターの統率の件はまだしも、もしあのモンスターたちが何かから逃げていた場合あの集団より強いとなるとAランク相当の魔物となる。

 それに戦った痕跡がないのだって普通このだだっ広い草原をわざわざ曲がりながら進むようなことはしない、そうなると戦った痕跡が誰かが意図的に消さない限り残るだろう。


「…………だが、まあそうやって考えすぎるのが俺の悪い癖でもあるしな」


「ん?なんかいいました?」


「いや、なんでもない」


「じゃあお前ら、もうそろそろ進み始めるぞ」


 ガルムが少し、いやだいぶ早い休憩時間の終わりを告げる。

 普通ならここで誰か一人くらい愚痴を漏らすのだが、先程の戦いでガルムの株が上がったのか誰も文句一つ言わなかった。そしてそれにガルム自身も満足そうにしている。


「行こうか」


「そうですね」


 俺はどことない不安を抱えながら重い腰を上げて進み出した。


******


「やけにバトルブンブンが多いな」


 ガルムが大きな蜂のような魔物であるバトルブンブンを倒しながらボヤく。すると、「バトルブンブンの巣でもあったりして」とほかの冒険者がつぶやく声が聞こえた。

 まったく、笑えない冗談を言うのはやめて欲しいものだ。

 バトルブンブンという魔物は形こそ蜂に似ているものの実際は基本的に単体で出てくる。

 しかし、集団で発生する場合もないことは無い、それはクイーンブンブンというバトルブンブンの上位手が現れた時だ。このクイーンブンブンはAランクの魔物に相当する魔物で、過去にはクイーンブンブンが街の近くで巣を作りその街が壊滅したということもあったくらい危険な魔物である。


「おい、お前ら。この中突っきるぞ、サポーターは俊足の魔法をかけろ。道は俺があける」


 進むにつれて増えていくバトルブンブンに飽きたのか、それともきつくなったのか、ガルムが無謀なことを言い出した。

 無茶だ。普通ならほかの冒険者も無理だと否定するだろうが、ガルムの強さで自分たちもできるような気になっているのか、サポーターたちが次々に俊足の魔法をかけ始めている。


「…………無茶だろ」


「僕もそう思います。前衛職や魔術師ならまだしも、ヒーラーサポーターアーチャーはこの中突っきるのは無理がありますよ」


 どうやらタイトはこのテンションに侵されてないらしい。よかった。


「でも、みんなやる気だからどうしようもないもんなぁ」


「そうですね、ここは潔く行くしかなさそうです」


 今までこういう時は素直に引いてきたからか、あまりこの作戦には気が乗らない。


「んじゃ、お前ら前衛職が後衛職を囲うように並べ」


 伊達にAランク冒険者をやってないらしい。指示が的確だ。


「よし、並んだな。いくぞ」


 ガルムの掛け声とともにいっせいに走り出す。

__________走る、走る。目の前に現れた敵を斬り伏せただただ走った。

だが、おかしい。いくら走ってもバトルブンブンたちが減ることはなくむしろ増えていっている。


「おい、見ろ、もうすぐ抜けるぞ!」


 冒険者のひとりが前方を指さす。指の先にはバトルブンブンがいない空間が広がっていてそこには階段のようなものもあった。


「よし、抜けたか」


 その場所に辿り着くと、不思議とバトルブンブン達はよってこなかった。

 なぜ寄ってこない?バトルブンブンからしてみれば今が俺たちを狩る絶好の機会のはずだ。だが奴らは何かを待つように遠くから眺めてくるばかりで近づいてこない。


「はあ、疲れた」


 1人の冒険者が腰を下ろす。すると、次々とほかの冒険者も腰を下ろしていった。


「おい、おまえら何やってる!!」


 ガルムが怒鳴る。しかし、無事に走り抜けれたことで油断しているのか「少しくらいいいじゃないですかちょうどいいですしここで休憩にしましょうよ。それからあの階段を上りましょ」と言って立とうとしない。

 階段の先がどうなっているのかわからないのもあり、確かに上がる前に休憩を挟むという意見は一理あるがここで休憩をするというのはあまりいい案ではないと思う。


「はぁ、仕方ねえな。ここで休憩にするか」


 ガルムがあきらめて休憩を取ろうとする。その瞬間「ブーーン」という羽音を立てながらバトルブンブンたちが大きな球体を運んできた。その球体から次々にバトルブンブンが出できて俺たちを囲んだ。


「オ、オウカさん。あれって」


「ああ、あれは________」


 球体からほかのバトルブンブンより一回り大きなのが出てくる。


「________クイーンブンブンだ」


 クイーンブンブンが出てきた瞬間、しびれを切らしたように待機していたバトルブンブンが襲い掛かってきた。

次回ガルム死す!?

デュエルスタンバイ!!

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