第48話 真相 ~水樹紅葉の想い~
名取君。恥ずかしいと思うかもしれないけど、あなたが100日という月日、こそこそとこの神社に足を運ばせていたことは私、知っていたのよ。
名取君は誰にも気付かれていないと思っていたのでしょうけど、バレバレだったわよ。
私はいつも名取君の後を追い、この神社の祠付近にある木の影から、そっと覗き込んでいたわ。といっても、私が実際に知ったのは最後の10日間くらいだったけど。
なんで気付いたかって? だって、名取君、100日の期間、いつも部活終わった後、一緒に帰ろうという友達の誘い断っていたでしょ。男の子達の間では、ちょっとした噂になっていたのよ。名取の奴、彼女でも出来たんじゃないかって。
それを耳にした途端、私は狼狽えたわ。えっ、なんで狼狽えるのかって? まあ、そんなことはどうでもいいじゃない。
私はそれから、名取君の後を追うようになったわ。
名取君、もう神社に行くことに必死だったのね。私が尾行していることに、全く気付く気配なかったもの。
そして、あの日、祠の神様が現れた時、私も木の影に隠れて会話を聞いていたわ。
好きな奴がおぬのだろう、少年よ。
祠の神様がそう言った時は驚愕だったわよ。名取君、そんなことをお願いするために、毎日こんなところに来ていたのかって。
あの時、男らしくないわね。直球勝負しなさいよ、と、その場に出て行きたかったくらい。
えっ、驚愕する箇所そこなのかって? そうよ。私、最初、名取君がそんな女々しい奴だと思わなかったもの。
えっ、神様が喋ったこと? 別に驚かないわよ。人間がいれば妖怪だって幽霊だっている。なら、神様もいるのは当然でしょ。
ああ、ごめんなさい。話しが脱線してしまったから、元に戻すわね。
名取君がループの力を得た時、私、直感したわ。名取君、このままだと絶対に不幸になるって。
修学旅行の時、私言ったこと覚えている? 四次元ポケットの話。
のび太君は四次元ポケットだけを手にしたら、不幸になるのよ。ドラえもんがいて、四次元ポケットがあるから、のび太君はのび太君でいたれたのよ。
だから私、決心したの。ドラえもんになることを。
私ね、名取君が絶対にループを手放す日がくると信じていた。ううん、信じてたんじゃない。信じたかったのね、私は。
名取君は努力家だし、優しい人だから、ループの力を躊躇うはず。でも、持っている期間が長ければ、長いほど、手放せなくなるはずだと。
だから、あの日、私もここに100日間通い、祠の神様にお願いすることを決意した。
でもね、3日くらいで、神様が喋りかけてくれたの。
おい、女。貴様もあの少年と同じ力を欲したくて、ここに来ているのだろうが諦めろ。お前にはやらん、とね。
私、言ったわ。自分が欲しいのは、ループの力じゃない――と。
名取君がループの力を放棄した時、その最後のループの瞬間だけは、自分の記憶は消えず、名取君と一緒に記憶を維持させたまま、一緒にループできる能力が欲しいと。
あくまで最後のループだけね。さすがに毎回、名取君のループに付き合っていたら私の方がおかしくなっちゃうから。
だからね、さっき会った時、私が名取君に久しぶりって言ったのも実は嘘なのよ。
私、あの日、アーケード街で名取君と別れてから、家に帰ったのよ。ご飯前にお風呂入ってたら、急に3日前にループして、寝床にいたからビックリしたわ。
でも、ホッとした。名取君、やっとループの力を手放したんだって。
えっ、そもそも、なんでそんな能力を手にしたのかって? 名取君、あなたも神様と同じ質問するのね。
そんなの、名取君がループを手放した時、気持ちの拠り所が必要だと思ったからよ。
きっと、ループの力を手放すには相当、勇気がいるし、喪失感も相当なものだと思う。
だから、ループを手放した後、私は名取君をエライエライと言って、頭を撫でであげて。なんならハグまでしてあげるつもりだった。あら、なに顔赤くなってるの? ハグされると思った? ダメよ、絶対にしてあげない。
だって、名取君が本当にループを手放さなければいけない瞬間は、塔子さんが死んだ時だったはずよ。今回、誰の命を救ったかは聞かないけど、塔子さんは名取君にとって、ループを手放すには一番いいチャンスだったはず。
塔子さんを救えていたら、100点満点で文句なしのハッピーエンド。ハグだけじゃなくて、なんなら別のサービスもしてあげてもいいくらいだった。
でも、残念。ループを手放すのが遅かったわ。マイナス100点。
まあ、点数は悪いけど、この後の人生、ハッピーエンドにするか、バッドエンドにするかは、これからの名取君次第ね。
えっ。もし、僕がずっとループの力を手放さなかったら、どうするつもりだったのかって。
あなた、また神様と同じこと言ったわよ。
神様もね、失礼なことに、笑ったのよ。絶対に名取君はループの力を手放さないって。
人間は欲の塊で、それでいて心の弱い生き物。家族だろうが、愛する誰かが死のうが、絶対に少年は力を手放さない。ループの力に溺れ、孤独という不幸に叩き落とされ、生涯を終えるだろうって。
その言葉を耳にした途端、私は言い返してやったわ。
名取君は絶対にループの力を手放す、って。
確かに遠回りするかもしれない。気付くのが十年後。なんならもっと後になるかもしれない。でも、名取君は絶対にループの力を手放す。彼はそういう人よって。
神様はなんで、そんな自信がある? って質問してきたからね。私、胸張って言ってやったわ。
女の勘よ、って。
なんの根拠もない答え。でも、それが決め手だったのかしらね。
神様は笑っていたわ。
女、気に入った。良かろう。その力を授けよう、と。
そこで交渉成立したの。
でも、条件として、ループの力については名取君も含め、誰にも口外してはならない。口外したら、お前の大切な誰かの命を奪うと言われた。だから私ね、ずっと名取君に言いたくても言えなかった。
さあ、私の話しはおしまい。ああ、名取君、大事なこと言い忘れていたわ。
おかえりなさい、名取君。私、あなたのことが大好きよ。




