第24話 罪悪感
次は秋葉原駅から、浅草橋駅へと乗り継ぎ、その後押上駅へと向かう。
次向かった場所は、仁の希望だったスカイツリー。仁の行きたい理由は意味不明だったが、観光で行くにはある意味、一番まともな場所といってもいい。
「うわー。高ぇーな。全然、人見えねぇんだけど」
仁は景色を見下ろしながら、突っ込んでいいか迷う発言をする。仁の場合、天然だからボケなのか、本心なのかわからない時がある。
「あーあ、人を見下ろして、人がゴミのようだぁって言いたかったな。後、目がー、目がーってシーンな」
「その前にバロスしないとね」
あー、やばいやばい。僕も普通に話しに入っちゃったよ。僕もジブリ好きだからな。黙ってはいられない性分だ。
「そうだな。じゃあ、俺ムスカやるから、総司は七瀬を呼んできて、一緒にバロスって言ってくれ」
「なんで、七瀬さんなんだよ」
「だって、総司、七瀬の事、好きじゃん。そういえば結局、七瀬には告白しないのか?」
突拍子もない。まさか、このタイミングでその言葉が出てくると思わなかったので、僕は慌てて周囲を見渡す。七瀬さんと水樹さんは僕達から大分、離れた位置にいた。
「なんだよ、急に」
僕は少し尖った声を出す。
夏の大会が終わったのが六月で今は九月。この三ヶ月、仁は全くこの手の話題を振ってくることはなかったので、すっかり忘れているとばかり思っていたが。
「いやさ、修学旅行って告白が定番じゃん」
「僕はそんなミーハーなことはしない」
「なんでそんな頑なに嫌がるんだよ。恐いのか?」
「恐いよ」
僕は格好悪いのは百も承知で、素直に頷いた。
「告白してダメになったら、こんな風に4人で仲良くすることも出来なくなるんだよ。いや、それだけじゃない。仮にうまくいったら、僕達、今までみたいに一緒にいられる時間も少なくなるかもしれないよ」
一緒にいられる時間が少なくなるって、僕達は恋人同士か。と、突っ込まれてもおかしくない発言だったが、仁は窓の外から見える景色を眺め、真剣に考え込む顔をする。
「うーん。確かに総司と一緒にいられる時間が少なくなるのは嫌だな」
一瞬困ったような顔をする仁だったが、すぐに僕の顔を直視した。
「でも、総司が幸せならいいよ。俺が一番嫌なのは総司が結局、告白できずに後悔する事だ。だって、後悔って嫌じゃん。時間は元には戻せないんだぜ」
ごめん、仁。僕、時間戻せるんだよ……なんて当然、言えないよな。
だけど、仁の言葉は素直に嬉しかった。昔、七瀬さんが、僕に紅葉さんを推してきた時、同じ言葉を口にしていた。
それでもいい。紅葉が幸せなら、と。
あの時、ここまで思ってくれる友達がいるなんて羨ましいと思っていたが、僕も同じような存在の友達を持ったことを嬉しく思う。
でも、嬉しいと思う反面、罪悪感もある。
僕は仁との勝負にズルをした。そう、仁を裏切ったのだ。
今いるこの世界は偽りで、本当はあの日の試合、仁が勝って、仁が七瀬さんに告白していた世界が正常だった。
そして、仁が七瀬さんに告白して、付き合った場合、僕は素直に応援なんて出来なかっただろう。
仁が七瀬さんに告白して、その結果を見届けてから、ループを使っても良かったのでは? と思う人もいるかもしれない。
でも、僕は恐かったのだ。
もし、仁の告白がうまくいった場合、僕はループして時間を戻しても、大きく尻込みしただろう。僕はこれから、いくら頑張っても仁には叶わないんじゃないか、と。
だから、僕は仁が七瀬さんに告白する瞬間すら見たくはなかったのだ。
結果、そんな身勝手な理由で僕は仁のチャンスを消し去り、チームの努力を踏みにじったのだ。
「まあ、後悔だけはするなよ」
仁は僕の肩を叩き、そのまま、七瀬さん達がいる方へ歩いていく。
僕はなんとも言えない気持ちで、窓の外を見つめていた。
「僕が……ゴミかもしれないな」




