90話 中間大陸における業務
途中、何度かあった海中型モンスターからの襲撃を撃退していく。
時折、輸送船団の周囲にいる武装艦艇から魚雷や爆雷が投下されていく。
民間船舶に武装を搭載しただけといった簡易戦闘艦艇であるが、それでも海中型モンスターを確実に仕留めていく。
ただ、それらが戦闘を行ってるというのが分かる事は少ない。
ほとんどが海中にて行われており、探知機器を持ってない者には見えにくいからだ。
倒したモンスターもそのまま海中に没していく事がほとんどである。
希に、一時的に海上に浮かび上がってくる事もあるが、それは希である。
たいていは魚雷や爆雷によって体を破壊され、そこから内部にある空気などを放出するからだ。
浮かび上がるにも空気がなければどうにもならない。
それに、周囲にいる別のモンスターが攻撃された者に襲いかかっていく。
このため、海中で行われた戦闘は、ほとんど知られる事もなく終わっていく。
タクヤ達も、そんな事が起こってるなどと知らぬままに目的地に辿り着いていく。
兵衛府と新地道本土を行き来する途中で立ち寄る中間大陸。
滞在する事もほとんど無いので、タクヤ達もここの様子は良く知らない。
空港や港以外の部分は始めて訪れるようなものだ。
そして、あらためて周辺に足を伸ばして分かったのだが、ここは存外狭い場所だった。
一応、定住者もいるし、その為の施設もある程度は作られている。
だが、中継地としての利用しかされてないようなもので、港と空港周辺は空疎なものだった。
それでも開拓は少しずつ進められてるのか、町(というか居住地)の周辺もある程度は切り開かれている。
だが、それを含めても、さして広い範囲ではない。
本当にここがただの中継地だった事が伺える。
そこに大量の人間や機材がやってきたのだ。
それだけでもこの中継地にとっては大きな事なのではないかと思った。
「ここを拡げていくのか……」
始まっていく作業の護衛として上陸したタクヤは、先の事を考えてため息を漏らす。
聞き及んでる会社の目的からすると、ここに都市を建設する事が想像される。
それは、工業地帯を含む大規模なものだ。
単に人を移住させる、居住させるためだけではない。
だが、現時点での町の規模を考えると、それはとんでもない大事業になるのが予想される。
「何年かかるんだか」
実際に現地にやってきてその目で見ると、事の困難さを痛感する。
それでもいつかは目的を達成するだろう。
だが、それまでにかかる時間と労力を考えると気が遠くなりそうだった。
「その間、ずっとここで仕事か……」
これは、ここに骨を埋める事になりそうだなと思った。
タクヤが思った事は、ここにやってきた多くの者達も感じた事だった。
大規模な事業になるとは思っていたが、その為の覚悟を吹き飛ばすほど前途は多難に思えた。
だが、引き返す事が出来るわけもない。
この世界で居場所を確保するためには、やらねばならない事でもある。
尻込みなどしていられなかった。




