84話 久しぶりに家に帰りはしたものの 6
コンビニを出て家に戻り、適当に過ごしていく。
やってる事は休日とさして変わらない。
寝てるかボーっとしてるか。
時間を無駄にしてるだけ。
だが、最前線でないせいか、のんびりと出来る。
それだけでも大きく違う。
とはいえ、この辺りだって、モンスターの襲撃から完全に解放されてるわけではない。
開拓地は更に拡がり、ここが未開地との接点ではなくなりはしたが。
それでも子供の頃は常にモンスターを警戒していた地域だ。
まだまだモンスターの領域に近い所ではあるし、町の外周部には防衛のための備えがある。
この世界ではさして珍しくもない防壁と砲台や機銃座。
これらがいまも備えられ、これらが稼働する事も珍しくはない。
使われる回数は減っては来たが皆無というわけではない。
新地道の首都(道庁所在地)の新開市ならば、モンスターが接近する事も無いと言うが。
タクヤの地元はまだまだそうはなってなかった。
それでも、常にモンスターの襲撃を警戒する開拓地よりは安全である。
雰囲気が穏やかなのはその為なのかと思えた。
(けどまあ、アマネが就職か)
部屋で横になりながらそんな事を考える。
再開するまで思い出す事も無かったが、出会ってしまえば色々考える。
他の大勢の知り合いの一人でしかないのは確かだが。
それでも、一緒に遊んだ事もある仲だ。
ただ、自分より更に子供であるという印象はぬぐえない。
実際、タクヤが中学卒業と同時に家を出た頃はまだ子供だった。
それが、もう就職する時期になっている。
(時間が流れるってこういう事か)
年寄りくさいとは思うのだが、そんな事を考えてしまった。
子供だとばかり思っていた相手が、仕事をしててもおかしくない年齢になったのはそれだけ印象的だった。
アマネが成長していたのもそれを大きくさせていた
背丈はそれほど変わってないのだが、全体的に大人に近づいたと感じられた。
(変わっていくんだな、色々と)
自分はどうなのだろうと思った。
少しは成長したのだろうかと。
そんな事を一瞬考えもするが、結局は何もしないでダラダラと過ごしていく。
何もしないという事がなんと贅沢なのだろうと感じつつ。
これで仕事に戻れるのか心配になるほどだ。
そんな息子に母は、
「仕事でもそんな態度じゃないでしょうね?」
と聞いてくる。
「さすがにそれはない」
「なら良いけど」
心配される程にだらけてるのかと思わないでもない。
実際、このままではまずいと思ってしまう。
「でも気をつけないさいよ。
死んだらもともこもないんだから」
「分かってるって」
そう言いつつも、明日明後日にに迫って来る勤務日が気になった。
こんな調子でもとに戻れるのだろうかと。
そんな調子で休日を無意味に過ごしていく。
久しぶりの実家は、思ったよりも居心地が良かったのに驚いた。
顔を合わせた友人知人ともほどほどに言葉を交わしたりもして、それなりに楽しんだようにも思える。
弟や妹も元気だったのでそこは安心した。
進学した者もいるので、それもほっとする。
自分の食い扶持が減った分だけ余裕が出来たのかなと。
あと、少ないながらも出してる仕送りも少しは役に立ってればとは思った。
もっとも、そういう事もあるにはあったが、過ごした時間の大半はごろ寝であった。
有意義であったのかどうかは実に悩ましい。
休養は仕事に向かうために必要不可欠ではあるが。
それでもこの帰省中の行動は自堕落にすぎてるようにも思えた。




