81話 久しぶりに家に帰りはしたものの 3
「本当に失礼しちゃうよねー」
「はいはい」
大して怒ってもいない調子での糾弾に、適当な相づちをしていく。
「こんなに可愛い女の子を忘れるなんて失礼ですよ」
「そうだな、可愛い女の子を忘れるなんて失礼だな」
タクヤはもっともだと頷く。
「可愛い女の子ならな」
「……何か言った?」
「ああ、言ったぞ。
可愛い女の子ならおぼえていられただろうなって。
そうでない女の子だと、記憶するのも面倒だろうし」
「……なかなか言ってくれますね」
「お前が言ったんだろ、先に」
可愛い女の子なんだからおぼえておけよ、という主旨の事を言われた。
だが、可愛くもない女の子ならおぼえてないのも仕方ない、という事も出来る言葉である。
だからそれをそのままお返ししてあげたのだ。
もっとも、言う程ブサイクという事はない。
世の中の平均値や中央値などと比べれば、それらよりは上。
控えめに言っても魅力的な部類の容姿である。
見る人が見れば美人と評するであろう。
からかいながらもタクヤはそれを認めはした。
ただ、言われて悔しいから口にはしなかったが。
「でも、変わったな」
それだけは認めた。
実際、目の前の少女は変わった。
言われてみれば面影はあるが、タクヤが知ってる頃からは大分変化がある。
有り体にいえば、美人になっていた。
昔は、もう少し地味というか目立たない感じであったのだが。
(変わるもんだな、女ってのは)
女は化けるという言葉の意味を理解した。
(化粧とかしてるのかな?)
それで大分変わるというのは聞いてはいる。
実際、それを実演する動画なども見て、女の素顔は本当に分からないものだとも思った。
だから、充分美少女と評価出来る目の前の少女も、もしかしたら化粧で誤魔化してるのではと思った。
そうでなければ納得出来ないほどの変化をアマネはしていたのである。
雪代アマネ。
15歳の中学生である。
比較的家が近かったせいもあり、子供の頃は一緒だった事も多い。
タクヤとは4つの年齢差があるが、それも子供の頃はさしたる差ではなかった。
何せ子供同士でも、
「年上なら下の面倒も見ろ」
と言われて育つのである。
なので、比較的年齢の近い子供は一緒になって遊んでいた。
そうでなくても、隣近所の範囲であるならば、何らかの接点はあった。
とはいえ、それも小学校くらいまでの話である。
中学校に進むと交友範囲と活動半径が拡がるので、一緒にいる事は少なくなる。
自然と結びつきは薄れていく。
タクヤとアマネもそれに漏れず、タクヤが中学校に進学したあたりで顔を合わす事も少なくなった。
それでも完全に切断するわけではない。
道ですれ違えば挨拶くらいはする。
それに、直接の接触がなくなっても、兄弟などが関係を続ける事もある。
タクヤの場合、妹がアマネと同学年だったので、何かしら顔を合わせる事も多かった。
アマネが家に遊びに来る事もあった。
そのせいで、年の離れた幼なじみの中では接点が多い方ではあった。
こうやって顔を合わせると、それなりに話をするくらいには。




