77話 富国があって強兵が達成出来る 4
それは保身を考えての事ではある。
だが、全体に無理をかけたら、どこかで問題が発生する事も分かっている。
そうならないように、不要な負担は極力かけないように気をつけてはいた。
それは部品を管理するような、生産工程を見回るようなものではあった。
人を人として見るのではなく、どうしても物や数値として扱うようになってしまう。
これは仕方のない事ではある。
巨大な集団を対象とする場合、そこにいる一人一人を見て回るわけにはいかない。
どうしても全体的な動きや流れを見る事になる。
集団を一つの存在として扱うしかなくなる。
でないと相手を把握する事が出来なくなる。
個々の事情に疎くなるのは避けられないものがあった。
だからこそ、極力不満が出ないようにもしていった。
集団や組織が機能不全に陥ったら、持ってる能力や機能を発揮する事が無くなるのだから。
新地道の中枢にいる者達は、様々な集団にいる者達を一人一人見る事はない。
そんな事出来ない、不可能である。
だからこそ、これ以上の負担を強いる事は出来ないというあたりを、大雑把に見定めてはいた。
それは機械的に、杓子定規に物事を決定するという事にはなる。
それでも、全体的に見れば、これ以上やれば不満な続出するというあたりを超える事はなかった。
その一つとして税率の低さがある。
ほとんど自治州扱いの新地道は税率もほぼ独自に定めている。
日本政府に納入せねばならない分はあるが、それを織り込みながらも、税率そのものは極力低く抑えている。
国民から絞り上げたら、その分だけ疲弊するからだ。
その時の不満は新地道自治体へと向けられるだろう。
その危険性は本国の比ではない。
民間人が武装している新地道において、政治が無茶をする事は出来ない。
規制や増税などを下手にすれば、殺される事だって起こる。
実際にそれがなされた事もあった。
なので、迂闊な事は出来ない。
これもあって新地道の税率は極力下げられていった。
その影響もあって、企業の進出も行われている。
税率が低い方が手元に残る金が多くなるのだから当然だろう。
営利団体である企業が動かないわけがない。
また、一人一人に残る手取りも増えるから消費も旺盛になる。
不要な消費…………浪費までする者はさすがにそう多くはないが。
それでも、手元に残るものが多いから、贅沢に回す分は増える。
生活必需品に限らず、様々な消耗品も新地道においては活発に売買されていた。
その分、自治体などによる福祉などはない。
最低限の教育や予防接種などはされてるが、生活補助などは存在しない。
そんなものが必要ないくらいに手取りがあるのだから問題にもならなかった。
そして、これが税率の低さのためという事も理解してるので、現地の者達に不満は無い。
あるなら、本国に戻れば良いだけなのだから。
それよりも、税率があがったり消費税が導入される事で負担が大きくなる事が嫌われていた。
実際、手取りが多く、自分が自由に使える金が多い事の良さを知ってる者が多い。
だからこそ、それが失われる事への嫌悪感が大きかった。
何かあった場合の備えについても、もらった給料から幾らかを蓄えておけば良いだけなのだから。
それすらしなかった者がどうなろうと、自業自得であるというのが基本的な考えである。




