75話 富国があって強兵が達成出来る 2
後に新地道自治体の中枢ここで決まった案は、ほぼその通りに取り上げられる事になる。
新地道自治体は産業を重視した政策を決定。
関連する企業への発注を始めていく。
それを受けて各企業は資源確保の為に動き出していく。
これにより今まで以上に大陸の各地に企業が飛び回る事となった。
採掘地の発掘が始まり、精錬所の建造もされていく。
その間を通る道も整備され、周辺のモンスターも駆逐されていった。
物資運搬用の大型鉄道も造られていく。
様々な産業を支えるための資源確保。
何を作るにしても必要になる材料をまずは手に入れる。
新地道自治体の打ち出す最初の策がこれであった。
材料の確保が容易になったら、次に必要な生産設備の増加を狙う事になる。
その為に必要な様々な工作機械の増産を狙っていく。
様々な製品を作るのではない。
製品を作り出す機械の増産をしていく。
物を作り出すためには工作機械が絶対に必要になる。
これを作り出す為の設備の建造。
工場も含めた工業地帯の創出。
資源採掘が軌道に乗ってきたら、これを行う予定になっていた。
さすがに時間がかかる。
一年や二年でどうにかなるものではない。
資源の確保だけでも数年はかかる事業と考えられている。
工作機械の生産設備の建造は、それらがある程度増大してきたら平行して行う事にはなってるのだが。
それでも、着手まで数年はかかるだろうと思われていた。
工場建設のために必要な社会基盤の事もある。
道路や水道、電気にガス。
これらを設置する必要がある。
建物だけ作れば良いというわけではない。
その為に発電所を造り、ダムを造らねばならなくなる事も考えられた。
石油やガスなどの採掘と貯蔵施設なども。
とにかくありとあらゆるものが必要になっていく。
これらをたかだか数年で造りだそうというのが、相当な無茶である。
しかし、やらねばならなかった。
これがなければ、軍備の増強など夢のまた夢なのだから。
もちろん軍備だけではない。
民間における様々な器具や物品も必要になる。
それらの生産も必要不可欠な重要事項である。
日常的な生活を営むために、そのための業務を行う為に必要な道具。
これらが広範囲に滲透しなければ生産性の向上など望めない。
毎日を快適に過ごす事ができなければ、人の健康状態を保つ事など出来はしない。
人は労働をするために生きてるわけではない。
命を保つために働いてるのだ。
そして労働の負担は可能な限り少ない方が良い。
日常における楽しみは出来るだけ多い方が良い。
それがなければ、ただ労働を繰り返すだけの日々になる。
働く事に生き甲斐を見つけるのも良いが、それで満足する人ばかりではないのだ。
様々な人間の求めるところを可能な限り提供するためにも、日用品などは必要不可欠である。
当然、そこには娯楽なども含まれる。
楽しみも無く生きていくのも味気ない。
人生には潤いも必要なのだ。
鬱屈した人間は生産性が落ちる。
不平や不満を抱いてまともに仕事が出来る人間は少ない。
それらを解消するためにも、楽しみは必要になる。
精神衛生もまた、生産性につながる要素であった。
だからこそ、新地道の政策決定の中枢もこの部分を切り捨てはしなかった。
それはそれで人間を道具のように見ていると言えるかもしれない。
しかし、人間らしさを認め、それを好きなように追求させる事を彼等は決して否定しなかった。
彼等は徹底的に否定していった、
『欲しがりません、勝つまでは』を。




