73話 兵器開発事情 6
陸海空でそれぞれ代表的な兵器の開発状況はこのようなものであった。
どれも性能向上は果たされてはいるが、最新鋭には叶わない。
地球で他国を相手にしての戦争で用いるのは酷である。
だが、新地道における敵と戦うには充分に過ぎる能力を持っている。
これ以外の兵器も同様の措置が施されている。
とにかく数を揃えるために在来品でまかない、既存品で改修をしていく。
新たに生産する部品を減らし、出来るだけ速やかに配備を開始していくために。
これらには様々な企業が参加する事になった。
どのみち生産には開発・生産を担当する企業の力が不可欠である。
その協力をどうやって取り付けるかが問題であった。
なにせ、本国政府からは否定的な対応がとられているのだ。
その意向を企業が無視する事も出来ないだろうと。
しかし、実際に改修や生産に企業は乗り気であった。
企業も日本政府の意向は理解している。
それに背けばどのような事になるのかも。
しかし、それでも新地道における兵器の生産には大きな利益があった。
単に兵器の生産による販売利益だけではない。
様々な経験や実験を行えるという得難い利点が。
作ったものがどれほどの効果をもたらすのか。
それを知るには実際に使ってみるしかない。
しかし、兵器の性能や能力はそう簡単に分かるものではない。
これらの能力を確かめる事が出来るのは戦争になってしまう。
そんなものが、そう簡単に起こるわけではない。
起こって良いものでも無い。
平和な時代においては、訓練や演習を通して使用した具合が分かる程度である。
だが、異世界であるならば、常に脅威が存在する。
兵器を使用する機会がある。
そこでなら、作り出したものの性能をしっかりと確認する事が出来る。
そうして得られた実体験は、貴重な教訓となっていく。
これを得る為に企業は可能な限り積極的に参加していった。
日本政府の不興を買う事を覚悟で。
それ程までに戦訓を得るのは貴重な事だった。
無形の利益と言っても良い。
企業としては見逃す事が出来なかった。
何より、得られた戦訓をすぐに反映する事も出来る。
反映された改修を戦場にてすぐに試す事が出来る。
開発において非常に大きな利益になる。
平和な日本では得難いものだった。
そしてそれを自衛隊の装備などに反映させていく。
そうする事で企業は日本政府の憤りを逸らしていった。
政府としては是認しがたいものではあるが、さりとて提供される成果を放棄するのももったいない。
それは、企業による自主的な研究開発の成果を得られるようなものである。
新たな予算をつけて研究させずとも、貴重な成果を提供されるのだ。
それを突き返すような事は出来なかった。
やむをえず政府は新地道における兵器生産や改修などを黙認していく事になる。
正式な取り決めがなされたわけではないが、暗黙の了解としてこれが成立していった。
かくて新地道は、兵器の実験場という側面も持っていく事になる。




