68話 兵器開発事情
旧式兵器の改善改修。
それは新地道の状況で選ぶしかなかった道である。
新地道の科学や技術力、経済力。
これらに加えて、軍事力の保有に伴う問題との絡みがあるからだ。
新地道は日本の自治体である。
政府ではない。
その為、独自の戦力を持つことなど本来なら許されない。
だが、日本本国から遠く離れてる事と、現地に存在するモンスターなどの脅威。
これらが武装を余儀なくさせもしていた。
モンスターは常にそこらに存在し、場合によっては自衛隊による対処が求められる。
しかし、駐留し展開出来る兵力に限界がある。
どうしても自衛隊の規模は限定的なものとなる。
求められる出動件数に対して、駐留する部隊の数が少ないのだ。
それに、自治体の知事の要請では、出動出来る規模に限界がある。
仮にそれなりの戦力がいたとしても、出動出来る部隊の規模は小さい。
モンスターの出現数が多ければ、小規模な部隊の展開ではどうしようもない事もある。
また、おいそれと出動を求める事も出来ない。
自衛隊の出動となればやはりそれなりの状況にならないといけない。
モンスターは確かに脅威ではあるのだが、そう簡単に出動してくれるわけではないのだ。
これらを考慮して、もっと手軽に活動出来る武装部隊が必要だったのである。
知事の権限でとりまわせる範囲で。
だからこそ新地道は、様々な困難を乗り越えて独自の武装をはかっていった。
そうしなければ生き残れないという逼迫した事情を盾にして、渋る本国を説得して。
正確に言うならば、正式な承認を得ることもなく武装し、事後承諾で黙認をとりつけた。
そのために、日本政府と新地道の間には溝や亀裂がそれなりに入ってしまっている。
こんな常があるために、最新兵器の提供は渋られる事になる。
最悪、それが反乱に用いられる事もありえるからだ。
新地道にそのつもりはないが、本国政府からすれば気が気でない。
全く無いとは言い切れないのだから。
軍事力や兵力というのは、それを可能とするだけの力がある。
だから日本本国は新地道が過剰な戦力を持たす事を懸念した。
新地道の方としても、日本本国の支援がなければ成り立たないのは理解している。
だからこそ、下手に警戒をさせるのは控えておきたかった。
その為、後に軍と呼ぶ事になる自前の兵力にもある程度の制限をかけておこうと考えた。
保有する兵器はそれほど強力なものにしないように自制が行われた。
それが結果として旧式兵器の保有を選択する事につながった。
そうした兵器でなければ運用できないという問題もある。
日本本国に比べれば劣る経済規模と科学技術。
それで問題無く運用できるものとなると、多少旧式の方が都合が良かった。
また、新たに開発するよりも、一度は運用されていたものを再生産する方が手間もかからない。
新たに開発するとなると、実用化するまでに様々な困難が伴う。
それよりは、性能は最新式より劣っても、確実に作動する事が期待出来る古い物の方が良い。
新規開発するだけの予算も研究開発能力もないのだから。
生産設備は新しく作る必要はある。
それはそれで手間がかかる。
それでも旧式兵器の再生産を決定したのには、こういった理由があった。
新地道は、即座に精算出来て、確実に動作する兵器を求めていたのだから。
敵がそれほど強くもない、というのもこの選択をする大きな理由になった。
この世界のモンスターや、別の世界から来た金属の天使が強力だったらこうはいかなかった。
無理をしてでも最新式の装備の調達をせねばならなかっただろう。
だが、モンスターも天使もそこまで強力ではなかった。
地球の先進国の保有する兵器ほど強い敵は存在しない。
一世代か二世代前の旧式兵器でも充分に対処が出来る。
だからこそ、新地道でも運用可能な兵器を揃える事を選択出来た。
もちろん、本当に旧式兵器をそのまま作って運用するつもりでもなかった。
可能な範囲で手を加え、多少は性能の向上をはかりもした。
性能が少しでも向上すればそれで良し。
それが出来なくても、運用する上で負担になる部分を解消したかった。
故障をなるべく減らし、使用できる期間を、耐用年数を増大させていこうとしていた。
幸いこれらは上手くいく事になる。
こうして、既に役目を終えていた旧式兵器が再び別世界で生まれる事になる。
そのほとんどは戦後第二世代と呼ばれるものが占めていた。
さすがにそれ以上前のものでは古すぎた。
かといってこれより新しい物だと強力すぎるし、建造も困難になる。
新地道のおかれた状況を考えると、このあたりが妥当と判断された。




