６３話 今後の展望について、自治体における苦悩
政治の方でも色々と考えていた。
新地道の自治体では、敵への対応のために何をどうするかを考えねばならなかった。
生産分野においては各企業などの活躍に任せるしかない。
この部分においては特に何かが出来るというわけではなかった。
政治が出来るのは、それらの伸びる方向をある程度示すくらいである。
これが共産主義や社会主義、独裁体制であればそれも可能かもしれないが、新地道はそういう体制ではない。
そこまで政治が口を出すことは出来ない。
せいぜい、必要なものを作らせるために注文を出す。
そうする事で、ある程度の方向性を定めるのが限界だった。
それが政治の仕事でもある。
また、今あるものを再配置する。
徴収した税金で確保した何かをだ。
政治に出来る事とはこれが全てだ。
決して再配分などではない。
そんな事をしてたら、無駄を増やすだけである。
この再配置をどうするかで新地道自治体は頭をひねる事になる。
「とにかく、軍を最前線に回さないと」
最も必要なのはそこだった。
自治体で確保してる戦力を最前線に配置転換する。
これだけは絶対になさねばならない事だった。
「とはいえ、基地はどうする。
現在の規模では収容しきれないぞ」
「拡張するしかないだろう。
問題は予算だ」
「さすがに今の税収ではこれ以上の事は無理だ」
「金を借りてくるわけにはいかんのか？」
「開拓・開発のために限界までやっている。
これ以上は破綻の危険性が大きくなるぞ」
「経済規模の増大による分も含めてか？」
「そんな予想の数値で金を貸すような甘い金融機関はない」
開拓や開発が失敗する可能性だってあるのだ。
これらが成功した場合に見込める利益を提示したとしても、それだけで融資を決めるわけにはいかない。
金を貸す側からしたら、それくらいの慎重さは当然出てくる。
創出されるであろう有効需要などというものなど、金を貸す側からすれば夢物語の絵空事でしかない。
重視するのは、現段階での収入と支出、その差し引きで残る残高だ。
そして、収入は減っていき、支出だけが増大するという事を基本として考える。
現状の収支がそのまま続くと考える、まして好転するなどという甘い考えを持ってる者はいない。
「借金も含めた予算は現状の規模のままと考えた方がいい。
実際、破綻させないよう切り盛りするだけで手一杯だしな」
確かに新地道の経済は発展してる。
様々な産業と人々の営みを含めたそれは、毎年最大値を更新している。
だが、それを支えてるのは単純な税収だけではない。
金融機関からの借り入れ、つまりは借金もまた大規模に行っている。
それをこれ以上増やす事は出来なかった。
本当に破綻する可能性が出てきてしまう。
借り入れた金の返済が滞れば、金融機関の破綻に繋がる。
この場合、金融機関とは銀行などになる。
その銀行の資金は、預金者の金がもとになっている。
銀行自体が保有する資金もあるだろうが、それだけで賄ってるわけではない。
もし、借金の返済が滞れば、この預金残高に直撃する。
預金者は自分達の持ってるはずの貯金を一気に失いかねない。
銀行などの金融機関への返済が滞れば、そうなる危険性が出てきてしまう。
そういった危険性があるから、銀行などの金融機関も慎重になる。
実際に破綻した自治体というのもある。
国家とて破産する事もある。
彼等はそれらが安泰だとはこれっぽっちも考えてはいない。
だからこそ、収支などの経済状態をしっかりと見る。
現在、借り入れ限界まで来てる新地道自治体が借金を申し込んでも、それを受ける事はないだろう。
「もし、無理して借金が出来ても、破綻したら意味がない。
それでは本末転倒になる」
発展の為の借り入れで破綻してしまったら冗談にもならない。。
「今有る分でどうにかするしかない」
至極真っ当な所に結論は落ち着いた。
「だとして、何をどうする？」
今有る手持ちで必要な措置をするしかない。
となれば、予算の配分を、自治体で行ってる諸々の業務を見直すしかない。
各部署への予算配分を変更し、優先せねばならない所に振り分ける。
あらゆる部署に等しく平均的に、などと言ってられない。
そんな馬鹿げた予算の配分などしてられない。
「部署の統廃合も必要になるかもしれんな」
現時点では維持出来そうもない、優先度が低くなる部署は廃止・別部署への吸収も考えねばならなかった。
