61話 今後の展望について、企業における苦悩 2
「それと護衛の方もな」
「ああ」
話が戦闘部隊にも及んでいく。
「やはり改善は必要だろう。
今のままじゃまずい」
これは以前から問題として上がっていた事だった。
物資輸送の護衛として、モンスターからトラックなどを守る為の部隊を配置している。
これはこの異世界においては必要な措置であり、やむをえない事だと考えられていた。
しかし、企業においては極力これを安く抑えようという考えもあった。
必要ではあっても、直接利益をあげるものではないからだ。
経費は一円でも安く、というのが商売人の本能である。
だから無駄になりそうなものは極力削ろうとする。
極端に高い火力や防御力などが必要無かったのもあり、企業部隊は比較的軽度の武装で済ましてきていた。
しかし、これを懸念する声は現場から常に上がってもいた。
管理・統括する上層部の一部からもである。
確かに直接利益は生まないが、襲撃を受けて損害が出ればそれはそれで利益を損なう。
火力も防御力も無ければそうなる可能性が高い。
特に現状では防御力に問題があった。
火力そのものは、モンスター相手には充分と言えるものではある。
しかし、モンスターに接近されると、どうしても弱いのが実情だった。
護衛部隊の装備のほとんどが、一般車両を用いてる事から来る問題である。
バイクやバギーなどの乗員が剥き出しの状態になる。
四輪駆動の車輌を用いていても、少し巨大なモンスターに襲われたら容易く車体を損壊する。
接触するまで接近を許してしまったら、それだけで大きな被害が出てしまう。
接近される前に相手を倒せばいい、という意見はあるにはあった。
実際、そうやって対処していたし、接触出来るほど接近される事はほとんどなかった。
だが、奇襲のような状態で接触されて多大な被害が出る事もわずかながら存在していた。
それでも、対策をして出費を出すよりも、保険を支払って終わりにした方が安上がりだった。
だから対策を求める声は常に無視されてきた。
年間を通して数件程度のそうした事例の為に、余計な経費をかけたくないというのが企業上層部の考えであった。
しかし、さすがにそうも言ってられない状況になってきている。
「最前線における護衛業務を行うなら、もっと防御力が必要だ」
兵衛府における戦闘で確定せざるえなくなった事実である。
モンスター相手なら誤魔化す事も出来た。
だが、異世界からやってきた金属の天使達を相手では、今のままでは危険が大きくなりすぎる。
接触されるほど接近される前に倒す、という事が不可能に近いからだ。
敵はモンスターより強く、数も各段に多い。
接近される前に倒そうにも、それが出来ない。
倒せる以上の数で迫って来るのだから、いずれ接触してしまう。
また、飛距離は数十メートルから100メートル程度と言われてるが、飛び道具も持っている。
焼けただれた熱塊を飛ばしてくる天使は、モンスター以上の脅威だ。
これを相手に、乗員が剥き出しのバイクやバギー、改造した一般車両程度では力不足である。
ある程度の防御力は必要不可欠だった。
でなければ、人員の損失が大きくなりすぎる。
また、接近されるより前に倒せというのであっても、今のままの装備では駄目という事になる。
現時点で装備されてる武器では、異世界の天使を倒しきる事が出来ない。
装備されてる武器のほとんどは、歩兵銃と歩兵が持ち運べる機関銃である。
火力が足りない。
数発ほど打ち込めば天使を倒す事は出来るが、それでは大量に迫る敵を倒しきる事が出来ない。
無反動砲なども一部は持ち込んではいるのだが、それだけでは数が足りない。
より強力な火力が必要だった。
口径105ミリの戦車砲とまではいわない。
だが、20ミリ機関砲くらいは欲しかった。
一発あたりの威力が高いので、ほぼ一撃で天使を仕留める事が出来る。
加えて、貫通力もそこそこあるので、連なって迫る天使をまとめて何体倒す事が出来る。
この火力がどうしても必要だった。
だが、機関砲ともなると、重量が嵩む。
反動も大きく、一般車両に設置するのは難しい。
これらを運用するなら専用車両が必要になる。
それこそ軍用の、小型でもいいから装甲車両が。
結局、火力の増大と共にある程度の防御力も備える事になる




