55話 開拓に向けて 2
兵衛府防衛における積極的な協力。
その引き替えに引き出した、大陸の開発優先権。
一井物産はそれをもとに、大陸の開発に一気に躍り出る予定でいた。
これにより、大陸そのものを本拠地にし、この世界における一角を担う予定でもいる。
独占的に行える事業になるので、莫大な利益を見込めもした。
なにせ、同業他社を大きく引き離す事が出来るのだ。
これは非常に大きな特権になる。
もちろん、一井物産だけで全てが進められるわけもない。
いくら総合商社とはいえども。
様々な業種を系列におく財閥であっても。
足りない部分は他の企業などを招かねばならなくなるだろう。
それでも、主導出来る立場にあるのは変わらない。
中間大陸の開発が進めば、その分だけ一井物産の利益は増大していくだろう。
初期投資も莫大なものになるだろうが、見込める利益はそれを大きく上回る。
その権益のためにも中間大陸の開発はしっかりと理解しておいてもらわねばならなかった。
「この大陸の開発には、我が社が行います。
もちろん、他の企業にも助けを借りる事もあるでしょう。
ですが、それは最小限に留め、なるべく他の皆さんへの支障が出ないよう心がけるつもりです」
あらためて発言者はそう述べた。
その言葉に偽りはない。
実際、他の企業を無理に参加させて、別の方面に支障が出るような事は避けるつもりではいる。
だが、それは他の思いやってというわけだけではない。
他の企業に極力声をかけないで、全て自分の系列だけでこなす。
それにより、余計なちょっかいを出させないという意味もある。
むしろ、これが大きな理由である。
また、他にも様々な事が含まれている。
一井物産が大陸の開発に傾注するというなら、その余波は必ず発生する。
もし一井物産が、自社で生産・流通させてる様々なものを大陸の開発に投入するとなれば。
その分、他の企業などに流れる物資が減るという事に繋がりかねない。
その分を他の企業から回してもらえばどうにかなるかもしれないが、それも確証があるわけではない。
一井物産が多くを賄ってる分野などにおいては、供給不足に陥る可能性が出てくる。
それによって経営が危うくなる会社も出て来るかもしれなかった。
長期的に見れば、そういった不足を別の企業が補う事にはなるかもしれない。
だが、当面は必要な分量を確保出来なくなるのは変わらない。
その間、他の企業は活動を停滞させる事になりかねない。
一井物産が自社の業務を優先させるというのは、そういう事にもなる。




