53話 戦闘の終結と、そこから始まる今後へ
「お?」
地響きが伝わってくる。
何事かと思ったタクヤに、
「増援が来たようですよ」
とタダヒロが状況を伝える。
それを聞いたタクヤは、
「助かった……」
と呟いた。
銃弾は残り少なく、さすがにこれ以上の抵抗は無理だと諦めていたところだった。
かくなるうえは、如何にしてここから脱出するかという事になっていたのだが。
それを実行にうつす必要は無くなった。
「ついでに補給も来てます。
弾薬も幾らか到着しました」
「助かるな、それは」
すぐにでもその銃弾が欲しかった。
何せ、予備の弾倉があと一つというところまで銃弾が減っていたのだから。
「ついでに、飯は?」
「それはまだ何とも。
そのうち連絡も入るでしょうけど」
「そっか……」
意欲が下がっていく。
銃弾なども確かに大事だし、それが無いと死ぬのだが。
それが手に入るというなら、腹をふくらますものが欲しくなる。
体力もかなり落ちてきてるので栄養補給が必要だった。
何より、
「まあ、もう少しがんばりましょう。
交代がくれば休めるでしょうから」
「そうだな、そうしたら寝よう」
削りまくった睡眠時間が今は欲しかった。
その後、到着した補給部隊が最前線部隊に合流。
それを守ってきた護衛部隊と交代する形で、生き残った者達は休息をとっていく事になった。
敵の増援も途切れ、戦闘も散発的になっていく。
残った敵は、やってき戦車によってなぎ倒されていく。
残った者達も、護衛としてやってきた部隊に蹴散らされていく。
今回の戦闘はこれによって決着がついていく事になる。
実際に戦闘が終結するまでにはもう少し時間がかかる事になる。
敵の後続が完全に絶えるまでまだ少し時間がかかったからだ。
それでも更に戦闘が継続されるという事はなかった。
兵衛府の防衛は辛くも成功した。
その為にはらった犠牲も大きい。
構築した前線は崩壊している。
それをどうやって回復するのかで、既に上層部は頭を抱えている。
失った人命も、怪我を負った者も多い。
社会復帰が不可能なほどの障害を負った者の今後についても課題となる。
だが、それでも勝利は勝利である。
拠点としての兵衛府を守りきったことで、次に繋がる展開に持ち込む事が出来る。
全てを失ったわけではない。
敵を撃退する為の場所は残ってる。
それすらも失って、敵のいる大陸から撤退するわけではない。
港も空港もあり、工場も残ってる。
それがあるだけでも、今後の展開は有利になる。
その為の動きも始まっていく。
何はなくとも失った兵器や物資の補填が必要になる。
その為の増産が求められていく。
新地道自治体は既にそれを考え始めていた。
資源の確保とそれらを加工する工場の増設。
それらを運営する事になる企業への資金提供。
必要な社会基盤の整備。
その為の道筋を定めるべく、首脳部は様々な計画をたて、それをつきつけあっていった。
何が最適なのかを探るために。
企業もそれは同様で、更なる設備投資に向かっていく事になる。
今回の戦闘で、物資の供給量が現状のままでは足りない事が判明している。
それを補うためにも、更なる設備が必要になる。
原材料の採掘・確保はもとより、それらを運搬し、加工する過程の洗い直しが必要になった。
特に遠く離れた兵衛府まで如何に物資を運搬するかは切実な問題になる。
これらを解決するために、各起業は己の業種で何が出来るかを考えていく事になる。
いずれ自治体から打診されるだろうと考えて。
これはこれで商売の種になるのだから。




