51話 攻防の転換 6
兵衛府から出撃した部隊は、こうして敵を撃破しつつ最前線へと向かっていく。
その進軍は、敵の流れを真っ二つに引き裂いていくようであった。
その先頭に立つ戦車隊は、押し寄せる敵をものともせずに撃破する。
続く後続も残った敵を接近させずに倒していく。
補給物資を運ぶ彼等は、それを心待ちにしている最前線へと確実に近づいていった。
この戦車の活躍は、若干ではあるが兵衛府の防衛線にも影響を与えていた。
戦車によって撃破される事で、敵の後続が減る。
また、進軍も若干だが滞る。
おかげで、防衛にあたる者達への負担が減少していった。
それは当初の予想よりも大きなものであった。
もしかしたら防衛すらも破綻するのではないかという危惧もあったが、それはこの時点で回避された。
敵の攻勢が途切れ途切れになったので、対応する側にも余裕が生まれる。
その余裕が物資の補給を行い、少しだけだが休息を得る時間につながった。
それらも押し寄せる敵の数が減ったからである。
兵衛府が陥落する可能性も、大幅に低下していった。
そんな兵衛府をあとにして、戦車隊を先頭にした補給部隊が進む。
現状でもっとも逼迫してる最前線に向けて。
そこだけ状況は最悪に陥っている。
何せ、敵を押しとどめるべき拠点のほとんどが陥落してるのだ。
残って抵抗を続けてるのは、展開していた部隊の一部でしかない。
それらも残り少ない物資でどうにかやりくりしてるだけ。
このままでは本当に壊滅してしまう。
そうさせない為にも、そこに補給物資を届けねばならなかった。
「だが、この補給物資が届けば、どうにかなるな」
兵衛府の司令部ではそういった考えが出てきていた。
山場は超えた、というのが現段階での考えである。
それも、敵が更なる増援を出してこなければであるが。
「敵地の方はどうなってる?」
「爆撃に出た部隊の送ってきた情報によれば、ほぼ壊滅状態にあるようです。
残ってる敵もいますが、そのほとんどは壊れた施設の復旧にあたってると」
「なら、暫くは攻撃もないか」
生産設備を破壊された敵は、しばらくはまとまった攻撃に出る事もないだろう。
ならば、その間に前線を再構築し、敵への対応能力を可能な限り回復していく事になる。
前線への補給はその一環となる。
それで回復した部隊を用いて敵を更に殲滅し、今回の戦闘を終わらせたいものだった。




