49話 攻防の転換 4
接近する敵、天使の群れを防衛線が受け止めていく。
それらに向けて銃撃から砲撃まであらゆる攻撃が加わっていく。
遠距離にいる者にはクラスター弾が打ち込まれる。
長大な一本のロケット弾から、更に細かなロケット弾が分離してばらまかれていく。
散弾のように散らばるそれらは、広範囲にわたって爆発を引き起こす。
ひしめき合うように進んできた機械の軍勢は、次々に粉砕されていく。
直撃は避けても、地表すれすれで爆発する細かなロケット弾が天使を巻き込んでいく。
そこから更に近づけば、今度は長距離砲撃が加わる。
榴弾による攻撃で天使は更に数を減らしていく。
この段階で、密集していた天使達の隊列にもかなり大きな隙間が発生している。
その隙間が攻撃を散発的なものにしていく。
圧倒的な大兵力であるならば、生半可な戦術など必要無い。
消耗を考える必要がないなら、ただひたすらに数で押して相手を圧倒すればよい。
それだけで勝てる。
実際、戦闘力で劣る天使はただひたすらに押し寄せるだけで勝利を得ていた。
どれだけ撃退しても、倒した以上の数で迫ってくれば対抗しようがない。
もちろん、戦闘後の事も考えれば損失は少ない方が良い。
次の戦闘を考えれば、残存兵力が多い方が良いのだから。
だが、補充や追加が次々にやってくるならばそれも考えなくて良くなるのだろう。
それを天使は実現している。
倒しても後方の工場で増援を次々に生産してくる。
これがあるから人類は圧倒的に不利な戦闘を余儀なくされていた。
今回はそれを考慮して、航空機による工場の爆撃を敢行していた。
敵の戦闘部隊への攻撃を後回しにしてまで。
その為、前線部隊には多大な負担がかかる事になっていた。
おかげで天使の増援は急速にしぼんでいき、後続部隊はほぼ壊滅状態に陥っている。
最前線を突破する時点でも数を減らした天使達。
それらが兵衛府に接近する中で更に数を減らす。
防衛戦を構築してる兵士達の前に出現する頃には、数も疎らになろうというものだ。
それらに兵士達は容赦なく銃口を向けて引き金を引く。
設置された機銃座を始め、車載機関銃に兵士が持つ銃が火を噴いていく。
破裂のような発射音がそこかしこから鳴り響く。
その度に天使が地に落ち、活動を停止させていく。
あっという間にがれきの山が構築されていく。
それが防衛戦のそこかしこで起こっていった。
数が多いとはいえ、個体の能力を見ればこの程度なのが天使である。
脅威ではあるのだが、大げさにとらえる必要もない。
何せ歩兵用の銃で倒せるのだ。
侮ってはいけないが、怖じ気づく必要も無い。
当てれば確実に倒せる。
それが天使なのだから。
だが、それでもやはり脅威である事に変わることはない。
歩兵銃で倒せるとはいっても、人より劣ってるというわけではない。
劣るというのは武器を持ってる人に比べての事だ。
もし、銃も無く立ち向かえば、人は簡単に蹂躙されてしまっているだろう。
銃弾で撃ち抜けるとはいっても、金属の体を持つ存在だ。
素手では有効な攻撃を与える事は出来ない。
もし拳で殴りつければ、殴った人の手の方が壊れる事になる。
銃とうい武器もなく戦う事になれば、人が対抗出来る相手ではないのだ。
だからこそ、誰もが迫る天使に多少の緊張は強いられていた。
手にした銃が故障をしたら、弾薬などが補充が途切れたら。
その時、人類は呆気なく崩壊する。
だからこそ、誰もがそうならないように願っていた。
そんな攻防が展開される中で、前線に向かう部隊が行動を始めていく。
先頭を走る戦車の集団は、最前線を通じる道を進む。
その前方に敵を見据えて。
戦車隊はそれを見ても止まる事はなく、砲口を敵に向けた。
そして、走りながら射撃を開始していく。




