48話 攻防の転換 3
「そろそろかな」
兵衛府で待機を命じられていた立橋ヒロキは、頃合いを見計らっていた。
与えられた仕事から動くならそろそろだろうと予想をして。
長年こういった仕事をしてきたせいで、おおよその流れは予想が出来るようになっていた。
はっきりと指示が出されていたわけではないが、やるなら今だろうと考える事が出来る。
そして、その考えに違わず、ヒロキの所に指示が飛んできた。
『おう、聞こえるか。
そろそろ移動だってよ』
同じ会社の上司にあたる者から通信が入る。
それに伴ってあちこちからざわめきが上がってきていた。
待機状態だった者達がにわかに活気づいていく。
「了解。
こっちも動けるようにしておきます」
そう言って通信を終えたヒロキは、自分の配下の連中に声をかけていく。
「おーい!
そろそろ出発だぞ。
動けるようにしておけ!」
周りにいた連中は、その声に応じて動き始める。
車輌やバギーに乗り込み、エンジンを始動させていく。
また、手持ちや車載の銃の調子も確認していく。
それを見てヒロキは満足そうに頷いていく。
(怯んでる奴はいないようだな)
ヒロキ達に与えられた仕事は、前線への突入である。
正確に言えば、前線部隊に届ける補給物資の護衛だ。
輸送用のトラックの周囲をかため、敵を排除する。
幸いな事に、先頭に立って突っ込めというわけではない。
道を切り開くのは他の部隊がやってくれる。
とはいえ危険である事に変わりはない。
周りは敵だらけだというのだから。
普段の仕事よりよっぽど危険である。
敵はモンスターよりも数多く、戦闘力も高い。
遠距離攻撃の手段も持っており、近づかれるだけで損害を受ける可能性がある。
だからこそ、護衛の重要性も高いのだ。
そうこうしてるうちに出発の時間がやってくる。
先頭に立つ部隊が出発していく。
重量感のある履帯の音がヒロキ達にまで届いてくる。
(動き出したか)
そう思いながら愛用してるバギーに乗り込む。
エンジンを始動させ、通信機で部下に呼びかける。
「出発だ、準備しろ」
それを聞いた部下が動き出す。
ヒロキの周辺もエンジン音で一気にうるさくなっていった。
出撃した部隊はそのまま前線へと向かって進んでいく。
敵の勢いはまだゆるんでないが、それが滞るのを待ってるわけにもいかない。
兵衛府はともかく、このままでは最前線に残ってる部隊が全滅する。
それを避ける為にも、必要な物資を届けねばならない。
その為の出撃でもある。
同時に、強引にでも敵を蹂躙し、敵の勢いを削ぐためでもある。
また、合流した最前線部隊と共に、機械の天使を挟撃する狙いもある。
敵の流れを乱し、勢いを削いで戦闘を有利に進めねばならない。
その為の遊撃でもある。
単なる輸送任務というわけではない。
だからこそ、突破力のある部隊が参加していた。




