47話 攻防の転換 2
前線を突破した敵を遮るが如く前線部隊が奮闘している。
あちこちから銃撃と砲撃が鳴り響く。
轟音が重なってまるで一つの音であるかのうように連なっている。
その音が鳴り響くごとに、敵勢は粉砕され、機械の体は部品単位のがらくたに変化していく。
それでも長大な敵の戦列はまだまだ続く。
後続が減少しているのでいずれは途切れるのであるが。
それまでにはまだ時間が必要だった。
だが、兵衛府はまだ持ちこたえている。
接近してくる敵に備えて準備をととのえる時間があった。
万全とは言えなくても、幾らか体制を構築する事が出来た。
それだけの時間を前線は作り出した。
問題なのはその前線である。
敵の流れが兵衛府の方に向かった事で、残っている前線部隊への圧力は幾らか緩和された。
残った基地に立て籠もってる前線部隊の残存は、今は流れていく敵勢の横っ腹を攻撃する形になっている。
もちろん敵もそんな残存部隊を放置してるわけではない。
兵衛府に流れていくもの達とは別に、前線部隊に襲いかかるものもまだ残っている。
兵衛府に流れるものに比べれば少ないが、前線部隊の脅威となるには充分な量であった。
それらが弾薬も人も減少しつつある前線部隊にとっては大きな負担になっていた。
「下手すりゃ全滅ですかね」
タダヒロの声にタクヤは、
「そうならないでもらいたいけどね」
と軽い口調で返した。
ただ、口調ほど内心は気楽なわけではない。
最悪の事態が迫ってるのを感じて相応に慌てている。
だからこそ、態度だけでも気楽に気軽に振る舞っていた。
こんなところで慌てふためいても何の意味もないのだ。
害にすらなる。
もしタクヤが取り乱しでもしたら、それを見た者達も同じような態度を取るだろう。
雰囲気というのは感染する。
そして雰囲気は状況に影響を及ぼす。
ここで慌てた態度を見せてそれが全体に及んでしまったらどうなるか。
結果は明らかである。
どうにかまとまって動いてるこの部隊が、一気に混乱していく事になるだろう。
そうなったら戦闘どころではない。
周囲を敵に囲まれてるようなこの状況でそうなったら、敵に蹂躙されて終わりだ。
そうしないためにも、ギリギリまでこの状態を保たねばならない。
「出来るだけあがいておこう。
そのうち助けが来るのを祈って」
言いながら手にした歩兵銃で敵を撃つ。
その横でタダヒロも同じように射撃をしていく。
「でも、応援が来ると思いますか?」
「来て欲しいよ。
出来ればすぐに」
あえて明確にこたえず、タクヤは願望を口にした。
正直に絶望的な本心をさらすよりは良いだろうと考えて。




