46話 攻防の転換
最前線の心配をよそに、兵衛府では迫り来る敵への反抗が開始されていく。
迫る敵勢は確かに多いが、対する兵衛府の防備もかたい。
設置された砲台は、敵が有効射程距離に入った所で攻撃を開始。
迫る機械仕掛けの天使を残骸に変えていく。
更に接近してくる敵には、展開した迫撃砲が攻撃を加えていく。
比較的近距離に迫った敵は、これで更に数を減らしていく。
それでもなお敵の進撃は止まらないが、脅威は大きく減っている。
兵衛府間近まで接近すれば、今度はそこかしこにひろがっていた部隊が攻撃を始める。
自動機銃座に車載機関銃、兵士が持つ歩兵銃などなど。
どうにか突破した敵も、そこで足を止めていく。
敵の足止めは成功し、それらが兵衛府に迫る気配は見えない。
だが、それもいつまで続くか分からない。
敵の物量が人類をしのぐか。
人類の火力が天使を食い止めるか。
両者にとっての最終戦は始まったばかりである。
「状況はどうなってる?)
「現時点では問題ありません」
兵衛府の司令部において、そんなやりとりが交わされていく。
「弾薬は?」
「ギリギリです、残念ながら。
輸送されてくる分があるので、敵を撃退するだけの量は揃うはずですが」
「そう上手くいくかな」
「難しいですね」
司令部は司令部で戦況全体を眺め、だからこそ懸念を抱いていた。
武器や弾薬が着実に行き渡るならば問題は無い。
かなり危ういがどうにか敵を撃退する事も可能だろうと予想されている。
しかし、そう簡単にいくなら誰も苦労はしない。
求められてる所に必要なものが届くという保障はない。
続々と到着する物資がどこしまわれてるのか。
見つけた物資を宛先にしっかりと届ける事が出来るのか。
消費されていく速度に、供給がおいつくのか。
滞りなく全てがこなされるわけではないので、どこかで手違いは発生する。
それが致命的な状況を呼び込む可能性は充分にある。
「まあ、やるしかないが」
「まったくです」
各部署における活動は担当する部隊に任せるしかない。
司令部の役目は、そんな彼等に適切な指示を出す事だけ。
余計な口出しなどしてる暇など全くない。
そんな事をすれば、それこそ混乱を引き起こす事になるだろう。
「信じるしかないか」
防衛に従事する全ての者達をだ。
司令部の期待に応えてるわけではないが、各部隊・各部署は奮戦健闘していた。
敵に相対する戦闘部隊だけではない。
それらを支える後方部隊も、持ち場にて最大の努力を発揮していた。
兵員や物資を運搬し、怪我人を治療し、機械の修理に奔走していた。
必要な情報を通信機器でまわし、書類が右に左に動いていく。
人も物もあちこちに動き回り、全てが混沌としていた。
それでいて奇跡的なまでに円滑に全てが動き、軍勢は一個の集団として機能していた。
いつまでこの状態が続くかは分からないが、今はまだ組織は組織として活動を続けている。
その活動が迫る敵の粉砕に貢献していく。




