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【仕切りなおし】異世界防衛戦記 ~トンネルの向こうは戦場だった~【打ち切り】  作者: よぎそーと


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40話 襲来 17

 タクヤ達が下っ端同志であれこれ考えをまとめてる間に、山城達の話し合いも終わった。

 あれこれ話合ってるタクヤと森山はその姿に気づいて一旦言葉を止める。

 そんな二人に、

「まとまりました」

と山城は伝える。

「これが大雑把な作戦です」

 覚え書きが出される。

 それを見てタクヤと森山は少しばかり驚いた。

「まとまってる」

「へえ」

 予想していたほど酷くはなかった。

 探せば粗はあるだろうが、即座に問題になるほどの問題もない。

 残りの弾薬や敵の動きから、適切と思える行動などが記されている。

「よくここまでまとめましたね」

「考えそのものは出来上がってましたから。

 あとは肉付けするだけだったので楽でしたよ」

 事も無げに言う山城。

 それを聞いてタクヤは胸の中で否定する。

(そんなわけないだろ)

 本当に能なしなら、撤退・脱出をいつやって、どこにどうやって移動していくのかなんて考えられるわけがない。

 残りの物資とこちらの戦力と敵の勢力をまとめねばならないのだ。

 変化する状況の中での最適解を出すのは難しい。

 それを、大雑把とはいえ構築したのは充分に賞賛するべき事である。

(大したもんだ)

 少なくともタクヤは、山城への評価を上方修正した。

 こいつはお飾りの能なしではないと。



「とはいえ、どのみちきついのは確かですね」

 書かれた内容を読んだ森山は、事の難しさをあらためて感じていた。

「適中突破は避けられないし。

 それまで生き残ってなければならない。

 それも、損耗もほとんどなく」

「まあ、全てが上手くいったら、というのがありますから」

「さすがにそれは難しいんじゃ?」

「難しいですよ。

 でも、それが出来なければどのみち全滅です」

「失敗は出来ないか」

「そういう事です。

 自分で言うのもなんですが、こんなの実行不可能だと思いますよ」

 作戦をまとめてきた山城が呆れるような調子で言う。

「行動を開始するまで損失をおさえ、行動開始しても誰も死なないのが前提ですから」

「まず無理ですね」

 森山があっさりと言い切る。

 確かにそれは、無理や無茶を積み重ねた不可能という領域のものである。

「それが出来るなら、こんなところに固まってないでしょう」

「ですよね。

 そう思います。

 でも、これ意外に思いつかなかったんですよ」

 それは山城達の無能を証明する事ではない。

 どう考えても無理があるこの状況がもたらす結果でしかない。

「でも、やらなければここで全滅です」

 物資はいつまでも存在するわけではない。 

 どうにかするためには、どこかで何らかの無茶をする必要がある。

 その為の行動案が、まとめられて紙に書かれた事なのだ。

「じゃあ、やるしかないな」

 タクヤはそう言って紙に書かれた事を見つめていった。



 それはタクヤの考えと概ね一致していた。

 周りの者達との話し合いでも、同じような事を言われた。

 適中突破による、味方との合流を。

 それ以外に選べる道はなかった。

「これでやるか」

 部隊全体の動きは決まった。



「しかし」

 話しが終わり、全部隊に作戦が通知されていく。

 それらが終わってから山城がタクヤに話しかける。

「随分と戦闘での動き方が分かってますけど、どこでおぼえたんですか?

 仕事を始めてからがんばったのは確かでしょうけど」

 それは山城からすれば不思議であった。

 促成培養で作られた指揮官だからこそそう思いもした。

「現場での経験もあるでしょうけど、本当にそれだけなのかと思いますよ。

 戦闘がよく分かっておられる。

 以前から何かやってたのかなと思うんですが」

「ああ、それはまあ……」

 言われてタクヤは少しだけ息は吐いた。

「親父がさ、こういう仕事してるんだよ。

 それで、ガキの頃から色々聞いたりしててね」

「ほう……」

「へえ……」

 その場にいた森山も声を漏らす。

「だからですか」

「なるほどねえ」

「あと、何かあった場合にって、色々教えてくれたよ。

 危なくなったらどうすればいいとか。

 こういう時はこうしたらいいとか」

 それがこの仕事で活きてるのかもしれなかった。

 あまり自覚する事はなかったが。

「お父さんに感謝しないといけないですね。

 でなければ、我々はとっくに死んでた」

「まったくですね」

「よしてくれ。

 いい年してようやく結婚した爺ィなんだから」

 実の息子としては苦笑するしかない。

 褒められてうれしいとは思うが、その対象の普段の姿を克明に見てきたから、どうしても素直に受け取れない。

「おかげで俺らは親父の定年前に仕事にありつかなくちゃならなかった」

「それはまあ、そういう事もあるという事で」

「それに、それも含めてお父さんには感謝しないといけないですね。

 でなければ、この時期に班長がここにいる事もなかったかもしれないですから」

「それもそうですね。

 生まれた時期が違ったり、進学とかをしてたらここにはいなかったわけですし」

「おいおい」

 思わず突っ込んでしまう。



「それで、お父さんはもう定年で?」

「たぶんそうなんじゃないかな。

 もう……60くらい?

 今年か来年にはそうなってるはずだし」

「それはまた……随分と」

 予想以上の年齢に山城と森山は驚いた。

「じゃあ、お母さんも結構な年齢で?」

「まあね。

 といっても親父よりは若いよ。

 確か、50……もっと若いか?」

「……結構な年の差夫婦ですね」

「て事はお二人が結婚したのって……」

 二人ともあれこれと計算をしていく。

 それを見てタクヤは更に苦笑していく。

「まあ、二人とも遅くなって結婚したのは確かだよ。

 でもさあ、これが酷いんだ。

 俺が生まれたのって、結婚して半年もしない頃だったらしんだ。

 計算、合わないだろ」

「ああ、たしかに」

「おそらく、お二人とも熱烈に愛し合ったんでしょうなあ」

「なのかもなあ。

 結婚してからもそんな調子だったし。

 俺、下に兄弟が何人もいるんだぜ」

「それは凄い」

「男として、その元気さは見習わなくちゃなりません」

 そう言って三人は声を上げて笑った。

 こんな時だが、こんな時だから、鬱屈しないで笑っていなければならなかった。

 出なければ気が滅入ってしまう。



 そんな笑いが起こっている場所よりはるかに遠く。

 兵衛府にある空港。

 一井物産で使用してるそこに、輸送機や中型の旅客機などが着陸していく。

 緊急で必要になる人員や武器弾薬などを運び込んでいる。

 戦線の補強で即座に投入するためであった。

 その中に、それなりに年齢のいってる連中がいた。

「ようやく到着だな」

「旅客機だったけど、腰がいたくなるな」

「それで、何処にいけばいいんだ?」

 年齢は若く見ても50代の後半であろうか。

 60にさしかかってるか超えててもおかしくはない。

 そんなのがそれなりの数がいる。

「定年の爺ィを集めておいて、案内もないのかねえ」

「忙しいんだろうな」

「それは分かるけど」

 そんな文句が上がっていく。

 そこに作業用カートに乗った者が近づいていく。

「増員の人達か?

 だったら、あっちに行ってくれ。

 悪いけど、案内してる暇もないんだ」

 それだけ言うとカートに乗った者はすぐに離れていく。

 言われた者達は少々唖然としたが、すぐに動き出す。

「相変わらずだな、こういうところの対応ってのは」

「まあ、らしいって言えばらしいがな」

「怒鳴らなかっただけ御の字だな。

 少しは礼儀をわきまえてる」

「まあ、どっち行けばいいのか分かったからありがたいわな」

 ぞろぞろと動きながら、そいつらは指された方へと向かっていく。



「そういえばお前の子供もこっちにいるんじゃないのか?」

「ええまあ。

 確かこっちで働いてるはずですよ」

「じゃあ、もしかしたら会えるんじゃないか、どこかで」

「どうですかねえ。

 最前線に行ってたら、望みは薄いですけど」

「でも、輸送の護衛だろ?

 そこまで連れていかれはいしないんじゃ」

「いや、この会社の事だ、それくらいの無茶はやるだろうさ」

「違いねえ」

 全員苦笑する。

 会社の無茶に振り回されるのは今に始まった事ではない。

 何十年もそれに付き合ってきた彼等は、それに慣れていた。

「ま、お前の子供なら大丈夫だろ。

 殺したってくたばるわけがない」

「それもそうだ」

「違いない」

 色々と言われてる方は苦笑している。

「そうだといいんですけどねえ」

 言いながら、少しだけ心配そうな顔をする。

「まあ、なんならお前が救援にいけばいいさ。

 今度は課長待遇なんだろ?」

「臨時の役職ですけどね。

 給料は変わらないですよ」

「なに、定年退職前の最後の花道だ。

 せいぜい頑張れ」

「実際、結構大きい部隊を任されるんだし」

「よろしく頼みますよ、課長待遇」

 からかうような口調で励ましの声があがる。

 実際、課長待遇というのは臨時のものである。

 係長でしかない者により多くの部下・部隊を与えるための方便だ。

 それだけの能力があると判断されたためでもあるが、組織全体での人手不足を示してもいる。

 臨時でこの役職を設定しなければならないほど、役職者が足りないという。

 それもいつもの事ではある。

 なお、一井物産戦闘部隊における係長は、軍における小隊長、場合によっては中隊長にあたる。

 階級で言えば少尉から大尉にあたる。

 課長は中隊長、部署によっては大隊長あたりと同等と言える。

 これも階級で言えば、だいたい少佐から中佐といったところであろう。

 これだけの立場の人間を臨時で用意しなくてはならないというのは、組織として機能不全ではないかと言える。

 だが、逼迫してる状況において、そんな事を言ってるわけにもいかない。

 多少なりとも経験があるなら、それなりの職務を負ってもらわねがならなかった

 それなりの役職を大過なくつとめてきたならば特に。

「まあ、なんとかしてみるしかないでしょうなあ」

 そう言いながら、課長待遇となった男は歩いていく。



 一井物産護衛部隊、課長待遇係長、立橋ヒロキ。

 増援部隊の指揮官として兵衛府に到着。

特に脈絡も無く前作のキャラが登場してるが、一度やってみたかっただけである。

今後話しにからんでくるかはさっぱり分からない。


22:00に続く

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新しくやりなおしてる↓
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n8924fg//

前編にあたる話はこちら。
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n5916es/

ブログのほうでも幾つかは掲載している。
『よぎそーとのブログ』
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