37話 襲来 14
撤退を続けるごとに増大していく仲間の数は、戦闘を楽にしていった。
敵を押しとどめるという戦線の役目は失われてしまったが、部隊の全滅は避ける事が出来ていた。
また、合流して増大していく戦力は、敵への攻撃を加える拠点ともなっている。
押し寄せる敵は戦線を突破する度にタクヤ達からの攻撃を受けている。
それは敵を食い止める事は出来てないが、漸減にはつながっていた。
崩壊した戦線をたてなおすよりは効果的な対応であったかもしれない。
そんなタクヤ達のところに、戦線の末端の部隊も合流してくる。
他の部隊もこのままではまずいと思ったのだろう。
こうして戦線の外れに展開してた部隊は、一カ所に合流する事となった。
司令部にもその事は伝えられており、戦況を締めず画面に表示されていた。
戦線を縮小させてる事は、それも勝手に行ってる事には非難があがる。
しかし、本来ならとっくに潰えていたはずの部隊がまだ存続し、多少なりとも敵の足止めになってるのを否定は出来ない。
まして、そうやって残存してる部隊に敵のが幾らか向かっている。
それは兵衛府に向かってくる敵を多少は減少させていた。
わずかながら余裕が生まれ、戦線の維持を手伝っていた。
兵員や物資を敵に蹂躙されて失うよりは良い結果だった。
戦線の他の部分では、壊滅してる部隊もある。
それらに比べれば、充分に戦闘に貢献していた。
ただ、それらへの救助や援助は出来ない。
前線を突破した敵は既に兵衛府に向かっており、そちらの防衛の準備で手が一杯だった。
かろうじて保っていた輸送路すらも維持が出来なくなっている。
やむなく前線に残っていた中枢部隊に撤退を指示し、戦線を兵衛府周辺まで後退させる事が決まっていた。
空輸されてくる増援部隊と合わせて迎撃態勢をとり、突破してきた敵を一網打尽にする予定であった。
そんな状況で、かつての前線に残った部隊を助ける事など出来ない。
そんな余裕はどこにもなかった。
一応、ヘリコプターによる空輸、そして兵士の派遣なども考えられた。
あるいは、残っている者達の救助も検討された。
だが、得られる成果を考えるととても割にあうものではない。
損得で考える事では無いのだろうが、貴重な物資や兵力、時間戸手間を割いてまでやる事かと考えられてしまう。
それでもどうにかして救出はしたいのだが、それもままならない。
今は突破してきた敵を迎撃する事が急がれる。
それ以外はどうしても優先順位を下げるしかなかった。
タクヤ達のように活躍してる部隊も例外ではない。
その事はタクヤも諦めつつ理解はしていた。
どうせ助けにはこないだろうと。
司令部をなじってるわけではなく、状況からしてそれは無理だろうと思っていた。
もとよりそれらを頼りにするつもりはなかった。
出来る限り自分達でやれる事をやる…………そのつもりだった。
その為に、司令部との連絡を常にとり、現状の把握につとめた。
自分達の状況を伝え、戦線全体の状況を聞く。
また、司令部の方針も確認し、それに合わせて何が出来るかを考える。
何をするにしてもタクヤ達だけでどうにかなるものではない。
味方の動きと意図を知り、それらと可能な限り連携しないといけない。
もちろん敵の動きもある。
これらがどう動くか、どのように展開してるのかも出来るだけ知らねばならない。
司令部から回してもらってる情報にはそれも含まれる。
無線通信により得られたその情報から、この先の事を考えていく。
有利な条件と不利な状況をあわせ、生き残る為の最適を考えていく。
押し寄せる敵はあまりにも数が多く、真っ向勝負でどうにかかるわけがない。
ならば、正面切っての戦闘は避けるしかない。
それでいて、相手を撃退、ないしは振り切る手段を考えねばならない。
「どうしたもんだかな……」
考えてる事はあるが、それが上手くいくかは分からない。
それでも、何とかしようとあれこれ考える。
幸い、あちこちの部隊が合流し、物資も人もそれなりにある。
上手くいけば、どうにかなりそうではあった。
22:00に続きを




