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【仕切りなおし】異世界防衛戦記 ~トンネルの向こうは戦場だった~【打ち切り】  作者: よぎそーと


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36話 襲来 13

 迫撃砲弾が飛んでくる風切り音が鳴る。

 それらが目の前に押し寄せる敵の頭上に落ちていく。

 後方にある陣地からの砲撃である。

 それを合図にタクヤ達は撤退を開始した。



「落ち着いて、ゆっくりと、急いで逃げろ」

 矛盾をはらんだ指示を出しながらタクヤはバギーに乗り込む。

 後ろにつないだ牽引車には2人ほど人が乗る事になっている。

 運搬車輌が足りないので、人を乗せる事が出来るものは1人でも多くの仲間をのせていく事になっていた。

 当然ながらバイクにも牽引車をつけている。

 それすらもない場合でも2人乗りで人を運ぶ事になっていた。

 そうした者達は、背後にやってくる敵に攻撃を加える事になっていた。

 持ちこめるなら7ミリ機関銃を。

 それが駄目なら7ミリ歩兵銃を。

 とにかく敵に向けて少しでも攻撃を加えて追跡を振り切らねばならない。

 各車両が、バイクやバギーは移動しながらも攻撃を続けていった。



 迫撃砲によってそんな敵の後続も少しは撃破出来ていた。

 それでも敵の数は多く、追撃は容赦が無い。

 砲撃による攻撃も、敵の勢いを止めることはない。

 それでも、タクヤ達は追いつかれず、だが離れもしない距離を保っている。

 敵から逃げるだけなら、最大速度で移動するべきだがそれは難しい。

 道の状態が悪いので、速度を上げる事が難しい。

 下手にそんな事をやっても、転倒する危険がある。

 なにせ急造の陣地だ、そんなところまでしっかり作れてるわけではない。

 また、駐車出来る場所もそれほど多くはない。

 下手に後退先に押し寄せたら混乱と渋滞が発生。

 それを避ける為に、ある程度の速度制限をしていた。

 敵に追いつかれる事はなかったが、あまり良い気分でもない。

 どうにか目的地に到着したところで、タクヤは安堵で大きく息を吐いた。



 後退した陣地での戦闘は先ほどまでよりも楽なものになっていた。

 何せ部隊の人数が一気に上がる。

 その分だけ火力も増大し、敵への攻撃も増加する。

 銃口や砲門の数が増えた事で、戦闘はかなり楽になった。

 敵を撃退は出来ないが、近づく前に倒す事が出来るようになっていった。



 そして、タクヤ達の陣地で盛大な爆発が発生する。

 持ち運ぶ事が困難だった燃料や爆薬を使った爆弾だ。

 どうせ持って行けないならと、撤退にあわせて設置していった。

 どれだけ効果があるかわからないが、敵を少しでも巻き込めればと思ってのものだ。

 幸い、タクヤ達を追ってきた敵は陣地の上を通り、更にその後ろにも続いていた。

 おかげで、陣地のあちこちに仕掛けておいた爆弾はかなりの敵を巻き込む事が出来た。

 時限式だったので、タクヤ達のほうで起爆を操作できなかったが不安だったが、それも杞憂になってくれた。

 続けて何度も出来ないのが残念だった。

 もう一度同じ場所に戻って設置しなおすわけにはいかない。

 地道に銃撃と砲撃であとはやっていくしかなかった。



「で、次の撤退は?」

「準備中です。

 物資の移動は始めてます」

「そうか。

 そのまま続けてくれ」

 やってきた陣地でタクヤはそのまま指示を続ける。

 撤退はこれで最後ではない。

 今後も陣地を移動して敵の攻撃をしのぐつもりだった。

 何せ戦線全部に渡って敵が押し寄せている。

 その圧力を少しでも小さくするには、分散してる味方と合流するしかない。

 少しでも火力の密度を上げねばならなかった。

 でなければ個別に撃破されてしまう。

 集まったところで、それが打開策になるかどうかは分からないが。

 それでも、分断されて撃破されるよりは長生き出来る。

 そのための移動をこれからも続けていかねばならない。



 問題なのは、そうする事で本体や兵衛府から離れていく事である。

 分断されて後退できるのが末端の方向しかないのだから仕方ない。

 なのだが、これはこれで問題である。

 いずれは行き止まりにいたり、補給も何もなく潰えていく。

 そうなる前に敵が消えてくれればいいが、その可能性は低い。

 味方がタクヤ達の方向に向かってきてくれればどうにかなるが、それも今は期待できなかった。



 とはいえ何の策も考えもなくこんな事をしてるわけではない。

 一応それなりに考えてはいる。

 成功率は高くはない、というより失敗する可能性の方が大きい。

 なのだが、少しでも全滅を避ける為に、そうなるにしてもそれまでの時間を長引かせるためである。

 やれるかどうかは分からないが、かすかな可能性に賭けていた。

 その場に留まるよりは生きながらえる事が出来るのは確かである。

 その為にタクヤ達は、再び隣の陣地へと移動していこうとしていた。



「そっちの方はこっちでもやっておきます」

 タクヤの陣地にいた指揮官が申し出てくる。

「だいたいのやり方は分かったので、同じように指示を出しておきます」

「そうしてくれると助かる」

「まあ、これくらいしか出来そうにもないので」

 そう言って指揮官は笑顔を浮かべる。

 こんな切羽詰まった状況には似つかわしくない朗らかな笑みだった。

 なんとなく、この人となら上手くやっていけそうだと思わせた。

「じゃあ、お願いします。

 ええと……」

「山城アキヒロです。

 おぼえてくれると嬉しいですね」

「わかった、なんとか憶えるよ、山城さん」

 まだ若い、そして名前すらもおぼえようとしなかった指揮官の名前。

 それをこの時になってようやく頭に刻もうと思った。

続きは20:00

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新しくやりなおしてる↓
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n8924fg//

前編にあたる話はこちら。
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n5916es/

ブログのほうでも幾つかは掲載している。
『よぎそーとのブログ』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/
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