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【仕切りなおし】異世界防衛戦記 ~トンネルの向こうは戦場だった~【打ち切り】  作者: よぎそーと


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33話 襲来 10

 周辺部隊の撤退を助けつつ、タクヤ達も行動にうつる時を狙っていく。

 そして、周囲の部隊にも声をかけていく。

 分断され孤立した者達に伝令を回し、タクヤの考えを伝えていく。

 賛同した者達は少しずつ動き出していく。

 少しずつ少しずつそれは形になっていく。



 伝えられた話を聞いた者達は様々な動きを見せていく。

 ある者は、持ち場で徹底抗戦をしていく。

 迫る敵の圧力は大きいが、なんとか持ちこたえようとする。

 ある者は自分達の所の補給所から様々な物を持ちだしていく。

 どうせそのままでは使う機会もないまま放棄されるだけになる。

 ならば、今ここで全て出し切ってしまおうとする。

 ある者は少しずつ少しずつ移動をしていく。

 敵に分断されないよう固まるために。

 その結果、戦線が手薄になって突破されやすくなるが、それはもうどうでも良かった。

 別の部分での話しだが、既に突破されてるのだ。

 今更そういう部分が一つ二つ増えた所で大差はない。

 それよりも、長く薄く配置され、突破されたら容易く分断されてしまう方がまずい。

 そうなれば、小さな単位で孤立して、呆気なくすり潰されていく。

 それだけ戦力が低下する。

 そうならないように、出来るだけまとまって行動出来るように集結を始めていった。



 当たり前だが、これらは司令部や現場の指揮官の指示によるものではない。

 状況を憂慮したタクヤが勝手にやってる事である。

 やってる事は命令違反であり、業務妨害である。

 どちらが処罰対象になるかと言えば、間違いなくタクヤの方である。

 当然ながら、これらの動きに気づいた指揮官などは、これらを止めようとする。

 だが、それらが成功する事はほとんどない。

 現場の兵士や戦闘員は生き残れる可能性の高い方に賭けていっている。

 それを留めるような指示に従うほど従順なものはいない。

 特に何年も生き残ってきた者達にこの傾向は強かった。

 また、指揮官などの幹部も、即席培養で作られた者が多い。

 それらよりも古参の連中の方が状況を良く読んでいる。

 その場の者達がどちらの言う事を優先するかは言うまでもないほど明確だった。

 止めに入った者達は銃口を突きつけられ、指示の撤回を強制的に求められる事になる。



 ここで、それなりに頭が回ったり、その逆に鈍い者は多少は長生きする事になった。

 頭が回る者は、状況を読み取って下手に逆らわない。

 戦闘が不利に傾いてるこの状況で、下手に守備に徹するわけにもいかない。

 やらねばならないのは分かってるが、もう少しは効果的な手段を求めていく。

 そして、銃を向けてくる者達のやろうとしてる事が、効果的な手段である事に気づく。

 そうと分かれば、無理して押しとどめたりはしない。

 むしり自分から協力するようになる者もいる。

 与えられた仕事や任務を放棄する事にはなる。

 なのだが、より効果のある方を選んだ方が結果的に求められる仕事の遂行につながると理解する。

 頭の回る者はそうして状況に対応していく事になった。



 鈍い者も結果として同じような事になっていく。

 状況がよく分からず、何をしたら効果的かも考えられない。

 指示から逸脱した部下を止めようとはするのは、それがあくまで仕事であるからだ。

 その指示にどのような意味があって、何を求められてるのかまでは分からない。

 それでも仕事は仕事と、部下を止めようとする。

 そこに銃を突きつけられるのである。

 もとより根性などないから、それに対抗する事もなくへこたれる。

 あとは言いなりになって、はいはいと頷くだけになる。

 何がどうなってるのかを理解することも、状況をどうにか立て直そうともしないし出来ない。

 ただ、現場にいた者達の方が幾らかまともだったので、これが功を奏した。

 無能ではあっても、無理して指揮を執ろうとしないから余計な問題が起こらずに済んだ。

 行動している部下も、そんな指揮官や上司の名前と肩書きを利用して指示を出していく。

 おかげで、こんな状況に陥ってからの方が全体の動きが良くなっていった。



 問題なのは、変に真面目に頑張る者達だった。

 体育会系の上意下達思考だったり、空論を口にするだけの権威主義的だったりする連中である。

 状況を考えて少しはマシな指示を出すでもなく、ただただ出されてる指示を守らせようとする。

 こういう連中は銃口が向けられても怯むことはない。

 むしろ、そのような事をしてる者達を叱責し、場合によっては自分が手にしてる銃を向けようともする。

 命令不服従は厳罰、反抗したら実力行使が当たり前の職場である。

 銃を向けてくるなどという事をしでかした者など、その場で撃ち殺しても咎められる事は無い。

 この時、変に真面目な者達は、いつも通りにそういった措置をとろうとしていた。

 ただ、今は普段とは全く違う状況である事を理解してない、出来もしないのは彼等の大きな失敗だっただろう。

 何より、銃口を向けてる兵士・戦闘員がどれだけ本気なのかを察知出来なかったのは致命的である。

 彼等もそんな事をすればどうなるかは分かっている。

 分かっていて、冷静に考えてそれらを実行してるのだ。

 脅しや威嚇ではない。

 そんな者達を無理矢理にでも言う事を聞かせようとするのは、愚の骨頂と言わざるえない。

 いつも通りに一方的に制裁を加えられると勘違いした指揮官達は、その報いを鉛玉で受ける事になった。

 いまだ敵が迫ってもきてない部隊の内部で銃声が響いた。

 その音の分だけ、指揮官が血を流していった。

 場合によっては命を散らしていった。



 撃たれた者達は何が起こったのか理解出来なかった。

 彼等は、自分達の地位や立場にいる者が、部下や配下に攻撃されるなどとはこれっぽっちも思ってなかった。

 それが当たり前で揺るぎないものだという、何の根拠もない信念を持っていた。

 妄想と言っても良いだろう。

 それがどれほど儚く脆いものであるかを全く理解していなかった。

 立場や地位に役職など、差し迫った事態などには何の役にもたたない。

 求められるのは適切な思考と言動、行動である。

 それを逸脱すれば、相応の制裁が待っている。

 そこに地位や役職など何の妨げにもならない。

 これらは、より大きな力を動かすだけの権限があるから有効なのだ。

 それが機能しなくなれば、即座に効果を失う。

 倒れていった者達はそれに気づく事が全くなかった。



 何より必要なのは、人間として何を持ってるかであった。

 それは、この状況でどう動かなければならないかを知る事であった。

 この状況でするべき事をなす事であった。

 何も分からないなら大人しくしてる事であった。

 周りの人間を引き込むだけの人望であった。

 これらが一つでもあれば、ここで終わるような事などなかったかもしれない。

 無かったから、全てがここで潰えていった。



 あるいは。

 人として備えておくべきだったものをもたなかったから。

 だから、役職や地位や立場などの、外部から与えられるものにすがったのかもしれない。

 それこそが全てだと思ったのかもしれない。

 それ以外を知る事もなく、感知する事も出来なかったから、与えられた権限が万能と勘違いしたのかもしれない。

 そして、与えられていた権限が力を失ってる事も分からないまま、何もない状態になって全てが消えていった。



 そう考えるならば、生き残ってる者達は地位や役職など関係のない力を持ってるのかもしれなかった。

 有能であれ、無能であれ、生き残るために必要な、生きていくために欠かせない何かを。

 それがこの場における明暗を分けていった。



 そんな者達を、タクヤは引き込んでいった。

 この状況で無駄な事をしないでくれる存在は貴重である。

 何かしら有益な行動をしてくれる者は稀少価値がある。

 いれば何かしら役に立つだろうと思って、各所での活躍を願っていった。

 どのみち、この後の事を考えれば各所における指揮官は必要になる。

 その役目を担ってもらうべく、その場で頑張ってもらう事にする。

 必要な指揮系統を確立していくために。

続きは20:00

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新しくやりなおしてる↓
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n8924fg//

前編にあたる話はこちら。
『異世界開拓記 ~トンネルの先は異世界だった~』
https://ncode.syosetu.com/n5916es/

ブログのほうでも幾つかは掲載している。
『よぎそーとのブログ』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/
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