22話 会社が手に入れたものと、支払った努力
兵衛府、そして中継地の開発は進む。
居住地に工場に採掘施設。
港も空港も増加・拡張されていく。
それらがも本格的に稼働するには数年はかかるので即座に効果が出るわけではない。
だが、見込める生産力の増大は、迫る敵を覆していける可能性につながる。
焦れったいが、それまでは現状の維持に終止する事になる。
爆撃によって敵の生産力が落ちてるといっても、まだまだ数は多い。
そこに無理して突っ込んでいっても返り討ちに遭うだけである。
それよりは、少しでも現状を維持して力を蓄えねばならない。
足りない様々なものを揃えながら。
当面は前線の自動化がなされていく。
機銃座に砲台を設置し、探知機を配置していく。
それらを動かす為の発電施設なども造成されていく。
発電所のように建設に時間のかかるものではなく、比較的簡単に設置できる発電装置が用意されていく。
それらが前線の負担を下げていく。
自動化された機械が押し寄せる敵を撃破していく。
これを拡大して敵との間に境目を作っていった。
配備される兵器も増強されていく。
地上部隊には装甲車が増加され、戦闘における火力・耐久力が向上した。
全体からすれば少量だが戦車の導入も決定されている。
もともと計画はあったが、ついに生産されていく事になる。
敵の能力を考えると過剰な戦力になるが、大は小を兼ねるという事で配備が確実なものとなった。
敵を突破していく時には役立つだろうと考えられている。
加えて、長距離砲なども配置されていく。
以前から押し寄せる敵に対処するために配備されていたが、これが増強されていく。
それも固定して配置するものではない。
自走化されたものが増えていく。
明らかに侵攻を意識した兵器が増加していった。
航空戦力も増加していっている。
一井物産で運用される爆撃機は順次数を増やし、爆撃の効果を高めていっている。
運用実績も積み重なり、正式採用されてないにも関わらず様々な改修もされていっている。
それが完成度を高め、軍による試験で出て来る問題点を潰していっていた。
戦闘機の増産もなされており、これも前線に投入されていっている。
これまた一井物産で運用されてるものがほとんどであるが、その戦果は前線の維持に多いに貢献していった。
これらを用いる要員の育成も進んでいく。
とはいえ、基礎的な事だけを叩き込んで終わり、というのがほとんどになる。
地上部隊は半年から一年の即席培養で各部署に送り込まれていく。
教育不足なままで放り出してるが、それをとやかく言ってられない。
軍も企業部隊も、まずは数を揃えねばならなかった。
それに、塹壕や防壁の後ろから狙い撃つだけなので、そこまで教育が必要ないというのも大きかった。
もちろんそれだけでは心許ないので、部隊に配属されたあとも再訓練などを実施している。
希望者がいるならそれらを優先して。
そうでなくても定期的に能力向上のために実施されていく。
幹部教育の方はもう少しマシだが、それも数を増やすのが最優先である。
企業でいうところの主任や係長、軍の分隊長や小隊長も、適切な教育がなされてるとは言い難い。
それなりの年数を勤め上げた者を引き上げて、数週間の即席教育を施して終わるのがほとんどだ。
それでも、まとめあげる者が必要なのでどうにかして数を確保せねばならなかった。
これらの上の幹部も、悲しいかな似たような状況に陥ってる。
こちらの方は、そもそもとして教育できる人間が少ないという問題が大きくなっていく。
幹部に必要な知識や情報を提供するには、相応に高度な能力や技術を備えたものが必要になる。
そんな人間がそうそういるわけもない。
そのくせ人数は必要なので、どうしても無理が生じる。
そこに無理矢理多くの生徒を突っ込んでいっている。
1人の教師が面倒を見れる生徒の数が20~40人だとして、そこに100人を突っ込んでるような状態だ。
まともな教育が出来るわけがない。
当然ながら、落ちこぼれる者も出てくる。
それらをすくい上げる余裕もない。
何とか落第点をとらないようにするので精一杯であった。
そんな者でも、名目上は試験をこなす事が出来てるので幹部候補生として取り立てられていく。
そういった者達がまともに部隊をまとめる事など出来るわけもない。
それでも数が必要なので、見て見ぬふりがなされていった。
全体的に言えば質が低いところで均一化されていっていた。
まともな人間で構成された部隊や部署もあるが、そうでない所も多い。
さほど高い能力が求められない所は、そういった者が増えていった。
中核となる部分は一定の水準を確保していったが、それ以外は惨憺たるものである。
だからこそ再訓練が施されてる
そうでもしなければ、本来求められる質を確保出来ないからだ。
それでも敵を撃退するくらいならどうにかなっていく。
数だけ多く質が低い敵に助けられていた。
何せ、戦術も戦略もなく、ただ数をもって押し寄せてくるだけなのだ。
物陰に隠れて銃を撃ちまくればどうにかなってしまう。
だからこそ、質がそれほど問題になる事もなかった。
とはいえ、この質の低さが新地道が抱える問題でもあった。
それを解消する事もままならないままに時間は過ぎていく。
続きは明後日に。




