21話 戦略・企画会議にて 2
「爆撃機の増産はすすんでる」
報告の一つとしてそれがあげられた。
「そう簡単に作れるもんでもないが、20機までは調達出来る。
来年度は更に20機はいく」
「必要な数はどうにかなりそうだな」
居合わせた者達から安心した雰囲気があがっていく。
「これで、敵の施設を破壊していける」
「どうにか食い止める事が出来そうだな」
「前線の方はどうなってる?
敵の侵攻が抑えられてればいいんだが」
「それは問題無い」
別の方面を担当してる者が答えを口にしていく。
「今の段階でも、敵の攻撃が大分減ってるようだ。
数字を見る限りではそう言える」
あがってくる資料からそれは伺える。
一井物産が行い始めた活動は成功と言って良い。
「それで、開発の方は?」
「上手くいってる。
中継地の方の開拓はうちで確保した」
新地道自治体からの承認を得た、という意味である。
「発表は先になるだろうが、これで大陸の市場はうちが取る事になる」
「出し惜しみしないで正解だったな」
「ああ。
爆撃機に戦闘部隊の投入が大きかったようだ。
あと、戦線に設置する兵器なんかも。
これが後押しをした」
前線を支える機銃座や砲台を含め、様々な物品を持ち込んでたのはこのためである。
生存のためでもあるが、それだけではない。
こういった貢献をする事で、取引材料を増やす為でもある。
「あとは、兵衛府付近の開発もとれればいいんだが」
「それについては大丈夫だろ。
兵衛府からの注文が増えてる。
生産から運送までうちが仕切ってるからってのもあるだろうが」
「そういや、うちがほとんどだったな」
兵衛府にもっとも食い込んでるのは一井物産である。
中継地の開発なども含め、もっとも勢力を確保してるから、というのが大きい。
その為の投資もかなりの大きさになってるが、回収はそれほど難しくなくなっている。
「まだまだ発展の余地はあるし、あと10年もあれば赤字を解消して黒字に出来る」
このまま発展すればであるが、見通しは明るい。
敵に負けなければ、勝てればという条件はどうしても付いてまわるが。
「でも、前線を支えるのが条件だしな」
「開拓が進んでも、負担も増えるぞ」
「敵がいるうちはしょうがない」
自治体に承認された事業を進めるにしても、その為の負担が大きい。
ここは悩みの種だった。
あくまで開拓開発は生産体制を構築するためというのが理由だ。
その為に優先的に一井物産にまかされる事になっている。
複数の企業が参加する事になるとしても、幹事として全体をまとめる役が必要になる。
その立場を一井物産は手に入れた。
今後の開拓について、中継地の大陸においては一井物産が取り仕切る事になる。
何をどこに参加させるのかを決定する権限を。
とてつもなく大きな権限であるが、それもこれも、全ては最前線を支えるという条件による。
これを蔑ろにするわけにはいかなかった。
すれば、即座に幹事の座をおろされる事になる。
「けど、このまま発展するならどうにでもなる。
そこは比較的楽観出来るところでもあった。
「資源も確認されてるし、増産体制も作られていってる。
1年もあれば今以上の生産体制が出来上がるさ」
「問題は労働力だな」
「新社会人にそこは期待する事にしよう」
今以て人口が増加の一途である新地道において、労働力の確保はそれほど難しくはない。
熟練労働者はさすがに少ないが、それも時間が経過すればどうにかなる。
「それまでのやりくりが大変だが」
何を優先するかでこれからも悩む事になる。
とにかくありとあらゆるものが足りない。
それが現状だった。
「けど、うちでどうとでも出来る場所は確保した。
あとは生産体制を作るだけだ」
自由に絵図面がかけるというのは大きい。
今までは自治体などの計画に沿っていくしかなかったが、そこから解放される。
どうしても様々な権益が関わってくる自治体や政府の計画は無駄が発生する。
ありとあらゆる部門からの意見を聞いていたら収拾がつかなくなる。
どこかで何かを切り捨てねばならない場合もある。
それが出来ないのが政治というものになる。
とりあえずそこからは解放される。
「最初からうちで取り仕切れるから、効率よくやっていける。
面倒な部分は自治体に放り投げてもいいし」
さすがに全てを受け持つ事が出来るわけもない。
ある程度は自治体などに割り振っておかねばならないものも出て来るだろう。
それは一井物産としても割り切っていた。
利益にならない部分まで受け持つ余裕はない。
欲しいのは、余計な口出しもなく好き勝手に出来る場所である。
それ以外の部分は無用である。
邪魔であり害悪と言えた。
「ただ、何にしても兵衛府に納入するものを作れる体制にしないと」
「開拓に必要なものもだろ」
「そうだ。
その二つを両立させなくちゃならん。
面倒だよ」
「どっちか一つってわけにはいかないもんな」
単に開発や開拓に必要なものだけならばそれほど手間も増えない。
ただ、戦争のために必要になるものまで生産するとなると、どうしても手間が増える。
もとよりモンスターの駆逐もせねばならないので、武器はどうしても必要になる。
だが、その規模はさほど大きくは無かった。
敵があらわれてから、戦争に必要な兵器生産に割り振らねばならない比率が上がっている。
それが開拓や開発を圧迫してるというのはあった。
「モンスターも面倒だとは思ってたけど」
「敵に比べれば大した事はなかったよな」
武器や兵器の生産が全体に占める割合の増加を考えると、頭を抱えたくなった。
だからこそ、生産体制の拡充をして、余裕を作らねばならない。
「それにしたって、まだまだ先の事だろうけど」
必要な設備を設置していくだけでも時間がかかる。
まだまだ全てはこれからだった。
「まあ、まずは前線をどうにかしないとな」
「そうだな」
「突破されたら元も子もない」
あらためてこれからの事についての話し合いが進められていく。
終わりの見えない検討は、その後も続いた。
22:00に続きを




