20話 少しだけ状況は変わり、状況は好転するが、手間は相変わらず大きいまま
繰り返される爆撃によって前線への圧力は一定値を超える事はなくなっていた。
破壊された施設はその都度再建されてしまうので、ある程度以下にはならない。
しかし、その間は作業機械を用いるので、戦闘にまわってくる敵が減っている。
そうして出来た隙間を使って、前線には機銃座や砲台が設置されていく。
いずれも無人のものである。
限られた人員で敵を阻むには、自動的に動く機械がどうしても必要だった。
とはいえ、完全に無人とする事も出来ず、何台かに1人くらいの割合で人員を割かねばならない。
探知と攻撃を自動的に行えるが、それでも最終確認で人を頼らないとならない事もある。
それでも長い戦線を支える人数はかなり減っている。
貴重な人員を戦闘で失う可能性も減らす事が出来ている。
撃退出来る敵の数も増えていき、戦線も延長させられる。
悩ましいのは、これらを稼働させる為に必要な電力と、維持する為の整備の手間。
設置する為の労力であった。
「運ぶ手間も馬鹿にならないよなあ」
トラックに積み込まれる荷物。
それを眺めながらいつも通りにぼやく。
タクヤのその声には周りの班員も同意していく。
「なんでこんなに忙しいんですかね」
「前線、かなり持ち直してるって聞きましたけど」
「その為にこいつらを持ち込むんじゃないのか?」
「まだまだいっぱい運び込むって言ってるしな」
聞きかじった事があちこちからあがってくる。
「当分は忙しいままだろ」
ため息が漏れる。
一井物産が本腰を入れて前線の維持に乗り出してる。
それは目の前の荷物や、あちこちから流れて来る話から簡単に想像が出来た。
戦闘要員の増強に、兵器の持ち込み。
前線に設置する兵器群の構築。
関連企業を巻き込んでの行動は、巨大組織とはいえ企業の行動範疇を超えている。
だが、おかげで戦線は能力を高め、安全圏の確保に貢献している。
中継地となってる大陸などでの開発も増強され、資源採掘から加工まで流れが拡大されていっている。
大規模な入植も行われ、別大陸における生産性も増大していた。
これらを行う為に戦闘部隊の増強も行われているという。
赤字覚悟の大判振る舞いである。
それらも将来得られる利益の為の投資と考えれば、さほど無理のある話というわけでもない。
土台となるものを一気に作り、今後の発展を促していくためともとれる。
だが、それにしても全てが大きく動き過ぎている。
上から下まで誰もが仕事に追われるというか巻き込まれていっていた。
部隊編成や配置なども変わってきている。
中継地の大陸開拓を名目に更に戦闘員が増強されている。
兵器もより強力なものがそろってきている。
戦闘機や装甲車なども多くなってきていた。
これらが配置されるのは敵が出現してる大陸であるが、それにしても企業の保有する部隊の規模を超えている。
本来、モンスターなどから身を守るための自衛手段であるはずなのだが、明らかに戦闘を意識したものとなっている。
それだけ敵が強力であるというのもある。
だが、それだけに留まらない何かもあるのでは、と考えられもする。
この武装強化を懸念する声もあがりつつある。
だが、前線を支えるための武力・兵力を求める声はより大きい。
一井物産のこうした動きは、懸念よりももたらす利益への評価が上回った。
代わりにというわけではないが、軽武装の戦闘部隊などは中継地の開拓などにまわされるようになっていった。
一般車両の改造戦闘車や、機関銃搭載の軽飛行機では戦闘をこなすのにも限界がある。
大穴からやってくる敵相手には力不足の面も否めない。
それならば、中継地の方で活躍してもらった方が良いと判断されていた。
機械の敵相手では力不足でも、モンスターを倒すのならば充分な力を持っている。
適材適所な配置として、少しずつ移動はなされていった。
それでも数を揃えるために、移動はそれほど大がかりに行われてはいない。
なんだかんだで膨大な敵を抑える為にも、まだまだこれらの力も必要である。
後方で輸送の護衛などにつく場合などは特に。
「もう少し楽な仕事にまわれないもんかねえ」
班員全員から頷かれるタクヤの声。
それがかなう可能性はかなり低いものであった。
なんだかんだで長くこの地域で活動してきた経験は大きい。
そんな者達を下手に引き抜くのも難しい。
大きな変更がない限り、タクヤ達はもうしばらくここに留まる事になるだろう。
20:00に続きを




