18話 苦しい台所事情のやりくり 1
良好な結果を出した爆撃機により、今まで届かなかった奥地まで攻撃範囲が拡がっていく。
増加する一方だった敵の生産施設もこれで攻撃が可能となった。
ただ、攻撃の成果を確実にするためにはより多くの爆撃機が必要になる。
今回持ち込まれた数機だけでは結果は芳しくない。
破壊よりも修復の速度がまさるからだ。
それ以上の損害を与えるためには、より多くの爆撃機が必要になる。
爆弾の増産も必要だった。
なのだが、現時点ではそれも難しい。
数を揃えるだけの資金が足りない。
最前線に展開する軍の維持にも金がかかる。
現状の前線を維持する為に費やされる予算はばかにならない。
それらを抑えてまで爆撃機の配備を進めるわけにもいかない。
そんな事を下手にやれば、前線の維持が出来なくなる。
攻撃手段を手に入れる為に防衛が破綻しては本末転倒だ。
あくまで前線の維持をしつつ、他の戦力を充実させねばならない。
その為、予算の使い道について常に誰もが頭を悩ませていた。
これは軍だけの問題ではない。
新地道という自治体そのものの問題でもある。
軍を増強しなければ安全圏の確保が出来ない。
だが、軍だけを優先してしまえば作らねばならない施設や設備が出来なくなる。
そうなれば、増加し続ける道民を支える事が出来なくなる。
軍に割り振られる予算の使い道だけではない。
それ以前に軍にどれだけの予算を割り振るかという問題がある。
毎年の予算審議はこれを巡って荒れに荒れていく。
その為、まずは手をつけられるところからどうにかしていく。
求められるのは、出来るだけ安く戦闘力の維持や向上をはかること。
そんな虫の良い話が求められていく。
それが出来れば苦労しないのだが、それをやらねば先に進めない。
このため、ありとあらゆる分野の者達が頭をひねる事になる。
企業も例外ではない。
戦争が続けば、それはそれで需要が出て来るが、それだけでは何の発展もない。
銃弾などの消耗品を提供し続けても、それが何かを生産するわけではない。
利益とは、人々の生活の中から生まれてくる。
技術の発展なども、とどのつまり人々の生活水準の向上に繋がっていく。
それにかなった商品を提供していく事で利益が出て来る。
その利益がまた次の商品の開発などに使われ、更なる利益に繋がっていく。
戦闘による消耗にはこれがない。
生存圏を守る為に戦うのは当然としても、それを何時までもやるわけにはいかない。
そちらに回すべき様々な資本を発展につぎ込まねば、いずれは衰退が始まる。
そうなる前に戦闘をある程度落ち着かせたいと考える企業は多い。
それもあって一井物産は、戦闘部隊の多くを兵衛府に投入していった。
試験段階の爆撃機も無理をして投入し、敵地の攻撃を行っている。
少しでも敵の生産力を落とし、他の分野に割く為の資本を作る為だ。
本来ならば新たな開拓地につぎ込む事が出来ていた資本を、大量に消費する銃弾や爆弾に割り振ってるのが今の状態だ。
これでは今後の発展があやぶまれる。
そして、発展がなければ生産性の増大も起こらない。
農場に採掘施設に工場などが増えなければ、全体の生産力は上がらない。
そうなってしまえば、増大する敵に対抗も出来なくなる。
より多くの兵器や武器を作る為にも、戦闘以外の分野に資本を割り振らねばならなかった。
その為に、戦線を少しでも強化するための兵力増強でもある。
それと同時に進められてるのが、使われてる兵器への簡素な改良改修である。
、出来るだけ手軽に戦闘力を強化出来ればという意図で行われてるものだ。
主に企業部隊に向けて行われている。
企業部隊が使ってる兵器、特に車輌や航空機などは一般的に入手可能な民間品がほとんどである。
自動車に機関銃を搭載するというようなものがほとんどだ。
こんなものでも、火力だけなら充分に効果を発揮している。
だが、攻撃を受けたら弱いのは確かだ。
生存性が低ければ、それだけ前線が崩壊する可能性が高くなる。
その為の改良改修である。
22:00に続きを




