17話 爆撃 2
その日は、夜も出撃が行われた。
昼間の飛行においては充分な能力を発揮した爆撃機である。
それならばと夜間においてはどの程度動けるのかの確認もされていく。
一応、開発段階や試験においても夜間飛行はなされている。
その時点では特に問題無く飛行が出来たという。
だが、実戦ではどうなのか、という話になっていった。
開発陣も運用してる実戦部隊の者達も、そこも知りたいところだった。
問題無く行動出来るならば、作戦の幅が拡がる。
かくして一応は試作段階の爆撃機は、暗い滑走路を飛び立って夜空へと羽ばたいていった。
空へと飛び立った爆撃機による夜間飛行と攻撃は、予想通りの結果を出していった。
それは期待に応えたというわけではない。
出来れば夜であってもしっかりと飛んで、目的地に向けての爆撃をしてもらいたい。
そう思うのは当然であろう。
だが、望んでも出来ない事もある。
夜となれば、当然ながら周囲は暗い。
そんな中で目標を見つけて攻撃を加えるのは困難な事である。
もちろん爆撃機にも夜間飛行に必要な機器は搭載されている。
飛ぶだけなら指して問題は無い。
だが、暗がりの中で目標を見つけて攻撃をするのは難しい。
いくら夜間暗視装置などがあるといっても、それで全てが見通せるわけではない。
目標地点までは航法装置によってなんとか辿り着いても、どこに施設があるのかが分からない。
暗視装置などを使って何とか探してみたが、それが本当に生産施設なのかも分からない。
それでもどうにか爆弾を投下してはきた。
しかし、攻撃がどれだけ成功したのかは、結果を見るまで分からなかった。
なお、結果については、同行した戦闘機が抱えた偵察用機器によって確認が出来た。
比較的低い高度を飛びながら、暗視装置を通しての撮影がなされ、爆撃の成果を記録していく。
それらによれば、一応は攻撃成功と言える結果が出たようであった。
だが、精度は昼間よりも大きく落ちていた。
夜であっても飛べるし、一応は目標の確認も出来て攻撃も行った。
しかしそれは充分な成果をもたらすほどでもない。
夜間攻撃については、まだまだ必要な技術や機器の熟成が求められる事となった。
そして、何より爆撃機に求められてる能力の確認がなされていく。
戦闘機では到達出来ない長距離への侵攻。
これも試験項目として実施されていった。
輸送機をもとにした爆撃機の航続距離は数千キロにおよぶ。
爆弾などを満載すれば当然飛距離は落ちるが、それでも戦闘機の数倍の行動範囲を持つ。
とはいえこれらは参考資料程度の数値しかまだ記録されてない。
あくまで実験や試験での結果でしか判明してない。
実際に用いた場合、それがどこまで通用するのかは未知数だった。
念のために護衛の戦闘機が途中まで随伴する。
いつもと違い、爆弾はもっていない。
対空ミサイルと燃料槽を持っての事である。
高度数千メートルまで飛んでくるような敵は今のところいないが、念のためである。
ただ、追加の燃料を搭載しても戦闘機の行動範囲は爆撃機に及ばない。
どうしても護衛は途中までとなってしまう。
燃料補給機が給油すればもう少し飛ぶ事も出来るだろうが、残念ながら一井物産と言えどもそこまで用意は出来ない。
軍なら保有はしているが、それを動かす事はさすがに難しかった。
戦闘行動などで企業が協力する場合などならば、軍もそれなりに便宜を図ってくれる。
だが、爆撃機の試験飛行(という名目になってる)にまで軍が協力する事はなかった。
爆撃機への給油ならば試験としてやってくれるかもしれないが、護衛として一緒に飛ぶ戦闘機は対象外である。
そのため、攻撃目標になってる施設付近では爆撃機だけで行動する事になる。
本来ならば危険極まるので絶対に承諾されない行動であろう。
敵が高々度への攻撃能力を持たないから出来る事である。
それでも爆撃機に乗り込む者達は生きた心地がしなかった。
爆撃機の操縦士も、護衛として随伴する戦闘機の操縦士も、成り行きを見守る研究員などの関係者も。
今回の行動に関わる全ての者達が固唾をのんで状況を見守っていた。
目的地まで飛んで無事に帰ってこれるかどうか、誰もが心配していた。
そんな気持ちを他所に爆撃機は順調に飛んでいく。
今回行動してるのは1機だけ。
下手すれば参加した機体を失うかもしれないという事で、損失を最低限におさえる形になった。
もとより攻撃による敵戦力の低下を求めてのものではない。
あくまで長距離の飛行と爆撃がどこまで行えるかを確かめるのが目的だ。
成功すれば複数の機体での出撃も考えられているが、今はまだその段階ではない。
最優先で求められるのは、無事に帰還する事である。
その願いをかなえるように爆撃機は目的地へと到達していく。
最初の目標に向けて、翼につり下げた爆弾を投下していく。
それらはほぼ狙い通りに落下し、目標を破壊する。
すぐさま周囲の機械が集まってきて修理を開始するが、爆撃機は気にせず次の攻撃へと向かっていく。
今度は機体内部に搭載してるものを放出する。
機体底面が開いて爆弾が姿を見せる。
それらが目標に向けて切り離され、狙い通りに施設を破壊していく。
それを搭載してるカメラで撮影してから爆撃機は帰還をはじめる。
試験とは名ばかりの実戦において、爆撃機は求められる能力をしっかりと示していった。
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