16話 爆撃 1
前線に向けて飛び立っていった一井物産航空部隊は、求められる役割に従って動いていった。
軽飛行機を改造した戦闘機は、前線に向かってくる敵への攻撃を開始していく。
翼につり下げた機関銃しかもたない軽飛行機であるが、敵を蹴散らすには充分である。
両翼に一丁ずつ設置された12.7ミリ機関銃は、敵の機械を貫通する。
それを数発食らえば、機械の主要部分のどこかを破壊出来る。
敵の攻撃が当たらない程度の高度を保ちながら飛ぶごとに、地上の敵が少なからず動きを止める。
それを数十機の軽飛行機全てが行っていく。
それが400発ずつ装填されている銃弾が尽きるまで繰り返される。
前線に加わる圧力は、それだけで大分小さくなった。
それらの上を飛び越えて飛んでいく戦闘機は、敵の後方にある施設へと向かっていく。
これまで何度も攻撃してきた敵の施設への再攻撃のためであった。
戦闘を含めた様々な作業を行う敵の機械。
それを生産する設備は何度も爆撃が行われ、その都度再生されている。
それでも敵の増強を防ぐために、これまで何度も攻撃が加えられてきた。
今回もそういった敵の生産力を削るための攻撃が行われる。
翼に合計12発の爆弾を搭載した戦闘機は、目標地点に到達すると機首を下げていく。
急降下爆撃の体勢に入ったそれは、照準を合わせて爆弾を切り離す。
慣性に従って落下していく爆弾は、狙い通りに目標施設に命中した。
施設で大きな爆発が起こる。
この攻撃が当たれば、目標となってる施設は機能を停止する。
それはこれまでの攻撃の結果から明らかだった。
だが、壊した直後から修復が始まっていく。
周辺にいた機械が集まり、破壊された施設に群がっていくのだ。
それらは破壊された部位を除去し、新たな部品を持ち込んで施設を復活させていく。
そんな敵に向けて、戦闘機は搭載機銃を撃ち込んでいく。
少しでも敵を減らし、施設の復活を遅らせるために。
焼け石に水だが、何もしないよりは良い。
搭載されてる20ミリ機関砲弾が尽きるまでそれは続いた。
そして。
今回新たに投入された爆撃機が目的地上空にやってくる。
充分な高度をとって目標上空に向かうそれらは、試験も兼ねた攻撃を開始していこうとする。
まずは1機、それだけ他より突出するように飛ぶ機体が、翼の爆弾を投下していく。
それらは上空から地面へと向かい、目標施設に突っ込んでいった。
誘導などされてない爆弾なので、狙いはある程度外れる。
だが、それでも許容範囲におさまってるそれらは、施設にそれなりの打撃を与えた。
そして、先頭を進むこの爆撃機の攻撃が、後続の者達に目印を与えていく。
進入方向、速度、爆弾投下の瞬間。
それらが後続の者達にとっての目安になる。
互いの位置と目標との距離、進む方向と速度などを微調整していく。
そして、投下した位置から爆弾着地にいたるまでのずれを考慮していく。
攻撃に適した位置に軌道修正をして、後続の爆撃機は翼の爆弾を切り離す。
落下していったそれらは、最初の攻撃よりもより正確に敵施設に当たっていく。
まだ試験段階の爆撃機による最初の攻撃は、概ね上手くこなされていった。
爆撃機の攻撃は続く。
翼の爆弾は全て使ったが、機体内部に搭載しているものは残っている。
それらを機体の底面を開いて露出させ、攻撃にうつっていく。
目標は、すぐ近くにある別の施設。
それらに向けて、先ほど同様に先導する1機が爆弾を投下。
その着弾をもとに軌道修正をした後続機が攻撃を続行する。
数機の爆撃機は、機体内部に搭載しているもの全てを遠慮無く地上に放り出していった。
そして、機体底面の開閉扉を閉めて基地へと戻っていく。
そんな彼等の背後の地上で、派手な爆発音が幾つも鳴った。
敵の生産施設の大部分の機能停止を伴って。
爆撃機の初出撃はこうして無事に終わった。
帰還した機体はすぐに格納庫におさめられ、入念な検査が行われる。
一回の出撃で何がどれくらい問題になるのかを調べるために。
何せまだ試験中の機体である。
普通に使って全く問題は無いと開発関係者は言うが、実際に使ってみれば何かしらの不具合も出て来る。
それらがどこにどのように出てるのかを発見し、今後に活かさねばならない。
たった一回の出撃でそんなものが出て来るという事はないが、それでも現段階で何かが発見出来るならばその方が良い。
幸いにもこの時の出撃で目立った問題は発生していない。
多少の整備は必要だが、問題無く次の行動にうつれるという判定が出された。
ただ、隅々にまで至る確認作業のために時間が大幅にとられてもいた。
既に外は暗くなっており、もう一度飛び立つにしても翌日にという事になる。
翌日からは、何回かの出撃を連続で行った。
燃料と爆弾の補給を繰り返し、何回まで問題無く飛べるのかを確認していく。
幸いな事に期待は開発者達が言った通りにしっかりと飛んでくれた。
定期的な整備は当然必要だが、それでも実用に耐えるくらいの能力は既に保有している。
そんな爆撃機を使っての試験飛行(という実戦)は新たな段階に入っていった。
17:00に続きを




