11話 輸送の現状 2
爆撃と機銃掃射によって押し寄せる敵に隙間が生まれていく。
これにより防衛側に少しだけ余裕が生まれた。
隙間が空いたところを後回しにして、まだ密集してるところに火力を集中していく。
兵士が扱ってる12.7ミリ機関銃が。
装甲車に搭載されてる20ミリ機関砲が。
それらが集中して敵を粉砕していく。
密度を増した射撃が、その場にいた敵を簡単に粉砕していく。
後方に展開していた迫撃砲や長距離砲も、密集してる敵に狙いをつけていく。
広範囲に満遍なく繰り出されていたそれらが、攻撃範囲を絞っていった。
どうしても散発的になっていて効果が薄かった砲撃も、これで一カ所に大量投射されていく。
範囲は限定されるが、密度の濃い攻撃はそこにいた敵を跡形もなく吹き飛ばしていった。
戦闘の流れが変わっていく。
雲霞のごとくあふれていた敵が消えていく。
爆撃によって開いた穴が分散していた火力を集中する機会を与えていった。
そして、集中していく火力がその場に居た敵を確実に破壊する。
そうして作り上げていく穴が次々に拡大していく。
圧力となっていた進軍が止まる。
侵攻速度よりも撃退の方が上回っていく。
展開していた部隊と敵の間の距離が開いていく。
進んでくる敵の最後の一体が倒れるまで、それは縮まる事はなかった。
「──進むぞ」
通信を聞いていたタクヤが、班員に告げる。
前線での戦闘が終わり、物資を運び込む余裕が出来たという。
移動速度を落としていた輸送部隊が、再び速度を上げていく。
敵がいないこの瞬間に少しでも目的地に進み、一台でも多く入り込まねばならない。
荷物をおろし、次の車がすぐに荷下ろしするためにも。
次にやってくる敵の襲撃がいつになるか分からない。
もしかしたら、すぐにでも次がやってくるかもしれない。
その時にまだ荷下ろしの途中だったら目もあてられなくなる。
全てが時間との勝負であった。
前線に向かう者達と分かれたタクヤ達は集積所へと向かう。
臨時に設置されたプレハブ倉庫や、野ざらしのままの木箱がそこらに置いてある。
その中を進み、停車位置にトラックが入っていく。
すぐに周りから作業員が集まり、荷物をおろしていく。
あっという間に荷台から荷物がなくなっていった。
それが終わるとすぐにトラックは移動し、今度は持ち帰る荷物を積み込む場所へと向かう。
その直後にまた別のトラックが荷下ろしの場所に停車する。
それらが順繰りに進められていく。
その間タクヤ達は、自分達の車輌に燃料を注ぎ込んでいった。
トラックが持ち帰る荷物を積み込んだらすぐに出発になる。
休んでる時間はそれほどない。
すぐにでも動けるように準備をしておかねばならなかった。
トラックなど、荷物の積み込みと燃料の補給が同時に行われている。
何かにつけ同時にこなさなければ作業が遅れてしまう。
多少の無理があっても押し通さねばならなかった。
「今のうちに用をたしておけ」
手が空いた連中にそう言っていく。
これからすぐに出発する。
そうなったら止まる事なく移動する事になる。
それが分かってるから、班員は手が空いた者からすぐに駆けだしていく。
「班長はどうするんですか?」
「俺はあとでいい。
それより、森山さんはいってきて。
留守番してもらわないといけないから」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
そんなやりとりを交えながら、短い滞在時間を過ごしていく。
出来れば軽い食事くらいしておきたいが、そんな余裕すらない。
「酷いもんだ……」
今までよりも過酷な輸送業務に音を上げたくなる。
幾らか暇をもてあましていたころが恋しくなった。
それでも、出来ればさっさとこの場から立ち去りたいという思いもあった。
何せ前線の近くである。
敵が突破してきたら危険だ。
集積所のある位置までは簡単にやってこないだろうが、万が一もありえる。
そうなったらひとたまりもない。
少しは休憩したいと思いつつも、出来るだけ早く逃げ出したいとも思っている。
(本当にせわしない所だよ)
相反する二つの気持ちを常に抱かされる。
それだけ危険に近い場所だという事だった。
(まだ終わらないのか?)
荷物の積み卸しがどうなってるのか気になる。
時間がかかるならかかるで仕方ない。
だが、すぐに出れるなら今すぐ出発してもらいたい。
まだ来ない出発の合図を待ちながら、タクヤは周囲を見渡した。
集積所からトラックが動き出したのは、それから20分後。
直前になってかけられた出発の号令に慌てながらも、タクヤ達は車列に混ざって走り出していった。
22:00に続きを




