99話 中間大陸における業務 10
危険な偵察業務をこなして二ヶ月三ヶ月と時間が経過する。
そのくらいになってきた頃には、新たな任務も言いつけられる。
それまでは偵察といっても町の周辺を大きく監視するというのが主なものだった。
しかし、タクヤ達が多少は慣れてきた頃には、更に別の業務命令が下る。
「採掘予定地か……」
「面倒そうですね」
タクヤとタダヒロはぼやきながら、辞令に目を通していった。
今までとは違い、今度は本当に遠出する事になる。
資源が埋まってると思われる場所まで出向くからだ。
その場所の下見が新たな業務となる。
実際に現地に出向いて状態を写真などにおさめてくる事。
土壌などを採取してくる事。
そして、そこまで至れる道があるかどうかを調べてくる事。
衛星からの撮影や航空写真だけでは分からない部分である。
これらがタクヤ達に求められていった。
「やらなきゃならないのは分かるけど」
それでも手間で面倒な作業だった。
採掘地まではそれなりに距離がある。
それに、道が通ってるわけではない。
車輌が通れる場所を選んでいくしかなく、遠回りする事もある。
目的地に到着するまでの時間が予想を大きく上回る事もありえる。
また、舗装されてない平野を通るのだから、速度もそれほど出せない。
必然的に時間がかかる旅になる。
それをやらねばならないのだから、たまったものではない。
それでもこれが業務である。
逆らうわけにもいかなかった。
必要な物資を車輌に詰め込み、目的地へと向かう。
かなり切り開かれた町の周囲を横切っていく。
タクヤ達が偵察に出てる間にも作業は進み、かなりの広さの平野が切り開かれていた。
宅地化されていくそこにプレハブ小屋が並び、後続の人員が入っていっている。
それらの護衛をやっていた頃が懐かしいと思ってしまう。
モンスターに襲われる事があっても、それでも偵察をしてる最中よりはマシであった。
開拓作業の護衛であれば、周囲に仲間が大勢いる。
だが、偵察だとそうはいかない。
少数の仲間と限られた物資で全てをこなさねばならない。
比べてみれば、まだしも護衛の方が楽なものである。
だからといって、護衛作業を見下すわけではない。
護衛は護衛で大変なものなのは充分承知している。
それでも出来れば護衛に戻れないかと思ってしまうのだ。
(いいな……)
(うらやましい……)
羨望というよりは恨みがましい思いを抱いてしまうのもやむをえまい。




