第一界『始まりの”渡り人”』
第一部【〜渡り人篇〜】
空を覆い尽くす常闇に、希望をなくした世界。
ネイドルワール。
未だ世界と呼ぶに足らない空間。
新世界に生るためには、神の御使の審判を仰ぐ為
およそ人知を超えた試練を踏破する事が唯一の理
その試練を目指す人を、こう呼んだ、”渡り人”と。
この世界は自由を縛ることで続いている。
いつもこの時間になると見える夜空に昇るツキには、あの日から止まってしまった世界が、故郷がある。
繋がれた鎖は、あの日から今日まで、一度も解かれてはいない。
待ち望んだ訳ではない。
それでも、自分が犯した罪を、償いきれないその過ちを、誰よりも自覚している。
自らの意思よりも、世界の意思が優先されるのは、世の理だ。
もしも、何か一つ叶うものがあるならば、こう願う。
「君の、願いを、守りたい」
止まっていた時間が、動かない世界が、見えない明日に向かい、動き始める。
幕間
「さて、今度の挑戦者は、どこまでいけるか」
「彼らには無理さ」
「何故だ?」
「魔法は疎か、”未法”も使えないんだ」
「それがあれば試練を超えられるのか?」
「可能性が生まれるだけさ、ま、無駄さ、見てる限りじゃ、あと1000年は気付くこともないさ」
「…、その話し、聞くのが一時遅かった」
「は?」
「さっき、渡してきた」
「誰に?」
「人に」
その日、未世界の歴史が動いた。