プロローグ
彼女がなぜあのような性格になったかまでの物語です。
「はあ、はあ、はあ、」
タッタッタと走る音が壁に反響しているのと同時にコツコツコツと歩いてくる音もあった。
そこには必死になって逃げている1人の研究者と思われる姿をしている男性とそれをゆっくりとしかし確実に狙って追いかけている兵士と思われる姿をしている人がいた。兵士の方は重そうな装備とマスクを被っていて性別が区別出来なかった。
「くそ、くそ、くそ、あの化け物まだ追ってくるのか!」
彼がどれだけ逃げてもその兵士は見失う事なくゆっくりと後を追って来ていた。
その時間は彼にとって死の宣告を意味していた。
「こ、ここだ!この中に入れれば、、、」
彼はそんな希望を胸にしたがそれは彼の致命的なミスによってあっという間に絶望に変えられた。
彼が希望を抱いたその部屋の扉はカードによる電子ロックがかかっていたが彼はそのカードをどこかに置いて来てしまったらしい。
「くそーーーー!何故こんな時に、、、」
彼が必死に扉を開けようとしている中、確実に近づいてくる足音。
その足音が近づけば近づくほど彼に恐怖を与えていた。
そしてついにその兵士が目の前まで来た時彼は、、、
「ヒィーー、た、助けてくれ、お願いだ助けてくれ、なんでもする!」
恐怖に耐えれず悲鳴の声をあげた。
それに対して兵士は
「わかった。」
と言った。
その声は凛と高く透き通っている。
そう女性の声だった。
その声はとても冷たい感じがした。
しかし彼はわかったという言葉にかなり安心していた。
「あ、ありが「バン!!」」
と彼が感謝の言葉を言おうとした時耳を塞ぎたくなるような大きい音が言葉を遮った。
その音の発生源は彼女の右手に握られた物からでした。
それはハンドガンと言った方が伝わりやすいだろう。
もちろん彼女が持っている物は音がするだけのオモチャでは無く本物だ。
彼女が引き金を引いたのと同時にハンドガンが火を吹き、目にも見えぬスピードで熱い鉛玉が彼のこめかみへと吸い込まれていった。
「わかった、その恐怖から苦しまず助けてあげる。」
そして彼女は最後にそう言った後ハンドガンを腰のフォルダーにしまうとマスクをとった。
まるで雪のような真っ白な肌と髪。
サファイアのような青い瞳。
まさに美そのものだった。
「君は残酷な事をするもんだねー」
と突然声がした。
その声は当然動かぬ物体と化した彼からでは無く彼女が耳に取り付けているインカムと呼ばれる無線通信機からだった。
「一華さん見てたんですか?」
「ええ、さっきここのコンピューターのハッキングに成功して監視カメラからあなたの事を見ていたわよ。
でももうその必要もないわね。その人で最後でしょ?」
「はい」
「凄いわね〜、1人でこのミッションをこなすとは。でも少し残酷過ぎじゃない?少しだけ残して置いてこっちの技術スタッフに入れればよかったのに。あなた昔はそんなh「ピュン!」」
と言って通信が切れた。
それは敵による妨害では無く彼女が自ら通信を切ったのであった。
彼女は「ふぅ」とため息をついて研究所と思われる場所を後にた。
外に置いてあったバイクに乗りブロロロロと荒々しいエンジン音と共にコンクリートの大地を疾走して行った。