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第6話 初めての街

天狗の名前ってまだ出てないですよね、忘れている訳ではないのでご安心を


 それから特に何も起こらず、ペースを上げて進み続けること約3日。


「おぉ……町だ」


 まだ遠目でしか見えないが、かなり賑わっているという事が分かる。


「この街は桜街、周りからはそう呼ばれています」

「ここに天狗の住処があるのか」

「いえ、ここにはありません」

「……ここじゃない?」

「はい。とりあえずの目的地というだけです。まぁ少しの間滞在はしますがけど」

「また歩くのかよ………」

「文句言わず着いてきているアスを見習って下さい。ほら、行きますよ」

「落ち着いた生活がしたい……」


 そうして俺達は街に入る。

 例を挙げるなら、京都の2年坂だろうか。

 あの街並みをさらに発展させて賑やかにした感じだ。

 道は人………妖怪(人っぽいのもいるが恐らく妖怪)が行き交い、柵の低い露台のような場所では酒を飲んでいる。

 

 賑やかだな、見た感じ百鬼夜行だ。

 おっと、ボーッとしてると置いてかれる。

 初めて来た場所で迷子は不味い、離れないようにしなくては。


「宿はっと、ここですね」


 天狗に付いて行くと、着いたのは街中に流れる川に沿って建てられた宿だった。


「すいません、部屋空いてますか?」

「あいよ、ちょいと待ってくれな」


 そう言って出て来たのは小さめの黒い翼が生えたおじいさんだった。


「おや、誰かと思えば黒坊の所の嬢ちゃんかい」

「はい、お久しぶりです」

「部屋なら空いとるよ……おや?」


 そう言ってこちらを見てくる。

 翼があるって事はこの人も天狗なのか?


「あぁ、この人は」

「ハッハッハ!そうかそうか!嬢ちゃんも遂に婿さん見つけたか!」

「は!?え?ち、違いますからね!?」

「って事はそっちのお嬢ちゃんは2人の子供かい!こりゃめでたい!」

「だ、だから!」


 ん?そっちの嬢ちゃんってアスの事か?てか、その2人って天狗と………もしかして俺!?


「何言ってんだ爺さん!?アスはここに来る途中に1人だったから保護しただけだからな!?」

「そうです!それにこの男とは結婚所か付き合ってすらいませんよ!色々事情があって本部に連れていく為に一緒にいるだけですからね!?」

「いや、そうなんだけど別にそこまで必死に否定しなくても……」


 いや、確かに事実なのだが、目の前でそこまで必死になられると俺のガラスのメンタルが………


「ハッハ!そうかいそうかい!こりゃすまねぇ、早とちりってやつだ、許してくれな。それで部屋だったな、空いてるがなん部屋だい?」

「えぇと………2部屋でお願いします。アスは私と同じ部屋でいいですね」

「(ブンブン」


 それを聞いたアスがすごい首振ってる。

 そこまで嫌われてたのか……天狗。

 あ、なんか本人もショック受けてるっぽい、見てわかるくらい「ガーン」って顔になってる。


「い、いいですかアス、幾ら何でも同じ部屋というのはですね」


 あ、余計くっついて来た。

 そして天狗に睨まれた。

 俺にどうにかしろと?まぁ確かにこのままでは不味い様な気がするな。

 こっちの世界に警察がいるのか知らんが捕まるのは勘弁願いたい。


「あ〜、アス?」

「嫌」

「…………」


 おかしいな……何故こんなに懐かれているんだ?俺なんかしたっけ…………。

 あと天狗様、余計睨むのやめて下さい。


「はぁ、分かりました。1部屋でいいです」

「あいよ」

「おいおい、1部屋って」

「仕方ないでしょう、貴方から離れそうにないんですから」

「それってお前も同じ部屋に泊まるってことだよな……」

「変な事をしたら粉々にしますからね」

「しないわ」


 本当に粉々にされるだろうし。

 こんな危険な天狗にそんな事をする程、俺は馬鹿ではないのだ。


「俺の平和な生活……カムバック」

「部屋は2階だ。ほれ、これが鍵じゃ」

「はい、ありがとうございます。お代はいくらですか?」

「朝夜食事ありなら1日銀貨1枚と銅貨5枚、なしなら銀貨1枚だよ」

「食事ありで、とりあえず2日でお願いします」

「あい、2日ね。飯は向かいの飯屋で食ってくれや、鍵を見せれば食わせてくれるからな」

「はい、分かりました」


 そう言って天狗は爺さんに銀貨9枚を払う。


 2日間か………………よし、寝て過ごそう!





 ・・・当然そんな願いが叶うはずもなく、強制的に外に連れ出された。


「なぁ天狗、いったい何処に向かってるんだ?」

「この不良品を売りつけた者の所ですよ」


 そう言って丸いガラス玉の様なものを取り出す。


「なんだそれ?」

「これは転移玉と呼ばれる物で、これを使うとあちらの世界とこちらの世界を行き来する事が出来ます」

「転移・・・てことはそれ使えば俺帰れるんじゃ!?」

「使い方も知らずにですか?もっとも使ったとしても予め転移地点をセットしておかなければいけないのでそんなに便利なものでもないですけどね」

「転移地点をセットって、どういう事だ?」

「実際に行った場所にしか使えないということです」


 それなんてキ〇ラのつばさ・・・。

 あれ?それおかしくないか?


「それじゃあお前どうやって俺の元いた世界に来たんだ?その玉を使うには実際にあっちの世界に行ったことがなきゃいけないんだろ?」

「簡単な話です。別にこの玉を使わなくても転移は出来るんですよ」

「え、じゃあその玉要らないんじゃ」

「この転移玉は緊急用の物なんですよ。体内の力が転移出来ないくらい少なくなった時などに使うのです。まぁ単純に転移が出来ない者も使いますけど」


 なるほど、今の話からすると頑張れば俺でも使えるんじゃ・・・。


「見えて来ました。あの店です」


 どうやら着いたらしい、見た感じ道具屋か。


「へいらっしゃい!天狗の姉御今日は何をお求めでっしゃろ。また転移玉ですかい?お安くしときまっせ!」


 そう言いながら歩いて来たのは2本の足で立つ太った化け猫だった。


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