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第5話 常識破壊


 スゲェ、いやマジでスゲェ。

 何が凄いかって、まんまファンタジーの世界に出てくるような森だったのである。

 学校行事とかで何回か山登りした時なんかで森を通ったりしたが、そことは空気というか雰囲気が違った。

 そんなふうに俺が感動していると、天狗から声がかかる。


「呆けてないで、移動しますよ」


 まったく、人が感動に浸っているというのに、空気を読まない天狗様だ。


「何か不満でも?」


 顔に出ていたらしい、気を付けなくてわ。


「別に何も」

「そうですか、では今から目的地へ移動するのでついてきて下さい」

「ちょ、ちょっと待て!目的地ってどこ行くんだ?」

「私達の住処がある街です」


 天狗の住処?何故に俺がそんな所に?連れてかれる理由………あったっけ?


「ちょっと聞きたいんだけど、なんで俺がそんな所に連れてかれるんだ?」

「どうやら貴方は凄まじい鳥頭のようですね。貴方はもう人間ではないと言ったでしょう?自分の力が制御出来ないものが現し世に留まるわけにはいかないのですよ」

「いや、それは聞いてたけどさ……でも正直全然実感がわかないんだよ。傷の治りが早いってのは分かったけど………他に変化とか無いだろ?」

「はぁ、今は無くても時間が経つと変化する事があるんですよ。それに身体の変化が感じたいのならそこら辺の木を殴ってみるといいですよ」

「木を、ね」


 言われた通り適当に気を殴ってみる。


 パァァァン!!!!


 そんな乾いた音と共に、かなりの太さだった木の殴った部分が粉砕される。


 ………………………………は?


「ん?」


 いやいやいや!おかしいだろ!そんな強く殴ってないぞ!?そして腕力がこんなにパワーアップしてる事になぜ気づかなかった俺!?


「おま、て、天狗!なんだこのバカみたいなパワー!?ゲームでこんなインフレ入ったら速効で修正されるレベルだぞ!」

「いえ、私としてもこれは些か予想外といいますか……まさかここまで身体能力が上がるとは」


 確かにこれは異世界とやらに連れてこられますわ!こんなん友達の肩ふざけて叩いただけで木っ端微塵になっちまうだろ!


「まぁ、これで理解していただけましたね?今の貴方は現し世にいると大変な事になってしまうんですよ」

「う、む。理解はしたが……これが普通なのか?」

「さっき言った通り予想外です。普通、ここまで肉体が強化される事は無いはずです」

「おいおい……これ生活にも支障がでるんじゃないか?」

「それは多分大丈夫でしょう。少し動けば今の身体に慣れるはずです」

「そうならいいんだが……………ん?」

「どうかしましたか?」

「いや、何か近づいてきてるような音が……」

「音?………確かに聞こえますが、良くこんなに小さい音聞こえましたね」

「いや、俺ももしかしたらくらいの感覚だったからな」

「確実にこっちに来てますね、これは………物の怪の類ではないようですが」

「分かるのか?」

「ええ、妖力を感じませんから」


 そんな会話をしているうちにどうやら相手は更に近ずいたらしい。

 さっては薄らとしか聞こえなかったが今ならハッキリと聞こえる。

 木々が倒され踏み潰される様な音が……


「おいおい………異世界ってのはなんでもありなのか!?」


 そこにいたのは熊だった。

 人間なら普通の熊でも充分脅威だが今の俺ならそこまでではないと思う。

 では何故驚いているかだって?それは…………その熊が大きかったのだ。

 しかも尋常じゃないくらい。

 普通の熊なら大きくても3メートルとかそこらだったと思う。

 しかし目の前の熊はその倍、5~6メートル程の大きさなのだ。

 これ襲われたら普通に死ぬわ………回復力がどうこうの問題じゃない大きさだもの。

 「あ、これ死んだな」なんて思っていると


「熊ですか………まぁまぁのサイズですね」

「はぁ!?何言ってんのお前!?明らかに異常なサイズだろ!」

「あちらの世界とは基準が違うんですよ。これより大きい熊も普通にいますよ?」


 まじか……勘弁してくれよ異世界………。

 そ、そんな事より今はどうやって逃げるかだ!走っても追いつかれるだろうしどうやって……


 グォォォォォォォォ!!!


 ズン!という音と共に熊が崩れ落ちる。

 そこには熊を切り伏せた天狗がいた……MA・JI・DE・SU・KA。

 そういえばそうだった、この天狗はあの鬼も一刀両断に出来るほどの戦闘力だったな………めちゃくちゃだ。


「さぁ、先を急ぎましょう」


………

……


 まぁそんなこんなで森を抜けるために現在3時間ほど歩き続けていた。

 ちなみに熊は一部だけ食料として確保し、他の部分は放置だ。

 いくら弱肉強食とはいえ可哀想とは思ったのだが、聞けばここから3日ほど移動しなければならないらしい。

 流石にあのサイズを持ち運ぶ事は出来ないので置いてきたのだ。

 天狗が言うには他の動物の餌になるから問題ないらしい。

 そういう事を言っているのではないのだが………こればっかりは仕方ないな、俺に持てって言われても無理だし。

 そうしてもう1時間ほど歩くと森の終わりが見える。

 いや、もはや森というより樹海だったのだが……。

 しかし、聞いたところ俺達が最初にいた場所はまだまだ浅い所だったらしい。

 こんなに歩く場所が浅いって………どんだけ広いんだよ。


 「なぁ、実際この森ってどのくらいの大きさなんだ?」

「そうですね……この森は少し大きいですから、恐らく現し世の関東地方より少し大きいくらいですね」


「ブッーーーーー!!!」


 吹き出した。

 そりゃ吹き出すだろ……関東地方より大きいって、規模が違い過ぎるわ!


「デカすぎだろ!関東地方より大きいとか迷ったら本気(マジ)でジ・エンドじゃねーか!」

「だから言ってるじゃないですか、大きいって」

「ありえねぇ……もう一つ聞きたいんだが、この世界ってどのくらいの大きさなんだ?」

「そうですね……大体直径で約700000kmと言われています」

「は?」


 は?…………はぁ!?70万km!?地球の直径が約1万3千kmだから………地球が横に50個以上並ぶぞ!?


「おい、それ移動とかどうしてんだよ。歩きじゃ無理だろ?」

「転移門だったり転移符だったり、色々ありますよ?魔法や妖術なんてのもありますね」


 うん、もう何でもありだな。

 改めて痛感したわ。

 そうして俺は常識とおさらばしつつ森を抜けたのだった。


 森をぬけて少し歩いた。

 すると何やら複数の生き物の姿が見える。

 あれは…………狼!


「おい、あれって!」

「大きな声を出さないでください。結構な距離があるとはいえ見つかります」

「す、すまん」

「いえ、しかしこの辺りに狼なんて珍しいですね」

「そうなのか?」

「ええ、恐らくあの狼は追尾ストーキング(ウルフ)、名前の通り見つかるとテリトリーから離れるまでずっと追ってきます。ここら辺の地域ならあの山の麓辺りにテリトリーがあって滅多にそこからでないはずですが」


 そう言って少し遠くに見える山々を指さす。


「ところであいつらは何をしてるんだ?」

「狩りで追いつめた獲物を囲んでいるといったところでしょうか」

「そうなのか……で、どうするんだ?あれと接触しない為には迂回する必要があるあると思うんだが」

「そうですね、それだと余計な時間がかかってしまいますし……仕方ありません。飛びましょう」

「え?」


 そう言うと天狗から翼が生え、飛び立つ。


「飛ぶってこういう事かよ」


 俺は飛んでいた………天狗に抱えられて。

 予想しなかったといえば嘘になるが俺はもっとこう………魔法的なもので飛ぶのかと、やっぱりロマンじゃん……魔法。


「てか、最初からこれで移動すれば良かったんじゃ」

「嫌ですよ、人を抱えたまま低速飛行なんて疲れるじゃないですか」

「………さいですか」


 こうして俺達は狼の真上を通過する。

 そして俺は気づく、囲まれていたのがどうやら人だという事に……。


「おい天狗!あれって人か!?」

「妖力は感じませんが………ただの人という可能性は低いと思います」

「何故?」

「ただの人がこんな所に来るという可能性が低いからです。まぁ例外はありますけど」

「だけどあんな数に囲まれてたら」


 狼の数はざっと見ただけでも20はいるだろう。

 そして今、狼の1匹が獲物を仕留めようと前に出るのが見えた。


「天狗!このまま落とせ!」

「はぁ!?何を言ってるんですか貴方は!この高さから落下したらただでは済みませんよ?」

「いいから!早く!」

「全く…どうなっても知りませんからね!」


 そして俺は上空100m程の地点から自由落下を開始する。

 そしてそのまま加速し、今にも噛みつかんとしている狼の頭に目がけて足を突き出す。


 ドォォォォォォォォン!!!


 という激しい落下音と共に俺は狼の頭を踏み砕いた。

 危っぶねぇ……ギリギリ間に合ったか。

 ネチョッという音と共に狼の頭だったものから足をどかす。

 おぇ………この感触は精神衛生上とても宜しくないな。

 さて、狼は突然現れた俺に動揺しているみたいだし、とりあえず囲まれてたやつの安否確認を……


 女の子だった。

 上からじゃローブ?の様なものを被っていたため性別を判定出来なかったのだが、俺が落下した時に起こった風でフードがめくれたらしい。

 見た感じ12か13歳くらい?の女の子だったのだ。

 しかもめっちゃ可愛い。漆黒と銀が絶妙に混じりあった艶のある髪、澄んでいて純粋な瞳、整った容姿、天狗は美しいって感じだったのだが、こちらは純粋な可愛さがある。

 恐らく街中を歩いていたら誰もが目を向けずにはいられない、その位のレベルだったのだ。


「無事ですかー?」


 そう言いながら天狗が降りてくる。


「あぁ、俺もこの子も無事だ」

「この子?あぁ、女の子だったのですね。それよりも、何であなたは怪我ひとつしてないんですか?」

「そういえば……」


 いや、でも落下した時になんか「メキャッ!」っていう致命的な音がなった気がしたんだけど……実際無傷で立ってるしなぁ。

 よくあの高さから落ちて無事だったな俺。


「まぁ結果オーライ?だよ。無事なんだから良かったじゃん」

「転生直後の者があの高さから落ちたら普通助かりませんよ……まぁそれは後回しにして、この狼の群れをどうしたものか」

「お前が俺とこの子を抱えて飛べばいいんじゃね?」

「飛ぶ前に噛みつかれますよ」

「そりゃそうか……」

「仕方ありません、殲滅します。貴方はその子を守っていて下さい」

「殲滅ってお前」

「では、いきます」


 次の瞬間、俺達を中心にして突風が吹き荒れる。

 周りにいる狼達は、見えない刃物に切り裂かれる様にして悲鳴をあげながら次々と倒れていく。

 そして10秒とかからずに20匹以上いた狼を全滅させた。


「これ俺が守る必要なんて無かったんじゃ」

「ありますよ。私から離れられたら間違えて切り刻んでしまっていたかも知れませんから」

「守るって……お前からかよ」


 コイツやっぱり危ない奴だわ……注意せねば。

 そんな風に天狗に対する警戒レベルを上げていると、少女が俺の服の裾を握ってくる。


「あぁ、ごめんごめん、放置しちゃってたな。えぇ………とりあえず君の名前は?」


 少女は俺の事を数秒見つめると、「ア………ス…」と呟く。


「なるほど、アスか。俺は水無月綾人だ、宜しくな、アス?」


 少女はコクリと、小さく頷く。

 うん、可愛いな。

 どこかの天狗様には無さそうな純粋さが見える。


「貴方、今なにか失礼なこと考えませんでしたか?」

「エスパーかよ!?」

「まぁいいでしょう。それよりも今は、この少女をどうするかですが……貴方、親とかはいないのですか?」


 天狗がそう質問すると、少女は俺の後ろに隠れてしまう。


「プッ……!」


 ギロリと睨まれた。

 うん、笑うのは良くないな、笑うのは。

 どうやら嫌われた様な天狗に変わって俺が質問する。


「アス、お前親とか近くにいないのか?」

「(ブンブン」


 首を降る、まぁつまりいないようだ。

 しかしこんな所でこの子は何をしてたんだ?保護者仕事しろよ。


「なるほど、親はいないようですね」

「なんで分かる?」

「この世界では対して珍しい事でもないですよ?」

「説明プリーズ」

「この世界で生まれたものには大雑把にですが2種類に分けられます。1つは何者かに産み落とされた、又は創造された者。2つ目は自然に発生したもの。恐らく彼女は後者なのではないでしょうか?」

「それで親はいない、か」

「絶対ではありませんけどね」


 てか、妖怪って自然発生な奴もいるんだ………いや、そりゃそうか、骸骨のお化けとか絶対子供とか産まないだろうし。


「それでこの子ですが………貴方が面倒見てくださいね」

「俺が!?」

「当たり前でしょう?貴方が助けたのですから。無責任に放置するなら止めませんけど」

「実際に狼殲滅したのはお前なんだが………」

「助けに入ったのは貴方でしょう。それに私は………どうやら嫌われているようですし」

「あ、そうですね」


 また睨まれた。

 何故だ……分からん。


「とりあえず、保護者が見つかるか目的地に着くまでは貴方が面倒を見る事」

「目的地に着くまでは?」

「目的地には、組合、またの名をギルド、呼び方は沢山ありますが、とりあえずその子を保護してくれる所があるんですよ」

「ギルド………か、それってゲームとかで言う依頼を受けたりできる寄合所的な所って認識で良いのか?」

「まぁそういう認識でいいです」


 マジか!ギルド!ゲームではお馴染みの組織、まさか本当にリアルで行くことになるとは!

 今ので結構テンション上がった!よし行こう早く行こう速やかに行こう!


「何故テンションが上がっているのですか?」

「そりゃテンション上がるだろ!ギルド!早く行ってみたいじゃないか」

「不思議な人ですね……しかし、本当に何故こんな所にこの狼が?食料不足でしょうか……」


 何やら天狗が思考の海に入っているな……ん?なんでコイツ山の方見て固まってんだ?


 ゾワッッ!!!!!


 !?なんだこの悪寒!凄まじく嫌な予感が……。


 そうして俺も天狗の向いた方角を向く。

 そして見てしまったのだ……山々の影から顔を出している小さな山程の大きさはあるであろう巨大な怪物の姿を…………。

 ヤバイ!あれは本気(マジ)でヤバイ!こっちの世界に来てからヤバイだのマジかよだの言ってきたが、あれは(レベル)が違う。こんなに離れていても俺の本能が最大警鐘を鳴らしている!!


「お、おい!天狗!あれって!」

「黙って!もっと近くによってください!気配を消す為の結界を張ります!」


 どうやら天狗も焦っているようだ。

 あの天狗が焦るなんて……アイツはどんだけの化物なんだ!?

 そうして少しの間動かずにいると、その化物はまた山の向こうへと姿を消した。


「どうやら見つからずに済んだようですね」

「おいおい、なんだよあのバケモノ。俺でもヤバイって分かるレベルだったぞ」

「骸骨の大妖……現代では餓者髑髏(がしゃどくろ)と呼ばれている妖怪ですね。本来は夜にしか現れず、あんなに巨大ではないはずですが……それにあの巨大な妖気、恐らくは二つ名持ちでしょう」

「二つ名?」

「二つ名とは、我々の目から見ても災厄級であり、暴れだしたら甚大な被害予想される、特質した存在に与えられる物です」

「まぁ要するに危険な存在って事か」

「この事を組合は知っているのか?……少し急がなくてはいけませんね」


 そうして俺達は再び移動を開始する。

 これが俺と大妖との初めての遭遇となったのだった。

設定はあるけど手が進まないって事ありますよね?…………申し訳ありません、またしても期間があいてしまいました。

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