引きこもりが部屋から出るとき
初めましてユルスネコフです
この作品は昔の自分がこうだったらいいなー、と思いながら書いた作品です
よろしければ簡潔するまで読んでいただけたら幸いです
どうぞよろしくお願いします
「いい加減出てきなさい!!」
いつしかこの言葉が母親の口癖になってしまった
そう言わざるを得ない状況を作り出したのは……俺だ
中学二年の夏から暫く学校に行かなくなったのだ
理由は二つ
一つは勉強についていけず、授業が辛いだけだったから
一つは当時流行っていたゲームにはまってしまい、ゲームがやりたいが為にズル休みをしていたからだ
そして、日に日に学校に行くことが怖くなった
そんな毎日を過ごしていると母親が「学校に行きなさい」と言ってくるようになり
それを「あー、うん」と素っ気無く返していた
そのやり取りを繰り返していると、やがて中学三年の秋になった
その頃になると母親は「高校はどこでもいいから行きなさい」と言ってくるようになった
どこでもいいから、と言いながら母親が持ってくるパンフレットは有名進学校だったり、大学までエスカレーターで行ける高校の物ばかりだった
「俺はこんなとこ行ってもどうせまた行かなくなるよ?」
そういうと母親は青筋を立てて怒り出した
「あんたにいくらお金を使ったと思ってるの!これからはあんたが私たち親の為にお金を稼ぐの!そのためには良い高校を出て良い大学を出ないと良い仕事には就けないの!だから最低限このくらいの学校くらい卒業してきなさい!」
この瞬間、俺の中で何かが急激に冷めた
そして―――――――俺は自分の部屋から一歩も出なくなった
世間一般的に『引きこもり』になってからというもの、毎日のように母親は「出てきなさい」「学校に行きなさい」「このままじゃあんたの社会性は死ぬわよ」等など
俺を部屋から出すために様々な言葉を掛けてきていたが……俺には何一つ届かない
なにより母親の薄っぺらい言葉に価値は無い
だから俺には何一つ届かない
俺は部屋の中でネットを介して色々なことを知るようになった
俺には関係なく、どうでもいいことばかりだったが、そんな中に目を引くものがあった
『あなたの寿命診断』
自分の名前、性別、年齢の他に住所や出身校(小学校から)など等、計45項目を入力すると自分の寿命がわかる、というものらしい
実際にその結果が当たるという保証はどこにもないけど、何故かすごく気になった
気にはなったが、フィッシングとかの可能性を考えてその画面を閉じた
そして二週間が過ぎた
いつものようにネットで様々なことを調べているとバナーに以前気になっていた『あなたの寿命診断』が出てきた
「バナーになってるし、最低でも数人はやってるよな…」
意を決して俺はそのページを開いた
「45項目って多い…入力だけで疲れた…」
でもこれでようやく診断結果がわかる
「えーっと?『あなたのこの世界での寿命はあと“4日”です』?はぁ!?ふざけんな!!」
あと4日で俺は死ぬとかふざけすぎだ!
部屋から出ない俺が事故に遭う可能性は皆無
ということは押し入り強盗や災害で、ということだ
ありえない、そう思いながらも俺は自分がよく知ってる人物であり、災害などなら一緒に死ぬ可能性の高い人物――――母親の寿命も調べることにした
その結果は『あなたの寿命はあと36年と231日です』だった
つまり、災害の可能性はほぼ消えたと見ていいだろう
あと残る可能性は…と考えてるその時だった
「いい加減出てきなさい!!」
いつものように母親が部屋から出るように催促してきた
……でも、いいタイミングだ
「…母さん、俺の頼みを一つ聞いてくれたら部屋から出るよ」
「はぁ!?なんであんたの頼みなんか「頼むよ!」……内容にも寄るわよ?」
「……4日後、家から一歩も出ないで欲しいんだ」
「は?それだけでいいの?」
「4日後、それを叶えてくれたら俺は部屋から出る」
「……わかった、約束するわ」
俺はホッと息をついた
「でも!後でそんな約束してないとか言わないでよ?」
「言わないよ………なんならボイスレコーダーとかで録音しとけば」
「もうしたわ」
なんとも仕事の早い人だこと
それから3日が経過した
「ねぇ、今日家から出なければいいんだよね?」
「うん」
「そしたら部屋から出てきてくれるんだよね?」
「うん」
「わかった、何があっても家から一歩も出ないわ!だからあんたも約束守りなさいよ!!」
「……わかってる」
これで母親は家から出ないだろう
ということは押し入り強盗なら母さんも一緒に死ぬことになるだろう
そう思って俺は『あなたの寿命診断』で母親の寿命と俺の寿命を調べた
――――結果は残酷だった
母親の結果は『あなたの寿命はあと45年と187日です』と寿命が延びていた
そして俺は…
『あなたのこの世界での寿命はあと2時間です』
もうこれは、この診断が間違ってると信じる他にないだろ
というよりも間違っていてくれ!と願うばかりだ
そして2時間が経過しただろう時に
俺は意識を失っていた
親は子供に自分の理想を押し付ける人いますよね…
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