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イースの大いなる野望  作者: ダメ人間
第一章 ノンストップ・イースフル
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六.TSUISEKI その四

「スピード違反にバイクの違法改造ね。はい!じゃあ免許証見せて!」


「・・・はい。」


 年季の入った強面の警官から言われるがままに阿久竹は免許証を差し出した。


※アース人とイース人は15歳であらゆる免許を取得できます。読者の皆様、運転免許の他、資格を取るときには年齢制限にご注意を。


「学生さんか・・・。まぁ今回の動機は若気の至りってやつかな?」


 強面の警官は笑いながら阿久竹に話しかけた。


「ええまあ・・・そんなところです。」


 阿久竹は顔を下に向け、警官の顔を見ずに答えた。


(何故だ・・・何故こうなった?)


 阿久竹は捕まった時のことを思い出した。




「うおおぉぉぉぉ!」


 阿久竹が勝利のための雄叫びを上げていると、急にとある音が聞こえた。


(ん?何の音だ?)


 阿久竹は思わずその音に耳を傾けた。

 音はサイレン音であった。そしてそのサイレン音がひどく近くで鳴っているのがわかった。


(何だ?何か起きたのか?)


 阿久竹がノーデンスのアクセルを全開にしながら、ふと真横を見るとパトカーが自分と平行して走行しているのがわかった。

 パトカーは赤いランプをピカピカと点滅させながら走行していた。


(パトカーのサイレン音か・・・。どこかで事故でもあったのか?)


 のんきな考えを浮かべた瞬間、彼は考えを改めた。


(ま・・・まさか。いやそんなはずは・・・。)


 阿久竹は自身の血の気が引いていくのがわかった。

 必死に、そう彼は必死に自分の考えを否定した。

 しかし直後にパトカーから発せられた警告によって彼は絶望の淵に叩き落された。


「そこのスピード違反のバイク止まりなさい。止まらない場合、警告無視として実力行使にでますよ?」


 パトカーから発せられた警告。それは追跡作戦失敗の警告音であった。



 そして今に至る。


 パトカーに乗っていたのは年季の入った強面の警官と若い新人警官の2人であった。

 阿久竹は警官2人から事情聴取を受けていた。


「君。捕まって動揺しているのはわかるが、ちゃんと相手の目を見て話をしなさい。」


 今度は若い警官から注意を受けた。若い警官は真面目を絵に描いた様なタイプだった。


「すみません。」


 阿久竹は顔を上げて若い警官に謝罪した。


「まぁまぁ。いいじゃないか。どうやら彼は今まで運転で問題を起こしたことがないみたいだ。運転で問題を起こしたのは今回が初めてだよね?」


「はい。」


 強面の警官は見た目と違って優しかった。


「初犯ということで少し甘くしてあげるよ。」


「ありがとうございます。」


 阿久竹は感謝の意を述べた。若い警官は納得していないようだったが口を挟まなかった。


「しかし君も随分と古いタイプのバイクを作ったもんだ。これ『30年以上前の技術』を使ってるでしょ?・・・実はここだけの話。私も昔はやんちゃしててねぇ。こういったバイクをよく作って暴れまわったもんだよ。」


 強面の警官が若かりし頃をしみじみと思い出しながら阿久竹にそういった。

 この言葉を聞いて1人の男が愕然とした。


「えっ?・・・えっ?」


 このまぬけな声を出したのは阿久竹ではない。イースフルのマッドサイエンティストこと草壁狂四郎の声である。

 草壁は阿久竹の服に取り付けてある超小型無線機から話を聞いていた。そして警官の言葉に耳を疑ったのだ。


(俺の・・・技術が・・・『30年以上前の技術』・・・だと・・・。しかも・・・ヤンキーでも作れる技術・・・だと。)


 草壁は呆然としていた。

 彼は『ノーデンス』を作るためにイースの最先端技術資料を読み漁り、試行錯誤を繰り返し、夜通しで完成させたのであった。

 すなわち彼の持つ技術力の全てを費やして作ったものであった。


『俺の天才的な頭脳を持って作り上げた最高傑作だ。』

『俺の天才的な頭脳を持って作り上げた最高傑作だ。』

『俺の天才的な頭脳を持って作り上げた最高傑作だ。』


 草壁は阿久竹に言った言葉を思い出していた。

 『最高傑作』。この言葉に嘘はない。でも彼の技術力は『30年前の一般的なアース人の技術力以下』なのである。

 ここで草壁狂四郎の名誉のために言っておくが彼は紛れもない『天才』である。

 しかし天才である彼も生まれた世界を間違えれば才能をフル活用できない。

 天才である彼を励ますなら「生まれる世界を間違えたな。ドンマイ。」ということしかできないだろう。


 草壁狂四郎・・・阿久竹の親友でイースフルのマッドサイエンティスト。彼は生まれる世界を間違えた。


 親友の草壁が落ち込んでいることなど露知らず阿久竹は阿久竹で落ち込んでいた。


(まさかこんな結末になるとは・・・。俺は何てまぬけなんだ。)


 落込む彼に更なる絶望が襲いかかる。


「電話してくれるかな。」


 強面の警官が阿久竹にお願いをした。


「えっ?あの・・・どこに電話するんですか?」


「どこにって・・・君の両親にだよ。君はまだ学生だし連絡しないと。」


 警官の言葉に彼はこの世の終わりが訪れたかのような表情を浮かべた。


「あの・・・すいません・・・どうかそれだけは勘弁してもらえませんか?」


 阿久竹は警官2人に懇願した。彼はどうしてもそれだけは避けたかった。

 しかし警官たちは彼のお願いを否定した。


「それは出来ないね。下手すれば死人が出たかもしれないんだよ?このことを両親に話す必要がある。さあ早く電話するんだ。」


「どうしても電話しないとダメですか?」


「どうしてもだ!さあ早く!」


 警官の無慈悲な言葉に阿久竹はそれ以上言葉が出なかった。

 軽く頷くと携帯電話をポケットから取り出して電話を掛けた。


(頼む!頼むから出ないでくれ!)


 阿久竹は必死に祈った。

 かつて自分がこれほど祈ったことが過去にあっただろうか?そう思わせるほど彼は祈った。

 しかし現実は非常である。

 電話が繋がってしまった。

 そして携帯電話の受話口から声が聞こえた。


「もしもし私だ。阿久竹よ。どうかしたのか?何か問題でも起きたか?」


 電話に出たのはイースレイだった。


 阿久竹は自分の上司に電話をかけたのだ。

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