三.TSUISEKI その一
阿久竹次郎率いるイースフルがアースに侵入して3ヶ月と15日が経過しようといていた。
(彼らが侵入したのは1月1日であり、今は4月15日である。)
この間に彼らはアース人に9度戦いを挑み全て惨敗している。
しかし9度の敗戦ごときでへこたれるイースフルではなかった。
彼らはすぐに立ち直り10度目の戦いのための作戦を練っていた。
イースフルのリーダー阿久竹は17歳の若さを利用し、とある高校に編入(侵入)していた。
高校名は『九頭龍新和高校』。ごく平凡な学校である。
この高校の2年2組の教室で、さながら主人公のように窓際一番奥の席でグラウンドを走り回る女子の姿を見ながら作戦を考えていた。
しかしそう上手くアイディアが思い浮かぶはずもなく阿久竹は苦悩していた。
(・・・いかん!全然アイディアが思い浮かばない!)
女子のキャッキャウフフな姿をみれば何か作戦が思い浮かぶと考えていた阿久竹であったがそうはいかなかった。現実は非常である。
阿久竹がグラウンドの女子の姿を見ながら1人悩んでいると1人の女子生徒が話しかけていた。
話しかけてきたのは阿久竹の幼馴染である梅林弥生であった。彼女も阿久竹と同じ高校に編入(侵入)していたのだ。
「どう?女の子をジロジロみることで何かアイディアは思いついた?」
弥生は阿久竹に皮肉を言った。彼女の言葉を聞いて阿久竹は深いため息を吐いた。
「ダメだ・・・全然ダメだ。早くもネタ切れだ。前回の鳥黐作戦はイース人の誇りをかけた作戦だったんだがな。」
彼はそういって鞄から小さな白い包みを取り出した。包みを開くとイース米で作った『イース餅』が3つ入っていた。彼はその内の1つを手に取り食べ始めた。
イース人たちは資源不足であったが全ての資源が不足していたわけではない。
イース米もその1つでありイース米は有り余るほどあった。そしてイース人にとってイース米は主食であった。
イース米で作ったイース餅には特別な効果があった。それは特殊な粘着性であった。
イース餅は大量の金属に反応して接着剤のような強力な粘着性を得る。そしてあらゆるモノにペタリとくっつくのだ。(少量の金属を近づけただけでは、ただの餅のままである。)
この効果を利用しようとしたのが前回の鳥黐作戦である。仕掛ける鳥黐の材料をイース餅にして動けなくしようとしたのだ。
イース人の主食を利用した作戦。すなわちイース人の食の誇りをかけた作戦であったが、見事に失敗したのである。その落胆は大きかった。
「はぁー弥生。何かいいアイディアないか?」
阿久竹は弥生に相談した。弥生はリーダー補佐官という立場である。つまりイースフルのNO.2である。その彼女に阿久竹は懇願した。
「そうね・・・。まずは敵のパイロットを詳しく知るのが重要じゃないかしら?」
「というと?」
「今までの戦いからアウトサイダーNО.1、2、3の3体を操縦しているのはいつも同じパイロットみたいよ。」
「それで?」
「ロボットでの戦いが勝てないなら、操縦している3人を事前にやっつけておけばいいんじゃない?1人でもやっつけておけばアウトサイダーに合体される心配がなくなるから勝機が見出せると思うけど。」
弥生は腕を組みながら阿久竹に作戦の説明をした。そして話を続ける。
「そのためにはまず『AWCO福岡支部』の所在地を知る必要があるわ。だから今度はいつも通り・・・いえ、わざと負けて、意気揚々と基地に引き返す彼らを追跡するの。」
彼女は『いつも通り負けて』と言いかけて止めた。情けなくなったのである。
「ちょっとまて。引き返す彼らを追跡っていうけど奴ら相当速いぞ。いつもとんでもないスピードで現場に来るんだぞ。」
「確かに現場に来るときはいつもとんでもないスピードでやってくるわ。でも引き返す時はわりとゆっくりなのよ。恐らく合体するために相当のエネルギーを消費するみたいね。だから帰りはゆっくりになってるに違いないわ。」
阿久竹は弥生の作戦内容を聞いて考えた。
(確かにいつもインスマスを瞬殺した後の奴らの行動はのんびりしたものだった。奴らが油断しているとしたらこれは追跡するチャンスかもしれないな。・・・やってみる価値はある。)
阿久竹は2度軽く頷いた。そして弥生を褒めた。
「よし!それでいこう!さすが弥生だ!俺の補佐官を務めるだけのことはあるな!」
「あら?偉く上から目線ね?私とあなたでそんなに階級に差があったかしら?」
互いに軽口を言い合って阿久竹は笑い、弥生は少し微笑んだ。
「では学校が終わり次第すぐに準備に取り掛かるとするか!」
阿久竹と弥生は学校が終わるとすぐにアジトに戻り部下たちに作戦を説明したのであった。
賢明な読者の方ならお気づきだと思うが梅林弥生も阿久竹次郎と同じタイプの人間であった。
梅林弥生・・・クールビューティーとしてメンバーから慕われており知的に見える彼女も実は意外とアホだった。