十一.罪と罰
4月27日(水)曇り
追跡作戦失敗から一夜明け、場面は学校へと移る。
阿久竹次郎は生徒指導室にいた。
先日のスピード違反の件で担任と生徒指導担当の先生と2人から説教を受けていた。
学校を休んでおきながら、交通ルールを破り警察に捕まったのだ。
普通なら親も含めての面談となるのだがそうはならなかった。
阿久竹の両親はすでに亡くなっており、彼の親代わりであるイースレイは海外にいるという理由でこの場に彼の親は出席していなかった。
「阿久竹。お前の家庭の事情はこちらも承知している。しかし、だからといって社会のルールを破っていいわけではない。よって明日からゴールデンウイーク明けまで停学とする。」
「わかりました。申し訳ありませんでした。」
阿久竹は苦学生ということもあり処分は甘くて済んだ。
ちなみに阿久竹に限らず学生は学校を好きなように休める。(半日休暇も可)
生活費を稼ぐという名目で学校を休んでのバイトが認められているのだ。
もちろん、休んだ分の出席は土日や祝日、夏休みなどの長期休暇で埋め合わせしなくてはならない。
そして何より、中間や期末テストで点数を取らなければならない。
この世界では阿久竹のような学生は珍しくない。
短寿命のため、両親が既にいない学生は多いのだ。
両親のいない学生たちは国からスズメの涙ほどの補助金が支払われる。
しかし、それだけは生活できないので、自分たちでバイトなどをして生活費を稼いでいる。
もちろん、両親がいて普通の生活できている学生はバイト禁止である。
とはいえ苦学生ばかり甘くしては不平不満が広がるので、学校への出席可否は誰でも自由に決めることができるように規則を定めてある。
※学校の規則等、随所の設定がガバガバで申し訳ありません。
今後もご都合主義を連発していきますので、温かい目でお読みください。
念のためですが、皆さんは規則を守りましょう。
ルール違反はダメ。絶対。
説教が終わり、阿久竹が自分の教室に戻ると皆の視線が彼に集まった。
(あいたたた。やっぱりそうなりますよね。何しろ俺は『犯罪者』ですから。アハハハハ。)
阿久竹は顔を伏せ、急ぎ足で自分の席についた。
ヒソヒソ話が耳に入り、阿久竹は増々気まずくなった。
彼は4月に編入してから真面目を貫いていた。
編入してからひと月しか経ってないが、クラスの全員が彼は真面目な人だと思うほど彼は真面目に生きてきた。
しかし、先日の件で彼の運命は大きく変わってしまった。
『真面目なやつ』→『不真面目でアホなやつ』に見事にジョブチェンジしてしまったのだ。
クラスの皆が動揺するのも無理はなかった。
「ねぇねぇ梅林さん。阿久竹君とよく話をしているけど、阿久竹君ってもしかして不良なの?私てっきり真面目な人だと思ってたけど。」
「い、いや阿久竹君は真面目な人だよ。・・・たぶん。」
「そう?話によると古い改造バイクでスピード違反したらしいよ。私がっかりしたなー。阿久竹君って勉強だけじゃなくてスポーツもできるじゃない?顔も悪くないしさ。だから女子たちの間で割と人気あったんだよねー。でも今回の件で女子からの評価ダダ下がりだよ。」
「さ、さあー私よくわからないな。アハハハハ。(阿久竹ごめん。本当にごめん!)」
梅林弥生は心の中で阿久竹に謝りながら、ガールズトークに花を咲かせていた。
(いやもう本当に勘弁してください。許してください。お願いします。)
弥生とクラスの女子の会話が丸聞こえで、阿久竹は完全に縮こまっていた。
(もう帰るか・・・。このまま授業受けてもしょうがないな。)
そう考えている彼に2人の男子生徒が近づいてきた。
近づいてきた男子生徒は秋空一歩と千石冬夜であった。