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第六話 勇者一行

 地面に散らばったお金を回収する。勇者という職業からは想像もできないさもしさ。俺たちさっきまで魔王と対峙してたんだぜ・・・。


 なんて考えながら集めた金貨300G弱。逃げた魔物たちと猿の魔物の分。貴重な収入だ。しかしこれだけでも集めるのに一苦労だ。額が増えたらどうするのだろうか。その時はその時で嬉しい悲鳴となるだろうが。



 ヒメ、シャルと連れ立って洞窟の出口へ向かう。


「それにしても何だったんだろうな。ここの魔物は?みんな逃げるわ、ボスに襲い掛かるわ」


「確かにおかしかったです。魔物同士の争いなど聞いたことがありません」


「そうっすか?よくある話っすよ」


 シャルが口をはさむ。


「分かるのか?何であんなことになっていたのか」


「はいっす」


 そう言いシャルは自らの推測を話し始める。


「この洞窟はきっと弱い魔物の群れの住処だったんすね。そこへ突然強力な猿の魔物があらわれて弱い魔物は洞窟から追い出された。魔物はもともと力関係に従順なんす。だからあのボスに従っていた。といっても知能はないっすから町に現れた魔物は多分逃げ出した魔物がたまたまたどり着いた、といったところっすね」


 そこでシャルが一区切りする。


「猿の魔物ってよくわかったな」


「う」


 俺達はボスとしか言っていない。猿の魔物と断言できたということは見ていたのだろう。とはいえ皮肉を言っても仕方ないので先を促す。


「で、それがどうつながるんだ?」


「はい、そんなところに現れたのがあなたっす。あ、なんて呼べばいいっすか?」


「俺のことか?オーマでいい」


「ではオーマ様と呼ばせていただくっす」


 様って・・・お前もか。


「・・・・あの・・・あなた様は」


 ヒメにも問いかけるが、何故か腰が引けている。


「ヒメ=レーヴェンといいます。どうぞヒメと呼んでください」


「レーヴェン・・・?レーヴェンと言いますと、まさか」


「ヒメ、とお呼びください」


「は、はいっす、ヒメ様」


 シャルが続きを口にすることはできなかった。レーヴェンの姓は王族を指すのだろう。それを大げさに言われたくないというのはわからないでもない。


「そ、それでっすね、そんな魔物の巣に今度はオーマ様が現れたわけっす。魔物にとっての強さの尺度である魔力をでたらめな強さでまき散らしながら歩くオーマ様が」


「・・・・。」


 なんとなく読めてしまった。


「ああ、つまり何か。魔物どもは、俺が怖かったから・・・逃げたと」


 俺の確認の言葉にシャルは頷く。


「そして、前後を脅威に挟まれた魔物たちはより、脅威の低い方へ、つまりあの猿の方へ死に物狂いで襲い掛かったというわけっす」


「それは何ともまあ・・・」


「可哀想です」


 ヒメが言葉をつなぐ。あえてぼかした言葉を言わないでほしかった。


「「・・・・・。」」


「気にすることはないっすよ。逃げたとはいえその魔物が人間を襲ったのは事実ですし、自分の身を守る行為なのはこちらも同じっす」


「そう・・・だよな。・・・なら、なんで最後の猿の魔物は逃げずに襲ってきたんだ?魔物どもが判断したように俺の魔力の方が強かったんだろ」


「それはおそらくボスのプライドというやつっすね」


「知能ないくせにいらんもの持ってるんだな」


 わからないではないんだが。




 洞窟の出口が見えてきたころ、ヒメが話をまとめる。


「じゃあ、そのボスもいなくなってこの件は片付いたのですか?」


「そうなるっすね。何でこんなところに魔王がいたのかはわからないっすけど」


 やはり一抹の疑問が残る。だが深く気にしてもどうしようもない。これで終幕としよう。


「じゃあ、お疲れ様、だな。今日は宿に戻って休もう」


「はい」

「はいっす」





 そういやレベルアップしたんだったか。確認しとこう。



――ステータス――



オーマ


 職業: 勇者●●

 Lv:   24


HP:   116

MP:   999


攻撃力:  177

防御力:   92

魔力 :  999

精神力:  188

素早さ:   64

器用さ:   43

幸運 : -796


経験値:14154

次のLvまで:2027



 順調に成長している・・・・のだろうか?幸運以外。俺ってそんなに幸薄いの?と自問したくなる。



ヒメ


 職業:   王女

 Lv:   98


HP:   999

MP:   784


攻撃力:  999

防御力:  999

魔力 :  212

精神力:  234

素早さ:  999

器用さ:  999

幸運 :  999


経験値:16014153

次のLvまで:?????????



 ・・・・・・えっと。


 ・・・・レベル98。つまり・・・あれだ・・・・・。


「何があった!?俺が気絶している間に何があった!?」


「オーマ?そんなに慌ててどうしたんですか?」


「?」


 ヒメもシャルも怪訝な表情をしているが、今はそれどころではない。


「良いから答える!」


「はあ・・・、強いて挙げるならアーリアちゃんとの決闘・・・とかですか?」


「戦ったのか?俺が気絶している間に?」


「はい。あ、アーリアちゃん凄いんですよ。倒したと思ったら大きな狼になっちゃうんです」


 アーリアが狼に?魔族だから変身できるのだろうか。


「じゃあ、その狼になったアーリアに負けたってことか?」


 つまりヒメにだけ変身前のアーリアを倒した経験値が入った?それでレベル98に?


「あ、いえ、狼アーリアちゃんも倒しました」


 倒してしまったらしい。


「あ、安心してくださいね。大きな怪我はさせてないはずです」


 ぐっと拳を握り力説してくる。


「それはいいんだが・・・魔族って敵じゃないのか?」


 俺の最初のイメージとしては容赦なく倒すべきもの、的な感じだったんだが。


「可愛いはジャスティスです」


「ああ、そう」


 めっちゃ良い笑顔だった。




「でもさっき負けてしまいましたって言ったよな?」


「あ、勝てなかったのは魔王の第三形態の時です。あともうちょっとだったんですけど」


「ちょっと待ってくれ」


 ヒメが良く分からないことを言い出した。第三形態?何それ。


「はい」


「魔王とも戦ったの?」


「はい。逃げようとしたので」


「でもあいつ、一瞬で消えたり現れたり、なんていうか・・・瞬間移動?出来たよな?」


「あ、あれ連続でやるにはタイムラグがあるみたいです。アーリアちゃんを奪われないように周囲を張ってとにかく魔王が近づいたり現れた瞬間に攻撃してたら勝てました。気づけたのはオーマのおかげです」


「勝ったって・・・魔王倒したの?」


「それがどうやら分身だったみたいで、それから分身八体との連戦になりました」


「それも倒したんだろ?」


「はい」


 普通に頷かれた。


「・・・・・結局、どれだけ倒したんだ?」


「魔王の分身五十体ぐらいと本体の第一形態と第二形態を少々」


 そんな調味料を加えるみたいに言うな。


「分身四十体どっから現れた」


「えと、分身は分裂するみたいなので、増やしに増やしてから一掃して・・・ついつい経験値稼ぎを」


「・・・・・・・・・・・・」


 それが原因か。


「流石に第三形態はきつかったです。まさか第一形態と第二形態が分身として出てくるとは・・・」


「そうか」


 話についていけない。


 良く分からんが、アーリアが狼になったように魔王も何かしら変身したのだろう。そして多分変身すると強くなるはず。だから第三形態でヒメは負けた。しかし・・・・。


 何でヒメが勇者にならなかったのか。甚だ疑問だ。強すぎだろ。いや最初の立ち合いでわかってはいたが、魔王に匹敵するレベルとは・・・。


「まさに八面六臂の戦いぶりでしたっす。怖かったっす」


 まるで見ていたかのようにシャルがこぼす。いや実際に見ていたのだろう。


「シャル、こっちおいでー」


「オーマ様、うちはここまでみたいっす」


「ああ、今までよくやってくれた。良き来世を」


「そこは止めてくださいっす!!」


「二人して酷い反応・・・。この恨みはシャルで発散してやる・・・」


「ぎゃ~~~!!!!」


 そんな風に仲良くする二人を思考の端に捉えながら考えに耽る。


 つまりアーリアの二回戦と魔王の分身五十体、第一形態、第二形態の分の経験値も、ヒメに入ったと。


 確かにレベル98も納得の戦果だった。いやレベル98がどんなものか知らないけど。


 しかしそれだとまた疑問が上がる。


「そこまでされて、何で魔王は俺たちを生かしてるんだ?」


「さあ?」


 どういうつもりだ?何故魔王は俺たちを見逃すような行動をする?何度も何度も何度も。


「オーマが真剣な顔をしています」


「あの、そろそろ離れてくれないっすか?」


 まあ、いいか。生きてるんだし。


「投げやりな顔になりました」


「・・・・・・」






「あ、それとこれ、戦利品です」


 そう言ってシャルを抱きしめたままヒメは何か渡してくる。



―――オーマは『氷狼の涙』を手に入れた。



 雫型に固まった氷の結晶。要するに、泣いちゃったんだな・・・。


 アイテム袋に入れた。



 ヒメの急激なレベルアップの理由を踏まえヒメのステータスをもう一度見る。



ヒメ


 職業:   王女

 Lv:   98


HP:   999

MP:   784


攻撃力:  999

防御力:  999

魔力 :  212

精神力:  234

素早さ:  999

器用さ:  999

幸運 :  999


経験値:16014153

次のLvまで:?????????




 なんかもう、行くとこまでいった感じだ。すっげー体力ば・・・・ごほん。王女とは何なのか。哲学的に問いたくなるところだ。むしろ俺が弱すぎるのだろうか。




シャル


 職業: 魔法使い

 Lv:   53


HP:   220

MP:   609


攻撃力:  185

防御力:  349

魔力 :  581

精神力:  352

素早さ:  130

器用さ:  151

幸運 :   72


経験値:474092

次のLvまで:4976



 こいつもこいつでLv高いな。ステータスはどれも俺より一回り上を行くのに、MPと魔力だけは俺より低い。どう受け取ればいいのか。




 俺たちの内、誰のステータスが基準なのか・・・。


 判断材料が足りないからなんとも言えないが・・・・ヒメのステータスはおかしい。それだけは確かだ。だが、それをいうなら俺の魔力値も異常なんだよな。


 それにしてもあの唐突な経験値は何だったのだろうか。


 分からないことが多すぎる。ヒメ達に聞いて分かるものなのだろうか。おいおい聞いていくとしよう。


・・・・・・それはそうと。




「ヒメ、俺のHPはもう116だ」


「・・・・はい、そうですね」(にこにこ)


「くっ」


 何だその余裕の笑みは!


 そりゃ、まだヒメのHPの・・・・・。やめよう比較対象が間違っている。


「何の話っすか?」


「・・・・何でもない」


 それにシャルよりも低い有様だ。


 いつか見返してやろうと心に秘めつつ、洞窟の出口に達する。外はもう日が暮れて来ていた。何気にかなりの時間、俺は眠っていたらしい。


 こうして、夕闇の頃、ようやく俺たちは町に帰り着いた。




オーマ    ヒメ     シャル 

HP116  HP999  HP220

MP999  MP784  MP609

Lv 24  Lv 98  Lv 53   所持金 397G






「ようこそ、ここはリアン城下町です」


「あ・・・これはどうもご丁寧に・・・」


 そうそう、このタイミングで・・・って、あれ?この人出るときに挨拶してた人と同じじゃね?まさか一日中ここに立ってるなんてことないよな・・・?





「で、お前はどこに泊まるんだ?」


 町に帰り、シャルに問いかけるのは寝床の予定。同行することになったのだから、明日の朝の合流の仕方について相談しようと思った。


「どこって、町に宿屋は一つしかないっすよ?」


「は?」


 そう言われて思い返す。一通り町を回ったにもかかわらず、確かに町には入口付近の、俺たちが泊まる予定の宿屋一軒しかなかった気がする。他の宿はどこか俺たちの見逃したところにあるものと思っていたのだが。


「本当にこの一軒しかないのか?」


 目の前にある宿屋を指差してさらに問う。


「はいっす」


「・・・・・あそこ三部屋しかなかったぞ?」


「そうっすか」


「城下町なら商人とか旅人とかたくさん来るんじゃないのか?」


「そうっすね」


「泊まれない人、出てくるよな」


「・・・・・・」


「なんとか言え!目をそらすな!この町の宿事情はどうなっている!?」


「うちに聞かれても困るっす」


「まあまあオーマ、私たちが泊まれればそれでいいじゃないですか」


「・・・・泊まれたらな」


 たった三部屋がそう毎回割り当てられるとは思えないが。とはいえ今回はあらかじめ話を通してある。


「じゃあ、シャルもこの宿に泊まるのか」


「お二人が泊まるのなら」


「・・・?」


 何か変な言い方だ。まあ、ここしか宿屋がないのなら同じになるのも必然か。


「まあ、いいか。じゃあ入るぞ」





 宿屋に入るや、『王家の紋章』を見せつつヒメが手続きを済ませて、10Gを支払う。勇者一行という名で通ってしまったことは気にしないでおこう。

 そのまま、部屋に向かう。その後からシャルもついて来ていた。そして部屋に三人そろって入る。


「なあ・・・」


 おかしい。


「なんで同じ部屋なんだ?」


 ヒメとシャル両方に問いかける。ヒメには何故俺とヒメ、二人が泊まる部屋が一つになっているのかという問いかけ。シャルには何故その一つの部屋に入ってきているのかという問いかけだ。


「勇者一行ですから」

「勇者一行っすから」


「それで通ると思っているのか?というかシャルはもともとここの部屋を取っていたんじゃないのか?」


「オーマ様の行動次第でどこへ行くか分からなかったっすから、宿はとってないっす。それに、勇者一行を名乗った方が割引がお得っすから」


「そんな理由で?」


「オーマの『王家の紋章』は一部屋分の費用を安くするものですから、他に部屋を取ろうとすると余計な出費になります。というかお金が足りなくなります」


「・・・・なら仕方ないかもしれないが。ちなみにいくらになるんだ?」


「1000Gです。」


「百倍!?」


「はい。合わせて1010Gになります。今は387Gですから、足りません。私の貯金を使えば・・・」


「いや、いい・・・お金は大事に使おう」


 もしかして、俺たちは『王家の紋章』がなければ、その日の暮らしもままならないのか。しょぼいなんて言って申し訳なかった。


「とはいえ、ベッドは二つしかない。誰かが床で寝なければならないわけだが・・・まあ、俺しかないよな」


 流石に女の子を床に寝させて俺はベッドで眠る、などということはできない。

 幸い掛け布自体は複数ある。全部屋でのベッドの数が六つということを考えれば、相部屋や床で寝ることは暗黙の了解というやつなのだろう。でなければ町の旅人を全員泊まらせることはできないだろう。


「あの、オーマ――」


「そんなことしなくても一緒のベッドで寝ればいいっす。ほら片方は少し大きいっすよ」


 言われてみれば二つ並んだベッドの片方は何とか二人寝れそうな大きさだ。だが余程密着しなければ落ちてしまいそうだ。となれば、女の子と一緒に俺が眠るわけにはいかない。そうなると――


「流石にヒメ様に同衾させるわけにはいかないっすから、うちとオーマ様が一緒に寝るっす」


 ヒメの身分を察して気を利かせるシャルだが・・・。


「おまえな、何言って――」


「何言ってるんです!!オーマをシャルと一緒に寝させられるわけないでしょう!!」


 ヒメが血相を変えてシャルに文句を言う。そうだ、もっと言ってやれ。


「オーマとは私が一緒に寝ます!!」


「は!?」


「ヒメ様?ご自分が何を言ってるか、わかってるっすか?」


「もちろんです。今の私は王女などではなく、ただのヒメとして、オーマの旅に同行しています。なら、オーマと一緒に寝ることになんのためらいがありましょうか」


 何だその覚悟。はっきり言っていらない。


「それなら構わないっすけど」


「構わないのか!?」


「まあ、王女じゃないとおっしゃるなら、ただの勇者一行っすから。」


 それで納得するとは、いったい何なんだ勇者一行とは?


「いやいや、お前らが一緒に寝れば済む話だから」


「「・・・あ」」


 今気づいたと言う様に声を上げる二人。


「まあ、そういうわけで、お前らの厚意に甘えて俺は有難く一人で使わせてもらおう」


 納得した二人に俺は決定事項として告げる。


「・・・・・残念です」


「何か言ったか?」


「いえ、何でもありません」


「なら、飯食いにいこう」


 夕食を食べに一階の酒場に向かった。




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