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第四話 罠



 やがて、最奥と思われる空間に出た。そこにいたのは、今までの魔物とは格が違う巨大で猛々しい猿のような魔物。そして・・・


 その魔物を攻撃する、先ほど俺たちから逃げ出した魔物の群れ。


 だが明らかに魔物の群れは力が足りず、猿の魔物に蹴散らされている。


「これは、どういうことだ?」


「さあ・・・・」


 俺もヒメも呆然としてその戦いの様子を見守る。やがて猿の魔物は全ての魔物を倒し、雄たけびをあげた。お金が大量に散らばっている。後で拾おう。


「まあ、あれを倒せばいいんだろ。準備はいいかヒメ」


「ばっちりです」


「じゃ、いくぞ」


「はい」


 何の気負いもなく足を踏み出した。



 近づくオーマたちに向こうも気づいたのか、再び雄たけびをあげ、手で胸を叩く。


 そして、猿の魔物の間合いに入ったのだろう。ドラミングを止めた猿の魔物はオーマに向かってそのごつい腕を振るう。


 オーマは猿の魔物が伸ばした腕をすれ違うようにかわすと同時、その腕を思い切り、たたっ切る。



――オーマはヒデヨシに188のダメージを与えた!


(ヒデヨシって言うのかよこいつ。)


 それにしても、これが聖剣の力・・・・。凄まじいな。負ける気がしない。


「オーマ、凄いです」


「言ってないでお前も続け!」


「わかりました」


 ヒメはそう答え、俺の攻撃にひるんでいるヒデヨシの懐に潜り込み、胸部を豪快に切り上げた。ざくっと小気味のいい音を上げるとともにCRITICAL!!の文字が軽快に頭の中に躍り出る。


――ヒメはヒデヨシに999のダメージを与えた!


 ヒデヨシは倒れた。


「・・・・・。」


 一人、桁違いに強い方がおられる。




――ヒデヨシを倒した!



――オーマたちは150の経験値と200Gを手に入れた!



――オーマはレベルアップした!


 レベルアップしたらしい。てかレベルアップって何だ。そんなことを考えている間にもどんどん頭の中を文字が流れていく。


   HPが4上がった!

   MPが0上がった!

   攻撃力が3上がった!

   防御力が2上がった!

   魔力が0上がった!

   精神力が5上がった!

   素早さが1上がった!

   器用さが2上がった!

   幸運が28下がった!



「何で幸運下がるんだよ!」


「ひゃい!?・・・急になんですかオーマ?」


 とどめの勲功に喜び勇んで帰ってきたが、オーマが固まってしまっているので不思議そうにその頬をつついていたヒメが驚きの声を上げる。


「いや、何でもない」


 例の如くヒメには見えないらしい。


――オーマはレベルアップした!

   HPが5上がった!

   MPが0上がった!

   攻撃力が2上がった!

   防御力が3上がった!

   魔力が0上がった!

   精神力が5上がった!

   素早さが2上がった!

   器用さが2上がった!

   幸運が52下がった!


―――新しい魔法『炎撃』を覚えた!


(・・・・・・・・幸運。)



――ヒメはレベルアップした!

   HPが35上がった!

   MPが5上がった!

   攻撃力が12上がった!

   防御力が13上がった!

   魔力が4上がった!

   精神力が2上がった!

   素早さが12上がった!

   器用さが12上がった!

   幸運が22上がった!


(・・・・・・あれ?)


――ヒメはレベルアップした!

   HPが40上がった!

   MPが5上がった!

   攻撃力が15上がった!

   防御力が11上がった!

   魔力が2上がった!

   精神力が1上がった!

   素早さが10上がった!

   器用さが8上がった!

   幸運が13上がった!


―――奥義『破魔の剣』を覚えた!


(なんか・・・・上がり過ぎじゃね?)




「ヒメ、俺達は今、レベルアップした」


「おお、おめでとうございます」


「で、何なんだレベルアップとは」


「敵を倒して経験値がいっぱいたまるとステータスが上昇するのです。それがレベルアップです」


 知識をひけらかせるのが嬉しいのか、ふふんと胸を張り答えるヒメ。


(ステータス、攻撃力とかのことか。幸運が下がってるのは何なんだ)


「新しい魔法とやらは?」


「あ、オーマは魔法型なんですね。レベルアップするとたまに覚えるんですよ。私は技を覚えます」


(魔法型?魔力は上がっていないのにか?)


 それにしても魔法なんてものも普通に存在するらしい。


「ちなみに、そのレベルやステータスは確認できるのか」


「はい、ステータス一覧で見ることができます」


「で、そのステータス一覧はどこにあるんだ?」


「こう、頭の中でSTARボタンを押す感じで」


「またそれか」


 頭の中でステータス一覧を呼ぶイメージをしてみる。


(・・・なんか来た!)


 頭の中に文字の羅列が浮かびあがる。



――ステータス――



オーマ


 職業: 勇者●●

 Lv:    3


HP:    18

MP:   999


攻撃力:  117

防御力:   28

魔力 :  999

精神力:   43

素早さ:   26

器用さ:   13

幸運 : -223


経験値:154

次のLvまで:124




 勇者の横の塗りつぶされている文字。読めない。何だろうか。なんとなくやっつけな、雑な感じがする。

 魔力が上がらなかったのは上がる余地が無かったから?頭打ちってことか?

 てか、幸運がマイナスってどういうことだよ!




ヒメ


 職業:   王女

 Lv:    3


HP:   725

MP:   167


攻撃力:  906

防御力:  803

魔力 :   72

精神力:   61

素早さ:  681

器用さ:  538

幸運 :  999


経験値:154

次のLvまで:124




「いろいろツッコミたいところではあるが・・・とりあえずその幸運分けてください」


「ごめんなさい。ステータスは分けられないんです」


「だろうな」


 本当に申し訳なさそうに謝るヒメ。可能だったら本当にくれたのだろうか。


「それにしても何でそんなにステータスが高いんだ?お前は」


「そんなに高いですか?」


「ああ」


「具体的には?」


「HPが700ある」


「オーマは?」


「・・・18」


「ふっ。」


「笑うな!」


「いえ、すみません、笑ってないですよ?」


「・・・・・。お前は自分でステータスを見れないのか?」


 気を取り直して聞いてみるが。


「はい、だいたいしかわかりません。何でも勇者様の特技の一つだそうです。仲間の能力を数値化して見るという、――ぷぷ。」


「ちょっとこっち来い。」


「いやです!なにか邪悪な気配を感じます!」





『ほう、ばれてしまうとは・・・流石は勇者といった所だな』


「な!?」


「え!?」


『え?』


 そこに現れたのはマントをたなびかせる仮面魔王の姿だった。


「魔王!?何でここに!?」


「全く気づきませんでした」


『あ、そうだった・・・・・のか』


「はあ、全く新魔王様にも困ったものですね」


 そう言って魔王と共に姿を現したのは・・・・フードをかぶった女の子。


「まさか・・・・・誘拐か?」


「あんなにかわいい子を・・・・許せませんね」


「ああ、全くだ。あんなにかわいい子を」


『・・・・・・』


「かわいい・・・・・・・・・・ですか・・・・そうですか」


 女の子は戸惑ったようにかわいいという言葉を繰り返す。


 フードから覗くその顔は間違いなく美少女と言える。


 そしてその顔は赤くなっていた。


『・・・・・・なんだかな。とりあえず、アーリア!一つ挨拶をしてやれ!』


「・・・・お任せを」


 そう言うとその少女はフードを取り、白銀のショートヘアーをさらしながらこちらへと歩いて来た。

 頭には獣のような耳がついている。・・・・・あれ?人間じゃない?


「魔王軍四天王、アーリアといいます。不束者ですがよろしくお願いします」


「あ、ああ。こちらこそ」


「よろしくお願いします?」


「・・・・・・・・・」


―――じーっ


「えっと・・・?」


 何やらアーリアと名乗った少女から見つめられる。何だろうか?



――なでなで



 考えている間に気がつけば俺はアーリアの頭を撫でていた。これだけ撫でやすい位置にあればそりゃ撫でる。うん、仕方ない。


「ん~~~~」


 やばい。なにこれ手触りが良すぎるんだが。その上、アーリアは気持ちよさそうに目を細め、尻尾をぶんぶん振っている。癖になりそうだ。


「めっちゃ可愛いな」


「~~~~~!!」


「オーマずるいです!私にも撫でさせてください!」


「アーリア?ヒメに譲っても構わないか?」


「仕方ないですね~~」


 ちっ


「何で今舌打ちしたんですか?」


「いや、別に」


 単に撫で続けたかっただけだ。


「それでは、心置きなく―――」


 そんなヒメとアーリアの親交から目を離し、魔王へと視線を向ける。


「で?これは何のつもりだ?」


『流石に警戒心が無さすぎるぞ、勇者』


「は?――――――な!?」


 途端、胸が焼けるように熱くなる。目をやれば刃のようなものが胸から突き出していた。


 ごぼっと血が口から吐き出される。


「安心してください。急所は避けました。殺しはしません」


 そして胸から短剣が抜き取られる。


「・・・・アー・・・・・リア?」


 俺の胸から突き出た短剣を背後のアーリアが引き抜いていた。


 その更に背後にはヒメが倒れ伏している。


 嘘・・・・だろ?こんな・・・とこ・・・ろ・・・で・・・?


「気は進みませんが魔王様の為ですので」


 そして、それを最後に俺の意識は途絶えた。








 ん?俺は・・・・一体?


 頭を優しく撫でる何らかの感触。心地いい。


 ゆっくりと目を開く。


「気が付きましたか?」


 目に入るのは可愛らしい少女、アーリアの顔。それが逆さまになって見える。

 そして頭の後ろから伝わる柔らかい感触。そしてふんわりとした笑みを浮かべて撫でる動作をするアーリア。そこから導き出される現在の状況は。


「・・・・・・・膝枕?何で」


「あの、いやだったでしょうか?」


「あ、いや、別にいいと思う」


 我ながら正直だった。


「って、そうじゃないだろ!お前何で俺たちを殺そうとした!?」


「いいえ、殺そうとしたわけでは無く、倒した、のです。そこを間違えられると悲しくなるのでやめてください」


「あ、うん。・・・ってヒメは?」


 膝枕されたまま左右に見渡せばここは相変わらず洞窟の最深部。


「んぅ・・・そこで眠っていらっしゃいます。ヒメさんも殺したわけでは無く、行動不能にしただけなので安心してください」


 むずがゆそうに身じろぎをするアーリアに言われて、そちらを見ればそこには地面に転がっているヒメの姿が。


「・・・・・安心できないんだが」


「そうですか?」


 しかし微かに胸が上下しているのが見て取れた。どうやら命はあるらしい。良かった。


 それにしても何だろう。多分今の状況って敵に捕らえられ絶体絶命のピンチってやつだよな。なのに、何故こんなにもアーリアの膝枕で安らいでいるのか。


「なあ」


「はい?」


「また、頭撫でてもいいか?」


「ぜひお願いします」


 即答だった。そんなアーリアの返事に俺は体を起こす。そして隣同士になったアーリアの頭を撫でる。そこへ、


「私もいいですか?」


「ひゃひ!?」


 ヒメがいつの間にか起きていたらしい。


「ま、また、撫でるなんて、あなたには警戒心というものが無いんですか!?」


「それはオーマも同じです」


「まお・・・・オーマ様は良いんです」


「いや、よく考えたら良くないよな」


「良いんです。撫でてください」


「おう、任せろ」


「気持ちいい・・・・です」


「私も――」


――なでなで


 ヒメも参加する。


「これはこれで・・・・良いです」


 アーリアの満足げな声と共に。


『はあーー』


 魔王のため息がどこからともなく聞こえてくる。




「な!魔王!出てこい」


『ん?』


「よくも騙してくれましたね!」


 俺とヒメはアーリアを放って魔王に向かって戦闘態勢を取る。


『いや、二人とも不用心すぎる、というか・・・・』


 途端、急に胸が焼けた様に熱くなる。


『実行犯無視ってどういうことだ・・・』


「油断大敵です。お二人とも」


 そしてまた短剣を引き抜くアーリア。同じくため息を吐きながら。


「ぐっ、卑怯な、魔王・・・」ばたっ


「次は容赦しません・・・」がくっ


『・・・はあ』


 そして、俺たちは意識を失った。






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