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第四十五話 紫の魔女

 セラは目を閉じていた。失った左目と借り物の右目を二つ閉じたまま、ただ命が終わるのを待っていた。


 思えばとんでもないことをしたものだ。


 入れ替わりの力。


 その力で、妹分を刺し殺そうとした。親友の体を奪って脅した。仲間を利用し騙した。そして、自分自身を犠牲にした。


 それを手に入れたことで、セラは知ってしまった。死を、死ぬという経験を。その結果、セラの思いが暴走した。


 そうまでしてわたくしは何がしたかったのか。


 そんなこと、決まっている。


 だから、たとえこれまでのことが自分ではない誰かに操られてしたことであっても、その悪行を受け入れる。わたくし一人死ねばそれでいいのだから。



 諦めではなくそれを許容して、セラはただその時を待つ。セラを恨む誰かがセラを殺してくれる瞬間を。



 そんな彼女にかけられる声があった。



――おーい。



――・・・・・・・。



――おい。セラ。



――マイ・・・ケル?



――誰がマイケルだよ・・・。



――何の用?



――何の用と言われても特に用はないんだが。世間話をしよう。



――殺せばいいのに。



――取りあえず目を開けろよ。お前の手下どもの戦いだろ。



 言われて目を開ける。光と共に目に映るのは二つの集団の戦闘。勇者と『セイレーンの歌声』の戦い。



――・・・・・・なんで戦ってるのよ。



――勇者一行 VS セラを庇う怪しい集団ってとこか。お前にもそう見えるだろ?



――・・・・・・・・。



――あいつら全員お前を守るために必死になってる。お前に死なれちゃ困るってよ。おまけにヒメやアーシェまで庇う始末だし、余程人望があるんだろうな。セラって女は。



――違う。馬鹿なだけよ。



――なのにお前ひとり悟ったように、死を受け入れている。むごい話だよな。必死で助けようとしているのに本人が死にたがっているんだから。



――違う。ひどいのは向こうよ。助けてなんて頼んでないのに。



――お節介か・・・。お前もいつまでも絶望にうちひしがれたような顔して、いい加減気づいたらどうだ?



――何に?



――あいつら全員、お前が死ななきゃ強くなれないような世話の焼けるガキじゃねえよ。お節介をしているのはお前の方だ。



――違う。



――証拠が必要か?確かお前らは龍の炎に一瞬でやられたんだったか。



――?



――究極魔法は使えないが、似たような状況なら作れるだろ。



――やめて。



――やめねえよ。ちゃんと見てろよ。お前の仲間が足掻く姿を。お前の犠牲なんて全くの無駄だってことを。




 こちらのマイケルがそう言うや、戦闘中のもう一人のマイケルを中心にして黒い水が噴き出る。


 それは、瞬く間に皆を飲み込む。


 それを目の当たりにして叫ぶ自分を、マイケルは静かに見つめながら剣を抜く。


 けれどそれをセラに向けるだけで、決して振りかざそうとはせずに、そのまま無事だった皆に見つかり追い立てられるように下がっていった。


 皆は無事だった。それがなによりの証拠だと、そう言わんばかりにセラに事実を突きつけて。










――勝利条件達成!


 歌声により鼓舞された冒険者集団との戦闘中、敵陣深くに入り込み捕縛されているセラと接触したオーマは、それで十分とばかりにヒメのもとに戻ってくる。


 戦斧を片手に振り回しアーシェと打ち合っていたガウェインだったが、オーマが戻ってきたことにより挟撃を警戒したのか、アーシェと距離をとって仕切り直す。ガウェインの攻撃に合わせてアーシェを包囲するはずだった冒険者達はフィブリルが狙われたことでフィブリルの護衛にまわっている。今付近にいるのはオーマとアーシェとガウェイン。限定的な二対一の形だ。


「まさか、お前が忍者だったとはな。マイケル」


 ガウェインの浅黒い肌を脂汗が伝い落ちる。息も荒い。それほどアーシェとの戦闘は激しかったのか。


「ボケは一つに絞れ。俺は忍者でもなければマイケルでもない」


 マイケル、もといオーマはヒメに指で頬をぐりぐりされながらガウェインに応じる。マイケルと名乗ったのは自分なのだが、都合の悪いことは無視するいつものオーマである。


「なら改めて尋ねよう。お前は何者だ」


 表情を歪めつつ尋ねてくるガウェイン。その視線は覚束ないようで、その目にオーマを捉えているかさえ怪しい。どうも疲弊し過ぎている気がする。


「俺か?俺は―――」


「おじ!」


「・・・・・!」(ご主人!)


「ロリコン大魔王!」


 答えようとしたオーマの名乗りを三つの声が得意気に邪魔をする。アーシェの声は聞こえないだろうから、「おじ・・・・・ロリコン大魔王」と聞こえたはず。


「つまりどういうことなんだマイケル。説明しろマイケル」


 俺にだってわかんねーよ。しかしそれを言って混乱させる意味もない。


「呼び名はオーマ。本名は不明。正真正銘、勇者だ」


 俺なりに正確に自己紹介する。


「なるほど」


 ガウェインは納得する。何に納得したのか気になる。


「そんなことはどうでもいいですマイケル。目を合わせてくださいマイケル。さっきの魔法はなんですかマイケル。あんな禍々しい魔法、私知りませんよマイケル」


 なにやらヒメが詰め寄ってくる。憤りのためか語尾がマイケルになっている。


「覚えたから使ってみたマイケル」


 俺も真似してみる。


「あーそうですか。そういうこと言っちゃうんですか。なら私はよくわからないまま何をしちゃいましょうかねー。お互い様ですもんねー」


「悪かったって。でも結果的に誰も被害に遭ってないだろ。究極魔法を使ったわけでもないし」


「結果論で語らないでください。全員即死だって有り得たんですよ!そんなことになったら経験値がもったいないじゃないですか!」


「・・・・・。」


 げにげに、とアーシェも頷く。


「論点がおかしくないですか」


「だよな」


 リーナとオーマは理解できない。ぱっくり別れた価値観は一体何の差なのか。


 そんなこんなで使った即死魔法だが、アーシェを追うために鬼を倒した後、レベルアップで覚えた魔法のうちの一つだ。多分アーシェが『おっちゃんLv98』なんてものを生み出したせいだと思うが、これまた知らない魔法が増えてしまった。


 同時に『魔法剣士』でレベルアップしたことで、元のステータスが高いことにも気付いた。どうやら『勇者』や『おっちゃん』でレベルアップした分、ステータスの底値が上昇しているようだ。


 Lv7の魔法剣士であってもこの場にいる冒険者達と渡り合える程度の強さはある。確実に成長していることが実感できた。


 十分な成果だ。


「まったく。正直に言ってください。今の戦闘の勝利条件は何だったんですか」


 ヒメに勝利条件を聞かれたオーマは、隠すことなくそのままを伝える。


「『敵の全滅、もしくはセラに隣接するマスへのオーマの侵入』」


 そしてその条件は既に満たされている。


「ああ。それでセラさんの傍に行ってすぐに帰って来たんですか」


 リーナがオーマの不可思議な行動に納得を見せる。


「勝ったらしい」


 マスの意味はよくわからなかったが「隣接する」にだけ着目し実行したことで、早期決着を成し遂げた。誰も傷ついていないヒメの望み通りの決着。文句の言い様がないはず。


「そんな勝ち方したら経験値がもったいないじゃないですか」


 なのにヒメは憤っていた。


「お前の怒りがよくわからない」


「むー」


 経験がどうとか言っているが、 どうもヒメは別のことでむくれているらしい。しかしその理由を言われずに察せるほど、俺の思考はとち狂っていない。


「本音を言ってくれ」


「いつから分身していたんですか? 気付けなくて悔しいです。慰めてください」


「よしよし」


「えへへぇ」


 チョロ1。


「ずるいです。アーシェも何か言ってやってください」


 ヒメの頭をなで始めたオーマに対しリーナが抗議を始める。指名を受けたアーシェが任せろと言わんばかりにオーマに近づく。


「・・・・・。」(褒めて)


「よしよし、アーシェも頑張ったな」


「・・・・・♪」


  チョロ2。


「私だけ何もなしは不公平ですおじさん!」


「はいはい」


「ほわ~」


 人差し指でこねくり回されてリーナも満足げだ。チョロ3。


「手慣れましたね」


「ほっとけ」


「でもなんで気付けなかったんでしょう。前は気付いたんですけど」


「今回は少し違ったからな」


「え?」


「分身を作ったのは向こうさんが煙幕を出してくれたとき。ヒメが分身に気づけなかったのは、俺が分身と意識を共有化していたからだろう。分身もある意味で本物だったというわけだ」


Σ(゜ロ゜)

「それって・・・」


 ヒメがはっとした顔をする。気づいたか。


 あの『分身Ⅳ』は、意識だけではなくMPも共有していた。その二つの意味はとても大きい。


「ああ、分身の可能性が広が・・・」

「二人三ピーも夢ではないということですか!男女男おーまひめおーまですか!」


「・・・・・・その度々出てくるおやじ臭さは一体なんなんだ」


 どこまで俺と相容れないつもりなんだ。


 割りと本気で引いているオーマの様子に気づいたのか、ヒメはキラキラさせていた目を閉じて、咳払いをする。


「こほん、オーマの調教の賜物ですよ?」


「嘘を吐くな」





「おじさん、漫才やってる場合じゃないかもしれませんよ」


「は?」


「後ろ、見てください」


 ヒメの方に意識を全振りしていたオーマはリーナに言われて後ろを向く。


「勇者と、言ったな」


「ああそうだ」


 振り向いたオーマにガウェインが語りかけてくる。その図体がぶくぶくと泡立っていた。


「ガウェイン!」と誰かの叫ぶ声が舞台の方から聞こえてくる。


 予想外にも切羽詰っているようだ。その割に俺たちの会話が終わるのを待っていたようだが。


「なら、頼みがある」


 初めに、ガウェインの左腕が爆発したように膨れ上がり皮膚が裂ける。皮を剥がれた腕が鮮血に染まり、鬱血したように紫に染まる。左腕だけが巨大化したためにガウェインがよろける。


「頼み? ・・・・お前たちだけでケリを付けるんじゃなかったのか?」


 次にガウェインの右足が膨れ上がる。左腕と同様に巨大化するや紫に変色していく。バランスを崩して倒れ込もうとしたガウェインを支えるように今度は左足が肥大化する。


「なに、簡単なことだ」


 ぼこぼこと泡立ちながらガウェインの体を呑み込んでいく紫の変化は、やがて胴体を肥大化させ鎧を飲み込む。人を離れていくその姿は禍々しい紫の巨人となる。


 残るのは顔と右腕だけ。首へと上がっていく痘痕のような膨らみが頭を呑み込む前にガウェインは告げる。


「俺ごと殺せ」


 やがて、その顔も、戦斧を手放した右腕も紫の泡立ちに変わっていく。


「ひっ」


 リーナが息を飲み込むのを聞いて注意が遅れたことに気付く。こんなものを見たらリーナが自身のかつての惨状を思い出しかねない。まったく・・・。情操教育によろしくない。


「目を閉じてろ」


「はい!リーナちゃん目を閉じます!」


 もはやガウェインの面影を残すものを失くしたその巨体は一際大きく波打ったかと思うと肉体が硬質化した。ガウェインの顔があった部分がてかった拍子に笑って見える。


 そしてどこからか発せられた声は女性のもののように聞こえた。


『ごちそうさまでした。ふふ』




 そびえたつ巨体の左上の方に文字が浮かび上がる。



 心に巣喰う魔女

    ―――――――――――――――

       マインド・イーター

    ―――――――――――――――



 ご丁寧に紹介文だろうか。


「心に巣喰う魔女、マインド・イーター」


 オーマが読み上げる声がヒメとアーシェの耳に届く。


「魔女ですか。ともあれ状況は明白ですね」


「・・・・・。」(こくん)


「どうしろと?」


「BOSS戦です」


「・・・・・。」(倒すのだー)


「まあ、そうなるんだろうな。お前は戦うなよ、ヒメ」


「えっ、またですか?」


「治ってないんだから当然だろ」


 こちとらお前を休ませるために手っ取り早く終わらせてるんだよ。


 さて。


 オーマが聖剣を抜き、アーシェが槍を取り出す。


 気力は十分。連戦だが負ける気がしないな。




『はあー。とても美味しかったわ。これだから戦争っていいわよね。黒く濁った汚い感情がそこら中で渦巻いている。魔王にはもっと頑張ってほしいわあ』


 紫の巨体の腹あたりに口のような凸凹が出来上がり、くぱくぱと言葉を発する。


『セラもガウェインもいい感じに闇を持ってくれて、とっても美味しいの』


 口に続いて頭の部分にぎょろりと二つの目が出来上がる。開いたその瞳孔は紫に色づいている。それはゆっくりとオーマ達に向けられた。


「お前がセラを操っていたのか」


 オーマがその巨体を見上げながら確認の意味も込めて尋ねる。


『あら気づいていたの?』


「セラは死を望んでいた。なら死ねばいい話だ。余計なことをする必要はない」


『それもそうね。けどマイケルだったかしら、あなた駄目でしょう?折角美味しそうだったのに硬い殻で覆われてちゃ食べられないじゃない』


「は?」


『自分のことは気づいていなかったの? ひどいわ今までずっと一緒に居たのに』


 そう言われて思い至る。何故ガウェインは、今になって変貌したのか。俺と目を合わせた後になって。


「俺の中に、入っていたのか」


『違和感はなかった? 本来疑うはずのない相手を心底疑ったり、殺すほどでもない相手に殺意が沸いたり・・・・・、本当に無かった?』


 無かった、とはいえない。だがあれは間違いなく俺の意思、思考だ。


『わたくしはそうやって人の心に潜み、歪んだ考えに誘導するのが大好きなの』


「じゃあ、オーマの様子がおかしかったのはそれが理由だったんですね」


 ヒメが納得したように頷く。俺がした言い訳を大して信用していなかったようだ。だが本当にそれが真実なのだろうか。


「いつから。いや・・・・、あの路地裏でか」


 フィブリル(セラ)とアーシェと俺の三人で入れ替わったあの時、俺の体に入ったのだろう。ならその後に起こったというアーシェの自分殺しはこいつのせいか。傍目には俺がアーシェを殺したという事件は、俺の体にアーシェと共に入っていた魔女が、解放してしまったセラの宿ったアーシェの体を始末したのだと考えれば辻褄はあう。


 だがセラの宿る体がダメージを受けたことで入れ替わりが解けてしまい、俺の体に俺の精神が戻ってきた。それから魔女は俺の中で潜伏を続け、今しがたガウェインに乗り移り、こうなった。乗り移った切っ掛けは目を合わせたことだろうか。だが何故俺の体にいるときにこうならなかったのか・・・。魔女の言う殻があったせいだろうか。


 一つ情報が得られただけで随分と推測がはかどる。思考がすっきりしていた。


『マイケルもそうだけど一番おいしそうなヒメは触らせてもくれない。もっとオープンなくらいで丁度いいのに』


「私を食べていいのはオーマだけです」


「・・・・・。」(わてもー)


 ヒメがおいしそうだと? 路地裏でヒメを狙った理由を、セラは目が綺麗だったからと言ったが、こいつはこいつで狙う理由があったらしい。そしてその理由の方が動機として正しいのだろう。その時、セラの心に潜み思考を掌握していたのがこの魔女だったのなら。


『そろそろ自己紹介しようかしら。私はかつて紫の魔女と呼ばれた良い魔女。まあ今となっては魂喰らいと言った方がいいのかしら。お察しの通り、怒り、悲しみ、絶望、嫉妬、そんな醜くも美味しい心を食べてあげる優しい魔女よ。この体は生前作ったゴーレム、魂の宿る肉体。セラの心を支配した私は、セラが持っていた入れ替わりの力を利用して町の冒険者の暗くて甘ーい心を食べあさっていたの。そして十分に集まったからこうやってゴーレムを発現させられたというわけ。ガウェインを依り代にね』


「丁寧な説明をありがとうよ。おかげでいろいろとすっきりした」


 何も話してくれない仲間よりずっと丁寧な説明だ。


『それは良かった。じゃあそろそろ出てきた理由を言いましょうか。理由は簡単、とっても美味しそうな果実が二つも並んでいるのに我慢できるわけないじゃない。でも二人とも心が堅すぎる』


「俺とヒメか」


『だからまず殻を割ろうと思いました。だからお二人とも、死んでください』


 魔女は紫の巨腕を振り上げる。




 今になってアーリアの言葉が思い返される。


――オーマ様が動かなければ誰か『一人』、死ぬ。それは事実です


――オーマ様が何もしなければ、『人』が、死にます。なら、助けるのが勇者としてすべきことではありませんか?


 一人。人。それはどちらも人間を指し示す言葉で。


――オーマ様。救ってください。あなたが勇者であるというのなら。失われようとする命、その全てを。


 勇者として救えというのなら。



――マインド・イーターが現れた!



 『これ』は、人間には入らない。





勝利条件:マインド・イーターの撃破

敗北条件:味方ユニットの全滅



「わかりやすいな」


 開幕速攻。オーマが剣身を撫で、アーシェは地面を蹴ってゴーレムの脚につっこむ。始め、の合図はいらない。ゴーレムが腕を振り下ろすより早くオーマ達の攻撃が届く。


「『黒炎斬』!!」


「・・・・・!」


 999


 999

 999

 999

 999

 999

 999

 999

 999

 999

 999



 打ち付けたオーマの聖剣とアーシェの槍先が硬質な紫の肌に突き刺さり突き抜ける。コウモリ相手に猛威を振るった魔法剣技、血しぶきを舞わせていたアーシェの乱舞は、ここでもあっさりボスのHPを削っていく。


――マインド・イーター【脚】を倒した!


『あら?』


 脚に衝撃を受けた巨体はバランスを崩し、傾く体を止めるために地面に両手を付く。1ターン目、終了。更にオーマ達の攻勢は続く。


「『ライン・ボルト』!」


「・・・・・!」


 オーマが向けた手の平から、雷が高速でゴーレムの手に向かう。更に同時詠唱による『炎球』『アイスランス』が追撃する。もといた空中から急速落下したアーシェはその勢いのまま槍を地面に突き立てる。地面に流れた魔力が指向性を得て、二本の脚と二本の手で立つゴーレムの体で回路を作り、高圧電流を流し込む。


 999


 409

 378


 687


――マインド・イーター【腕】を倒した!


『おやおや?』


 焦げた臭いを発しながらゴーレムの腕は力なく崩れ、体はどさりと地に横たわる。


 これで頭が地面の高さまで降りて来た。2ターン目、終了。


 ダウン状態で身動きの取れないゴーレム。攻撃しやすくなった。



 824

 999

 999

 999

 522

 999

 999

 999

 999

 999

 544

 366

 999

 999

 999

 206

 999

 999

 999

 866



 それからずっと、剣と魔法と槍が入り乱れては舞い乱れる。


 そしてゴーレムが体勢を建て直そうとする直前に。



 ピコーン

  ピコーン


 『剣気解放』が可能であることを知らせる効果音が鳴る。


 二つ同時に鳴った。それだけを合図に、二人は同時に同じ行動をとる。


「『剣気解放』!!」

「・・・・・!!」


「いくぞ、アーシェ」


「・・・・・。」(こくん)


 ついでのように奥義を決めたオーマが呼びかけアーシェが頷く。


「数多の雷槍、降り注げ」


「・・・・・。」


「・・・・・・」


「・・・・・。」


 やっぱり何も言ってくれない相棒と背中合わせにオーマは終劇の一打を放つ。


「これでとどめだ」


「『アマツミカヅチ』!!!」

「・・・・・!!!」


 無数に現れた雷槍とオーマの分身が一つに交わり神槍となり、あっさりとボスの頭に突き刺さり、突き刺さり、突き刺さる。


『・・・・・・・あ、ああ、ああああ、ああああああああ』


 魔女の頭は黄金の光に貫かれて、内側からはちきれるように吹っ飛んだ。


――マインド・イーター【頭】を倒した!





「やったな」


「・・・・・。」(こくん)


 ぱちーん。


 気持ちよく手を打ち合わせた。


「私の時よりコンビネーションが良い気が」


 ヒメがショックを受けていた。



 ―――だが。



『無駄よ』


 勝利を確信したオーマに冷ややかな声が浴びせられる。


「はあ?」


 弾け飛んだはずのゴーレムの頭部の肉片が蠢いたかと思うと瞬く間にもとの巨体に逆戻りする。


『知らないのかしら。ゴーレムって不死身なのよ?』


「めんどくさっ」


「・・・・・。」(来る)


 アーシェに注意喚起されオーマは攻撃に備える。


『吹き飛びなさい』


 そして振るわれた剛腕はオーマとアーシェを易々と薙ぎ払った。


 その衝撃は凄まじく、オーマ達に・・・。


――オーマに1のダメージ!


――アーシェに1のダメージ!


「?」


 全く効いていなかった。





「あれ、もうそんなに」


 ヒメは一人オーマの成長に驚く。ボスの攻撃が毛ほども効かないというのは、それだけストーリー上、異常な成長をしていると言っていい。


 ケルベくんを倒したり、ゾンビを千体ほど倒したり、盗賊狩りをしたり、確かにレベルが上がる理由には事欠かないが。


 また、戦おうかな。




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