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カグアの魔眼(Ⅶ)


 ミツメの町の象徴たるギルド本部。その役割は、日夜発生するクエストを適当な人員に割り当てスムーズかつ効率的に人々の需要を解決することにある。その中で少女は、クエストを要請する依頼者側とクエストを攻略する冒険者側とを繋ぐインターフェイスとして、受付嬢をしていた。


 背の低さからカウンターに届かない彼女は特別な事情のない限り話しかけられることは無い。そのため平常時は安穏と佇んでいるだけのかかしである。しかし平常時でなければその限りではなく、その日少女は踏み台に乗って胃を痛くさせつつ周囲を見渡していた。


 そして少女は目的の人物を見つける。


「ガウェイン、あの、その、すみません、いいでしょうか・・・」


 厳めしい顔をした壮年の男性に、少女は意を決して話しかける。その男性はギルド『漆黒の戦火』を率い数々の武功を上げてきた最強の冒険者、といえなくもない優秀な戦士だ。


「なんだ」


 クエスト報告の帰りにおどおどとした声に呼び止められ、ガウェインは通り過ぎようとしていた中央の受付へと足を向ける。何用かと訪れたガウェインに少女は用件を伝える。


「あなた達のギルドに要請したいことがあります」


 少女の声は二言目にはしゃきっとしていた。おどおどタイムがいつもより短いことに気付いたガウェインが不吉なものを見る目をする。


「先の魔王の世界征服宣言は知っていますね」


「ああ、知っている」


 知らない者はいないだろう。おそらく人族全ての脳内で発せられた、「これから世界征服することにしたんで、よろしく」という、なにをよろしくしろと言うのかと言い返したくなる魔王の宣言。それが冗談で済めばよかったのだが、魔王軍の侵略は今現在をもって明らかな脅威となっていた。


 ここでそれを言ったのは、これから少女がする話がそれに関連するものだということを意識してもらうためだ。


「それがいよいよ現実味を帯びてきました。というか国軍による前線は総崩れ、瞬く間に魔王軍は領土を侵して来ています」


「そうか」


 変化のない表情でガウェインは頷く。いつもはそれが冷静に映り頼もしいと感じるものだが、今は不安に強張ったようにも感じられる。それだけ少女自身がこの件を重く受け止めているのだが。


「よって、ここにギルド本部長の名のもとにクエストを発注します。『魔王討伐クエスト』、過去最難関のクエストとご理解ください」


「それを俺たちに受けろというのか」


「はい」


 話が早いのはガウェインらしくあるが、このクエストを受ける意味についてきちんと理解できたのだろうか。


「それは、俺たちにふさわしいクエストなのか?」


 いつもはしない質問をガウェインはする。どうやらきちんと伝わっているようだ。そしてこの質問には正直に答えることにしている。でなければそもそもこのクエストを託すこと自体が死刑宣告になりかねなかった。


 説明したところで変わらないとは思いたくない。


「いいえ。まず成功はないと思っています。難易度は推定不能。あなた達の戦力では良くて失敗、悪ければ全滅もあり得ます」


「なら何故それを俺たちに受けさせようとする?」


 普段であれば、そんな身の丈に合わないクエストは受けさせない。それが少女の役割でもあった。それを名指しで受けさせようというのだから、それだけの意味がある。


「あなた達を現在の最強ギルドと見込んだからです。あなた達が魔王に敗北して初めて我々の勝率はゼロになる。そうなってようやく勇者は現れます」


 勇者の誕生は必ずしも敗勢を理由に成るものではないが、現代の主流である勇者召喚の儀式は王による主導であり、王が勇者召喚の必要性を認めなければ行われない。


 そのきっかけ、時代の雄の敗北を以てして王が勇者の必要性を認めるというのは歴史的に見てもままあることであった。


 そしてこの度、その時代の雄にギルド『漆黒の戦火』が選ばれた。少女が選んだ。


「勇者を呼ぶための生贄か?受けないといったら?」


 少女はガウェインの例えばを当然のものとして回答する。


「クエストを受けるものがいなければ魔王軍の進撃はとどまらずこの町を含めた多くの町が戦火に包まれます。ですがあなた達がクエストを受け、敗北を早めてくれればそれだけ勇者の誕生も早くなり、多くの町が、そして人間が救われます」


 ガウェインはその理論を前にして、呆れることなくそれ程にまずい状況なのだと解釈した。


「その敗北というのは、単なる逃亡では済ませられないのか」


「もはや立て直せないほどに完敗でなければなりません。つまり、人族のために死んで来てください」


「はあぁぁ・・・・・・・」


 ガウェインは今まで聞いた事もないほど深くため息を吐く。ガウェインはこの無茶ぶりを一蹴できなかった。出来ないだけの信頼が少女に対してあった。少なくともガウェインが冒険者として身を立て、それなりの名声を得るまでの間ずっと、少女はこの受付に立ち、殉職者を一切ださないクエスト管理を行ってきたのだ。


 それだけの信頼が、それだけの重みをもたせていた。


「少し、時間をくれ」


「構いませんがそれほど時間はありません。それと、この件は他の方には伝えないでください。士気に関わります」


「っ!? 何も言わず死地へ送れというのかっ!?」


 ガウェインの怒声にギルド本部内の注目が一気に集まる。それだけガウェインが大声を出すことは珍しかった。


「はい。死ぬと思って戦いに赴くよりも、勝つために戦い抜いた方が、より絶望的な敗北になります」


 少女は声を潜めることもせず、秘密話を続ける。


「その業を俺に背負えというのか」


「・・・・・無理にとは言えません。あなたのギルドです。最後はあなたに任せます」


「・・・・・・また来る」


 何かを言おうとしたガウェインは言い淀んで、結局一言だけを言い残して踵を返して去っていった。


 ガウェインが消えた背後で、少女はまたカウンターの裏に隠れた。






 翌日、ガウェインはギルド本部を訪れる。


 覚悟を決めた顔だった。その両頬には微かに紅葉の跡がある。フィブリル辺りに相談したのだろうか。話すなとは言ったが任せるとも言ってしまった。それに・・・責める気にもなれない。


「クエストを受ける。『魔王討伐クエスト』を」


 『魔王討伐クエスト』は特別クエストに分類される。ガウェインしか受けられないため、その受付は少女の立つ中央の受付となる。


「ありがとうございます」


 少女は予め用意してあったクエスト受注書を差し出す。


「・・・・この協力者は?」


 受注書に記された、セラ、ユタなどの『漆黒の戦火』ではない人名を見つけてガウェインが尋ねる。


「少しでも戦力の足しになればと要請しておきました。彼らには何も伝えていませんが、外すことは出来ません。強制で連れていくことになります」


 ガウェインは苦虫をかみつぶしたような顔をする。協力者がいれば戦力は増し、それだけ仲間の生存率が上がる。だが、その協力者もまた死の危険に晒されることになる。


 だからガウェインは協力者を募らないだろうと、そう判断した少女が独自に要請しておいたのだ。


 協力者とギルドの仲間。どちらかを犠牲にする選択をガウェインがする必要はない。


「私の采配です」


「それでどうなる。俺の仲間は生き残れるのか?」


 身勝手に矢面に立とうとした少女にガウェインの皮肉が突き刺さる。


 黙り込む少女の前でガウェインは協力者全てにチェックを入れていく。本来であれば連れていくという意思表示。その行為をすることで数十人に及ぶ協力者を一人一人確認しているようだ。


 その間を埋めるように、ガウェインが話題を振ってくる。


「・・・お前は、漆黒の戦火の由来を知っているか?」


「いいえ」


「十年も前、俺の故郷は炎に包まれて無くなった。原因はわからない。突如あちこちで火の手が上がり、瞬く間に炎が村を呑み込んだ。その炎は村人をすら呑み込み、今いる数人の仲間を残して大勢を死に追いやった」


「ミツルギ村でしたか」


 北方にあった小村だ。高名な剣士が開く道場一つで観光紛いの収入を得ていたが、ガウェインの話す大火事によって村は人口の大半を失った。道場の主も火の中に消えたために、ミツルギ村は自然な成り行きで消滅することとなった。


 世間話には重い話だ。


「今でも覚えている。村を包み込んだ赤い炎を。漆黒と呼ぶにふさわしいその焼け跡を。俺たちは忘れられないんだ。あの時の炎を。炎の中に消えていった家族を、友人を。だから、あんな光景を二度と見たくないと願った」


「だから炎を、より強い炎でかき消せるようにと、この名を付けた。俺たちの戦いの炎が昔の仲間への手向けとなるように」


「そうでしたか」


「故郷を失い流れ着いたこの町で死に物狂いに戦って稼いできた俺たちにとってこの町は第二の故郷だ。だからこの町が戦火に包まれるのをおめおめと見過ごすつもりはない」


「はい」


 ガウェインは協力者のチェックを終え、記入全てを終え羽ペンを置く。


「そして、もう二度と仲間を失うつもりはない。期待に添えず悪いが、このクエスト、必ず成功させて全員無事で戻ってくる。お前にはなんの責任もない」


「はい」


「明日出発する。せいぜい派手に見送ってくれ」


「はい・・・・・」


「・・・・・・聞いているのか?」


「・・・・、ごべんな゛ざい・・・・・ひっく」


 少女は泣きじゃくっていた。最後まで見せたくない涙だった。


「縁起でもないな・・・・・」


 ガウェインは記入を終えた受注書を差し出す。それを少女は鼻水涙まみれになりながら受け取った。


 最後まで報酬の話はしなかった。


 受注書の報酬欄にはギルド本部が出せるありったけの金額が記されていた。






 そんなことをシーファが記入し終えた受注書を受け取るまでに思い出していると、シーファは不意に尋ねて来る。


「最初あんた想定の範囲内ゆーてたけど、どこからどこまで想定してたん?この受注書も想定してたから用意できたんやろ」


 その問いに少女は言うかどうか迷うことなく、ほんのわずかだけ答えることにする。


「・・・・かつてない重要クエスト、その結果が失敗で、仲間が大勢死んだとなれば不満は募って当然です。今回その不満を爆発させたのがたまたまセラだった。セラの行いは起こるべくして起こったのです。それが先ほどの想定の意味です。ここまではガウェインもフィブリルも予想していたでしょう」


「二人ともわかっとったんか」


 妙な余裕がフィブリルから感じられたのはそういうことだったのかとシーファは納得する。


「そしてこの事件を勇者様が解決して一件落着です」


「はあ?勇者? そんなええ加減な・・・」


 少女の『想定』の〆が勇者様にぶん投げである。シーファが呆れるのも無理はなかった。


「そういうことですから、ちゃんと連れてきてくださいね、シーファ」


「・・・・・・へ? あ・・・・・う・・・・、うちが連れてくんの!?勇者を!?」


「はい、そうですよ。この件を解決できる力のある方なんて勇者様ぐらいだと思います。諸注意ですが勇者様に名乗るときはセラを名乗ってください」


「なんで?」


 少女の奇妙な要求にシーファは首をかしげる。


「シーファが出発した後でセラの指名手配を行います。そうすればあなたをセラだと思い込んで捕まえた勇者様はこの町にクエスト報告しに来ることになります。そしてセラとして投獄されたシーファを冤罪で解放できます。さらに勇者様が本物のセラを捕まえる理由にもなります」


「うちの役割餌やん!?犯罪者やん!?連行されとるやん!?」


「そうですよ?」


 ついでにセラの体であるフィブリルも捕縛、もとい保護できる。


「いけしゃあしゃあとゆうなあ!?」


「ちゃんと逃しますし。場合によっては冤罪に気付いた勇者様と一緒に逃げていただくかもしれません」


「あーもう、わかったわかった。あんたの深謀恐れ入りました!でもな!うちの親しみやすさ舐めたらあかんで!勇者と仲良うなって仲間になったるからな!」


「そうはいっても勇者様がこの町に来るかは運次第です。来ると良いですね・・・本当に」


 その時初めて少女はシーファにも分かるように遠い目をしてみせた。


「それでも行けいうんやろ。わかったっちゅーねん。あーそれと報酬の件やけどな」


 このクエストの報酬には、人を捜して連れてくるだけの仕事にしては破格の額が用意されている。それでも不満だというのか。


「金はいらん。そん代わりこの町をちゃんと守ってや。それでちゃらにしたる」


「はあ、そうですか」


「え!? 今めっちゃ格好ええこといわへんかった!? うち!」


 少女の反応が薄いことがショックだったらしくシーファはなにやら喚く。


「ええ、いってらっしゃい」


「あれえ!?」





 シーファはクエストを受けるとギルド本部を、そしてミツメの町を後にする。


「行ったようですね」


 少女はほっと息を吐く。


「報酬、浮きましたね」


「貧乏盗賊の癖に見栄張っちゃってぇ」


「相変わらずからかわれて輝くバカですね、シーファは」


「そういうことを言うものではないですよ。それと早速セラを指名手配しておいてください」


「はい」


 少女の指示にクエスト担当受付嬢はさっさと作業を始める。


「ウォンテッド、ウォンテッド。デッド・オア・アライブ」


「アライブ限定でお願いします」


「訂正訂正」


「勇者はいつ来るかなぁ」


 頬杖をついてその逆側の受付嬢が物憂げにつぶやく。


「流石の王もこの惨敗の報を受けては重い腰を上げるでしょう」


 敗走の報はとある手段で既にリアン国王に届いている。


「召喚されて一週間ほどでこの町に来るはずです」


 早ければ一日で。遅ければ魔王を倒した後で。


「一週間ですか。それまでこの町が残っていると良いですね」


「残しますよ。そのための彼らの死です。絶対に無駄にしません」


 あれがただの敗走ならすぐにでも魔王軍が攻めてくるだろう。だか、それが捨て駒であったら?次の攻めにつながる一手だと、そう魔王軍に思わせられたら?


 こけおどしでも、空城の計でもなんでもいい。あの忌まわしい絶対的敗北をあらゆる手段で利用して、この町を、民の希望を守る。それが、知っていながら彼らを死地へ向かわせた私の役目だ。


 だから今は。


「そろそろカウンターの下に隠れてもいいですか」


「駄目です。次の方が来ていますよ」


「え?誰ですか?」


「わたくしです」


 微笑みを浮かべカウンターの前に立っていたのはフィブリル=ガルード。


「ああ」


 セラであった。


 まさに少女が死地へと向かわせた犠牲者だ。





「わたくし歌姫をリーダーとする『セイレーンの歌声』の設立を宣言します」


「ギルド設立なら向かって右のカウンターでお願いします」


「ですか」


「です」


「はあ。相変わらず面倒な仕様ですこと」


 そう言って右の窓口へ移るセラ。その後ろに立つのはガウェインとセラ(フィブリル)の二人。


 二人に向かって頭を下げる。けれどガウェインは首を振り、フィブリルは肩を竦めてそのままセラの後に続く。


 二人はどうなるかもわからないセラの蛮行に付き合うのだろう。あの魔王討伐クエストがほぼ確実に失敗すると知っていたからこそ、セラの現在に責任を感じてしまっている。本来責められるべきは私であるはずなのに。


 それでもその根底にあるのは罪悪感だけではないはずだ。


 セラは、自分がまだすべてを失ったわけでは無いと、気付くのだろうか。




「ギルド設立には五人のメンバーが必要ですぅ」


「え?三人じゃ・・・」


「五人ですぅ」


「そ、そうだったわね。おほほほほ」


 物思いにふけっていると少し不可解な会話が耳に入る。そう言えばギルド設立時に必要な人数を三人から五人に変更したのはいつだったか・・・。確か・・・百年以上前だった気がする。


(じゃあ、あれは)


 セラの覚え違いと言えばそれまでだが、少し警戒が必要かもしれない。


「フィブリル、この場で歌ってみてはどうですか。そのまま募集すればギルドに参加してくれる人もいるでしょう」


「よろしいの?」


「よろしいです。フィブリルの歌は私も大好きですから」


「そうだったの?」


 セラ(フィブリル本人)がにやけながら聞いてくる。それを「方便です」と表情で返しながら、少女はセラに歌披露を勧める。


「それではお言葉に甘えます」


 そしてギルド本部を包み込んだ歌声は、美麗な歌詞と相まって失意に落ち込んだ冒険者たちを勇気づけた。それに気をよくしたのか町のあちこちで歌うことにしたフィブリルの評判は鰻登りに回復したのだった。




「ガウェイン。良いですか?」


 歌うことに夢中になっているセラをよそに少女はガウェインに呼びかける。


「ああ。なんだ」


 ガウェインは歌っているセラとそれを見つめるフィブリルを視界に収めながらカウンターに肘を置く。


「セラを常に見張っていてください。少々気がかりです」


「どういうことだ?予想していたんじゃないのか。セラの暴走を」


「そのつもりだったのですが。本当にまずくなればあなたの意思で止めて下さい。あと、もし動きたいと思ったら私に知らせてください。あなたが自由に動けるように手配します」


「そうか」


「しばらく気苦労をかけます」


「覚悟の上だ。俺も、フィブリルも」


 それからは二人とも静かにセラの歌に聞き入る。




 

「はっ!?そうだシイ!」


 なにか思い出したようなフィブリルがガウェインを押し退け少女に詰め寄る。受付嬢をABCと呼び始めたのは彼女が最初だ。


「シャルを見つけたら連行するの!」


「シャルロットをですか?どうして」


「あいつ絶対なにか知ってるの!セラとも直前まで会ってたらしいの!」


「ですが彼女はリアン城に向かったので、この町には居ませんよ?」


「なんで?」


「勇者に協力しに行くそうです」


「あいつがそんな殊勝なタマなわけないの!逃げたに違いないの!」


「そこ!わたくしの歌を聴きなさい!」


 ヒートアップするフィブリルに、気持ちよく歌っていたセラが叱責を飛ばす。


「「「アンコール!アンコール!」」」


「え? ・・・もう、仕方ないですわね」


 だが、聴衆に続きをねだられると満更でもないようでセラはアンコールに応じる。


「一応指名手配はしておきます。ですが捕まらないでしょうね」


「どうして?」


「彼女を捕まえられる人間も、捕まえようとする人もそうはいませんから。それに」


 人族一の魔法使いの呼び名は伊達ではない。彼女の魔法の才に片鱗でも触れたものならそれを疑うものはいないだろう。そして自分たちの敵う相手ではないと知る。


 そうでなくても。


「あの子は良い子です」


 少女は胸を張って言う。断言する少女にフィブリルが詰りの目を向ける。


「シイが誰かを悪い子と呼ぶのを聞いたことがないの」


「みんな良い子ですから」


 まるで聖母のような物言いだが、その裏でしていることはお世辞にも善事とは言い難い。


「牢屋の穴を塞いでからそれを言うの」


「ごめんなさい、あれを塞ぐと牢屋が一日で満員になります」


「どこに良い子がいるの」


「あはは・・」


 さりげなく話題を逸らした少女は苦笑いを浮かべる。


 大丈夫ですよ。目に余るようなら殺してますから。




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