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第三十二話 目的

「もう一度、話を戻します」


 不思議と二転三転していた話を再びアーリアが引き戻す。その身は今もオーマの腕の中でくつろいでいる。裏で俺の分身が動いているとも知らずに暢気なものだ。


 くくく、と悪巧みをするオーマであるが、すぐに重大な落ち度に気づく。


 分身には命令がいるのだ。命令がないと分身は動かない。そしてアーリアがそばにいるこの状況では命令しようがなかった。そして迫る制限時間五分。分身は儚く消えていった。


 まあ、なんだ。本題に戻ろう。


「つ、次がありますよ!一度の失敗でめげないでください!」


 何故かターゲットにフォローされた。ばれてたとか、傷口を容赦なく抉ってくる。話を戻さないと俺のスライムメンタルが傷つくばかりだ。頼むからそれ以上触れてくれるな。


「あ、はい!えと、そうです、オーマ様に働いてほしいんです」


 アーリアはオーマの心の嘆願を聞き入れたかのように話を戻してくれた。





「働き口でも紹介してくれるのか?」


 アーリアの目的は、本人が言うにはちょっとした確認と俺を働かせることだそうだ。俺が寝返らないことを確認した今、次の話題は俺を働かせることとなる。


「そうです。お仕事です。時間があまりないですが、とりあえずこの町の背景について説明しましょう」


「何だかんだ説明してくれるんだな」


 時間が無いと言いつつ、アーリアは一見繋がりの無さそうな説明に移る。勇者に説明する義理は無いなどと言っておきながらなかなかの親切心だ。


「オーマ様の為ですから」


「そ、そうか」


 もう彼女の立ち位置がわからない。味方でいいんじゃないだろうか。言い様のない優しさをさっきから感じる。こんな子が一人うちのパーティに欲しい。


 そんなことを考えている間も、アーリアのふさふさな白尾が左右に揺れているものだから、喜んでくれているような気になってしまう。


 そんなアーリアから語られたのは、この町を魔族側から見た場合の分析であった。


「この町、ミツメの町にはギルド本部というものが存在し、その性質上、冒険者が数多く徘徊、あるいは棲息しています」


 言い方・・・。


「そして冒険者の質も高く、必然的にこの町は攻める側の魔族にとっては要害となります。その上、くえすとの形で冒険者の派遣もできるとなれば、戦力の供給地点として他の拠点の防衛力すら上げてしまいます」


 言われて、そういうものかと納得する。まだ戦線は遠いはずだが魔族が攻めこんでくればこの町が重大な拠点となることは想像に難くない。しかし逆に言えば魔族にとっては早急に落とすべき拠点だということである。


「にもかかわらず、何故かこの町では内乱が起こり始めていました。いざこざの結果、強力な冒険者が自由に動けなくなり、近隣の森、塔、洞窟、山、至る所で魔物や盗賊が幅を利かせ、魔族も潜みやすくなりました」


「セラの入れ替わり事件のせいでか。ほんと迷惑だな」


 昨今の治安悪化は魔王のためだけだなく、そういう側面もあったらしい。


 魔王軍に対抗するための戦力集めをしようとして内部に隙を作り火種をばらまくんだから、馬鹿以外の何ものでもない。魔王軍の工作だった方が却って安心するぐらいだ。肝心の戦力集めも同様の点で愚策。火種がくすぶった集団など怖くて使えるはずがない。良くて捨て駒だ。


「そんな状況を魔族としても利用しない手はありません。ですがあまりにも間抜け過ぎて逆に罠の可能性が考えられました。だからもう少し混乱させてみることにしました。外から起こされた混乱に対する反応が見たかったのです。例えば迷えずの森で起きた、魔法の暴発による町の襲撃とか」


「んっ?」


 聞き覚えのある内容に、オーマは単なる傍聴者ではいられなくなった。


「その対処は見事な物でした。たった半日で犯人まで暴いてしまうのですから。もっともその成果はほぼ一人によるものでしたが」


「待て待て、それって、お前たちの策に俺が利用されたってことか?」


「はい。偶然でした。オーマ様が撃った魔法剣技がたまたま町に向かったのです。偶然、オーマ様の魔法剣技が、実は町とは別の方向へ余波を飛ばしていたとしても、町に被害を与えなかったとしても、適当なところでその余波を防ぎ、再び同魔法剣技の余波のみを町に向かって放ったとすれば。それが町に被害を与えたとすれば、その犯人はオーマ様です」


「・・・・・・何を」


「町を救ってしかるべき勇者の破壊活動。どんな反応がされるか気になりませんか?」


 言い方が邪悪に満ちていた。本来起こり得なかった事件を、手を加えて事件にした。そう聞こえるようにアーリアは話す。


「その結果は見事に有罪でした。誰であろうと罪は罪。その点は評価できます。あっさりと牢屋に入れてしまいました」


「入れられてしまったとも」


「次はシーファさんです」


「おい」


 何か言いたそうなオーマの相槌。けれどそんなオーマの怨みに構わず、アーリアは次に進む。


「うち?」


 壁の向こうでしばらく会話から外れ、ツッコみ役だけこなしていたシーファが、急に水を向けられて尋ね返す。


「ガウェインさんとセラさんの入れ替わりに関連するいざこざ。シーファさんはそれをどうにかしようと思いながらも、そのいざこざを解決するだけの力が無かった。だから、盗賊に身をやつし迷えずの森で助けてくれそうな冒険者を探していた。ここまで、あってますか?」


「まあ。そうやけど?」


 シーファはあっさり肯定する。さっきもそんなことを言っていた。


「そんなシーファさんに魔王様と共に少し助言をさせていただきました。もうすぐここにオーマという方が現れるので頼ると良いですよ、と。彼が動かないと、確実に一人、死人が出ると伝えて」


 語られるのはオーマの知らない所での盗賊の首領と魔王の邂逅。シーファの不自然な同行はこれがあったためか。


「あの時の死屍累々の惨状は魔王のせいだったか」


「何のことですか?」


「盗賊とうちのシャルを鏖殺しておいてしらを切るつもりか?」


「ああ、あれは・・・。悲しい、事件でしたね」


「他人事見たいに言うな」


 盗賊と魔王の邂逅、シャルはそれを目撃してしまったのだろう。だから、気絶させられてしまった。しかしそうすると、シャルの記憶が欠落していたのは・・・。


「まあ、そこは重要じゃないので気にしないでください」


「かなり重要なんだが」


「それからのシーファさんの盗賊としての嫌われっぷりは見事でした」


「え?嫌わ・・・れ?」


「見事でした」


「何が!?」


 二回言われた見事の言葉にシーファはまだ物足りなさを感じるらしい。しかしこのままではシーファを貶す流れにしかならないので助け船を出す。話が逸らされる以上に明後日の方向に飛ばれるのは困る。


「で?死人が出るとか、俺が来るとか。なんでそんな助言をする必要があった?」


 シーファと俺の接触で、町に混乱は起きない。むしろ勇者を投入すれば内乱が収まる可能性もあった。アーリアたちがシーファに助言をする動機が無い。そんなオーマの指摘にアーリアはあっさりと答える。


「死人が出たら大変じゃないですか」


「どの口が言うんだ」


「この口です」


 アーリアはすました顔でそんなことを言う。なので試しにヒメにしていたように頬を引っ張ってやると、ヒメほど伸びないにしろ、柔らかい感触が返ってくる。ほどよい弾力とすべすべの肌。これはなかなかいい頬だ。


 まあ、俺も刺されはしたけど結果として死んではいないわけだからその理由も間違ってはいない。けれどそれを受け入れてやるほど楽観視もできなかった。


「なら、内通者にでもするつもりだったのか?」


「シーファさんをですか?まさか」


「なんか知らんけど馬鹿にされた!」


 町の戦力よりも勇者を危険視したからこそ、そこへ送り込む間諜としてシーファを使ったのかもしれない。だが言ったそばから自分で反論を思い付いてしまう。もしそうならシーファと魔王のつながりをここで明かすわけがない。


 ならば。


「一石を投じたかっただけなので、ただの石ころです」


 つまりシーファは路傍の石ころ。まさしく捨て石だったわけである。なるほど。納得が言った。


「・・・・・ええもん、もう、ぐすん」


 とはいえオーマはまだ、本当にそれだけの理由だったのかを疑っている。アーリアもそれをわかっているのか、話を続けた。


「シーファさんは町についたとき不自然な行動をとりました。指名手配されているシーファさんが町に行けば、遅かれ早かれ捕まることはわかっていたはず。少なくとも町に入る前には勇者たちと離別するべきだった。なのに何故わざわざオーマ様について町中にまで入り込んだのか。そもそも何故町長の娘が指名手配などされているのか」


「・・・・・」


 追及するかのごとき沈黙をアーリアが作り出す。俺もまた、確かにそうだと頷きながら沈黙に合わせる。それに対してシーファは無言だった。


 その無言だけの反応を確かめた後、答え合わせでもするかのようにアーリアは自ら沈黙を破る。


「捕まっても、でめりっとがないからですよね。もともとそちら側の人間なんですから」


「・・・・・」


「あなたはギルド本部とつながっていた」


 アーリアの断言にシーファは沈黙を続けた。まるで反論の余地なく図星を突かれたとばかりに。





 なんか図星を突かれた反応に見えるけど俺にとっては「だからどうした」としか言いようがない。


「この町の人間が、この町側の立場で、何か問題があるのか?」


「無い」


「無いですね」


「無いのか」


 二人して一考するそぶりすら見せず言ってのける。なら今の緊張感は何だったのか。


「重要なのはシーファさんの前に魔王が現れたという事件です。シーファさんが引き渡された時、魔王が現れたという報告がギルド本部に伝わった。それが一石です。つまり波紋が生じる」


 アリが餌を見つけて巣に戻った感じか。アーリアが見たかったのはそれからの反応だった。


「そのすぐ夜、セラさん鎮圧が行われました。手近な冒険者とフィブリルさんの体を交換し、ガウェインさんにとっての人質を解放、別方面でセラさんが囲っていた複数の人質も救出。あとは憂いのなくなった冒険者たちでセラさんをりんち。いろいろと誤算はあったようですが、あっさりしたものです」


 それは俺の知っているものと被る内容だった。全てではなくともアーリアの言葉が信用に足る証となる。


「セラの戦力集めは、泳がされていただけってことか?」


「おそらく。勇者の破壊活動に、魔王の出現。混沌としてもよさそうな二つに対し、恐ろしいほどすんなりと対処がなされるのです。混乱、そんなものはどこにもありませんでした。それを鑑みると、隙だらけに見えたミツメの町も、魔族が攻め込んできたところで準備万端、憂いを取り払ったギルド全軍で迎え撃つ。なんて筋書きが有ったのかもしれません」


 どこまでもゆったりと、オーマ椅子に身をゆだねたままアーリアは語った。その内容はまるでギルド本部がこの町全てを利用して魔王軍をはめるための罠を作っていたかのようであった。


 更に恐ろしいのはそれが魔王軍のアーリアによって全て暴かれてしまったことだ。そして、それをここで明かすということが、どういう意味を持つのか。


「もう勝った気でいるのか?」


 情報を手放すのはその情報を使い終え、必要がなくなった時。


「いえ、逆です。面倒なので手を出さないことにしました」


「はあ?」


 もう一つは、機を逸し使い道を無くした時。


「ただでさえ戦線から離れたこの町に限られた戦力を送ったところで、精力的に反抗されるのではわざわざ狙う意味もないのです」


 それは魔王軍四天王による撤退宣言であった。あくまで一時的ではあるだろうが。


「なら最初から狙うなよ」


「全くもってその通りです。最初から小細工などせずに町ごと滅ぼすべきでした。そうすれば今になって悩むこともなかったでしょう」


「いや、そうじゃない」


「いえ、オーマ様。そういうことなのです」


 しんと、透き通ったアーリアの声があたりに染み渡っていく。


 ぞくり。


 アーリアの声に背筋が凍る。まさか、本気で言っている?


「手こずると思ったなら、魔王さまの力を借りて早急に決着をつける。それが私のすべき決断でした」


「まさか――」


 その魔王の力で、今、この町を滅ぼそうとしている・・・?


「いえ、そういうわけでもないです」


「無いのかよ!」


 あっさりと陰謀が否定されオーマは肩透かしを食らう。


「とはいえ、このまま引き下がるのは癪なのです」


「帰ってくれ。大人しく」


「それは魔族を舐めすぎというものです。オーマ様。それに一つ借りを返さなくてはいけません」


「借り?」


「先ほど言いましたよね。私たちは売られたのです。そこにいる盗賊によって。その存在をばらされた」


「え?」


 シーファが、気の抜けた声を出す。何故そこで自分が出てくるのかが分からないと言いたげだ。


「それは、むしろお前たちの不注意だろう」


 シーファを庇うわけでは無いが、自分たちで勝手に接触しておいて他者に伝えられたら裏切りというには言い掛かりが過ぎる。


「そうですか? なら、もう一つ、言ったはずですよ。セラさんによる内乱を解決できるのはオーマ様だけだと。そうでないと死人が出ると。ねえ、シーファさん」


「それがなんやっちゅーねん?」


 シーファが今度は何を言い出すつもりかと警戒しながらに言う。


「解決、出来ていませんよね」


「あ」


「え?」


「解決してません」


「そう・・・・なん?」


 牢屋にいたために状況を把握できていないのだろうシーファが恐る恐るオーマに問いかける。それを受けてオーマもまた断言できなくなる。


「俺、は、見ていないが・・・解決はしたはずだ。セラは死んだ」


 アーシェの体と共に死を迎えた。そう聞いている。


「なるほど、ですがそれはおかしな話です。アーシェさんは死んでいないと信じるのに、セラさんは死んだと決めつけるなんて」


「死んで、ないのか?」


 そう驚いたように尋ねるオーマにアーリアはふう、と一息つく。





「説明は十分ですね。オーマ様が動かなければ誰か一人、死ぬ。それは事実です」


 なんの脈絡もない、恐ろしく一方的な宣告。何の根拠もなく、アーリアはそれが事実だと告げる。


「それが信じられないと言うのなら、もう、一人に限定する必要もありません。オーマ様が動かなければ、事件が解決しなければ、この町の全ての人間を私が殺します」


 更にアーリアは狂気の宣言を重ねる。入れ替わり事件、解決しないなら全て殺すと。なのにその解決方法は曖昧なまま、何をもって解決とするのかも不明のまま。ただ告げる。


「ふざけたことを言うな!俺が動くって何だよ!セラを殺せとでもいうつもりか!?」


 筋のない滅茶苦茶な犯行予告にオーマは焦りを見せる。アーリアの言葉には躊躇いが無かった。人を殺すことに、人の死に感じるべき躊躇が無い。更には、それを冗談などで言っているわけではないことが、不自然なほどに、オーマに伝わってくる。


「なんならその『誰か一人』は私でも構いませんよ。私を殺せるのなら、ですが」


 相変わらず傷つけられるなどとは欠片も思っていない様子で、オーマに背を向けたまま、オーマのことを追い詰めていくアーリア。


「何のためにそんなことを・・・」


「魔族が人間を攻撃するのに理由は要りませんよ。強いて言うなら私の八つ当たりでしょうか。何せ、まんまとしてやられたわけですから」


 それが本当の理由だとはオーマには思えない。けれど理由に関係なくアーリアは本気だ。


「お前は俺に、どうして欲しいんだ」


 だから、あくまでも冷静に解決の糸口を探る。アーリアも目的があるからこそ、こうして会話と言う形をとっているんだ。その気になれば今すぐにでも暴力に訴えられるというのに。


「オーマ様が何もしなければ、人が、死にます。なら、助けるのが勇者としてすべきことではありませんか?」


「それが俺の仕事だと?」


 その質問にアーリアは言葉では答えず、小さく頷くことで回答とした。魔族がそれを望むことのちぐはぐさを誤魔化すように。


「オーマ様。救ってください。あなたが勇者であるというのなら。失われようとする命、その全てを」


「アーリア、お前・・・」


 背を向けているアーリアから発せられる気に、オーマは言葉をつまらせる。お前・・・そんな神秘的なことを言っておいて、なんでそんな、嫌そうなんだよ。


 命を救えという要求も驚きだが、それを不機嫌極まりなく言うアーリアは一体なんなのか。


「―――くえすと、開始です」


 クエスト。耳障りの悪い言葉でアーリアがオーマの逡巡を切り捨てる同時に。


 どごぉーん!!!!!!!!


「な!?」


 突如として鳴り響いた轟音。土煙が舞い、視界を塗りつぶす。驚きが支配する間に腕からアーリアのぬくもりが消えてしまう。


「しまっ!ちっ・・・『分身Ⅰ』!」


 アーリアの逃走を防ごうと、視界定まらぬ中、オーマは分身を再び作り出す。


「アーリアを捕まえ―――」


「・・・・・。」


 直後、土煙から目を庇っていた手を何者かに掴まれ、強引に引っ張られる。長く座ったままでいたオーマがその挙動に合わせられたかというともちろんノーである。


「なん!? おまっ」


 土煙の向こうに人影を見た瞬間にはオーマの体はその土煙の方へと引きずり込まれ、オーマの声はそこで途切れた。





「それとアーシェさんが、けほ、死んでいないと言った理由、けほ、ですが」


 ・・・・・・・。


「本人に聞いてください。けふっ」


 残されたアーリアはオーマのいなくなった壁の穴に咳き込みながら語り掛ける。返事は無いが、言うだけ言っておこうとするのはひとえにアーリアの生真面目さが為せる業である。


 土煙が晴れたあと、牢屋からいなくなっていたのはオーマ(本体)だった。牢屋の壁に綺麗な円形の穴が開き、その奥は暗く、どこかへと繋がっているようだ。


「ごめんなさい、オーマ様。私には止められない人が・・・・大勢いるんです」


 オーマの消失を見届けたアーリアは小さく呟いてフードをかぶり直す。


(願わくば、誰も死なない世界の、第一歩を歩まれますよう)


 祈る相手もいないアーリアはただ心のうちで願うにとどめた。


「あいつ、うちのことほって行きよった。どうしてくれよう」


 こちらでも出来ることはしておくので。


 アーリアは牢屋の壁にぽっかり開いた穴に、背を向けた。





 そして、アーリアは驚きに目を開く。


「・・・・」


「オーマ様の分身・・・」


 振り返った瞬間、アーリアは正面から抱擁を受けた。それはたった今オーマが作り出したオーマの分身によるもの。思わずアーリアは硬直する。けれど、それだけ。命令を遂行した分身は、それ以上はなにもすることはなく、ただアーリアを抱き締めているだけだった。


 「捕まえろ」と命令されて、こんな優しい抱擁になる。突如として突きつけられたお人好しっぷりに、意図して引き締めていたアーリアの頬がほころぶ。


 分身をどうしようか、アーリアが考えたのはほんの一瞬だった。アーリアは声に出してオーマの分身に二言三言伝える。


 その後、オーマの分身がアーリアの頭を撫でることとなるが、それが決してアーリアの欲望とは関係していなかったことを誰にともなく断っておく。


 次、アーリアが動き始めたのは五分後のことだった。


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