魔王の角(Ⅰ)
「ねえねえ、シャルこれみて、これ」
「なんっすか・・・?」
オーマと協力して、リアン軍と魔王軍の衝突を防いだ後、戦地の北方、平原にて駐留していたリアン軍と、それを誘導していたシャルと合流した。
「オーマにもらったの!」
「はいはい、よかったすね~」
「何で、投げやりなの・・・?」
「こっちは、なかなか言うことを聞かない兵士の方々をやっとこさ落ち着けたところっすから。というか・・・オーマって誰っすか?」
疲労感をにじませながらもこちらの話を聞いてくれる。
「ん~、私の恋人?」
「はあ!?」
「え、何でそんなに驚くの?」
「何でって・・・姫様っすよ!?姫様に恋人なんかできてたら、ウチがクオウ様に殺されるっすよ!」
「あ~もちろん、父様には言わないでね?」
「言える訳ないっす・・・」
恋人?いつの間に・・・?などとぶつぶつ言うシャルに構わず、
「そんなことより、ほら見て見て『魔王の角』、オーマがくれた~。にへ~」
「そんなことって・・・・・・・・・え?・・・・・・・『魔王の角』・・・・・・?」
「うん、『魔王の角』!」
「・・・・・・・なんで、そんなレアアイテムを、そのオーマ・・・さん・・・が持ってたんすか?」
シャルがすごい食いつきをしてくるので、驚きながらも興味をひかれる。
「レアアイテムなの・・・?」
「そうっすよ!それを触媒にすればどんな大魔法だって容易に使えるっす!そもそも『魔王の角』なんて、希少アイテム、まだまだ解明されてないことがたくさんあるっすよ!売る所に売れば、それこそ・・・・1Gで売れるっすよ・・・」
「1G・・・・・・!」
それはつまり、真のレアアイテムの証。誰にも価値が決められないなら、いっそ1Gでいいか、といういい加減極まりない買い取り価格。
逆に言えば価値のわかる相手になら言い値で売ることも可能だ。
だが・・・
「売らないよ?」
オーマがくれたオーマとの繋がりを売れるわけがない。
「当たり前っす!うちがいるのに、売っちゃうなんてとんでもないっす!任せてください!徹底的に解析して、レプリカを造って、それを他のアイテムと錬成して、うひ、うひひ、夢が広がるっす・・・」
何か怪しい笑い声を上げているシャル。黒い、黒いよ。
「え~と・・・・やだ」
一度渡したら返ってこない気がする。
「何でっすか!?そのアイテムの研究が進めば、人族の魔法レベルも数段上がること、間違いなしっす!そうなれば、今みたいに魔王軍に攻められることも無くなるっすよ?」
「これは、オーマが私にくれたものだから。ずっと私が持ってる。それにそんなことに使ったら、オーマを騙したみたいで、いや」
「・・・なら、そのオーマさんにも聞いてみるっすよ!人族の未来のためにきっと協力してくれるっす!」
「いや」
「そう言わずに~~~」
シャルが珍しくしつこい。
「なら、オーマが良いって言ったらね」
「はい、ぜひ会わせてくださいっす!」
オーマには後で根回ししておこう。これを手放すなんてとんでもない。
「それにしても、その『魔王の角』、何か欠けてるっすね?」
「欠けてる?」
「はいっす。詳しくはわからないっすけど、本来の力が発揮できていないような、そんな印象を受けるっす」
「ふーん、・・・・まあ、そりゃ、本体が欠けてるもんね」
むしろ、角の方が本体から欠けているわけだが。
「それを埋めることができれば、きっともっと性能が上がるっすよ!ほらっ、うちに任せる気になったっすよね!」
「いーやー」
「むう」
「それよりも、今は軍のことでしょ。とにかく、ニューベルまで退かせよう」
「先に『魔王の角』の自慢してきたのは姫様っすよ」
「だって・・・・えへへー・・・オーマがね~離れたくないって言ってくれたんだよ?」
「だめだこの人・・・うちがしっかりしないと」
「でね、私のことぎゅって抱きしめて、顔真っ赤にして―――」
「はあーーーーーーー」




