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第十話 過去の扉

「ふっ、愛のエデンは確かにあったよ」


「それは良かったな」


 リンたちが戻ってくる。幻惑茸の胞子自体に後遺症となるようなものはなかったようでリンもまたけろっとしていた。共に帰って来たたまちゃんは頭が痛そうにしていたが。


「おや? そちらのお嬢さんは?」


 リンがセラに目を止め至極真っ当にその存在について尋ねる。至極当然な問いに至極真っ正直に応える。


「さっき捕まえた。盗賊の首領だそうだ」


「セラや、これからよろしくな!」


 仲間にでもなったかのような挨拶だが、もちろんそんな事実は一片も無い。


「マスターシーフ!?」


 何故か過剰にリンは反応する。


「マスターシーフ!つまり、大切なものを盗んでいってしまうんだね!」


「え、ああ、まあ盗めるもんなら何でも?装備でもスキルでも何でも盗むで~」


「愛は・・・?」


「そりゃ無理やわ」


「なんと言うことだ!マスターシーフにすら盗めない、それが・・・愛!」


「まあなー、流石にあれは盗めへんわ」


 話が合ってしまっているらしい。



「盗賊の首領、金になるのか?」


「賞金首ならな」


 一方でセラを一瞥するなり目を鋭くするたまちゃん。全く、金に目がない奴はこれだから。


「オーマも人のこと言えない気がするのですが」


「なんの話だ?」


「いえ、別に」


「賞金首かどうかわからぬのか?違えば無駄骨ではないか」


「そうでもないらしい。勝手についてくるそうだ」


「何?自分から捕まりにか?おかしなやつだ。いや、どこかで罠にかけるつもりなのだろうな。殺すか縛るかして捨ておくべきか・・・」


「最近の子供はすれとんな」


「お前のその余裕が怪しがられる理由なんだけどな」


「なるようにしかならんて。気にしてもしゃーない」


 にしし、と歯を見せて笑うセラ。疑いの目を向けられているというのに気にした様子もない。


「大物なのか、馬鹿なのか」


 結局連れていくことにした、というわけではなく、シャツの上から影縄で縛り、放置していくつもりだったのだが、なんとこの魔法、足を縛らないという欠陥魔法であった。要するに勝手について来ている。


「受け入れとるあんたもあんたやと思うけどなあ」


「それはありますね。オーマは割と流され体質な気がします。この場の人数がそれを物語ってますよね」


「成り行きは大事やで」


 しばらく撫でられて落ち着いたのかヒメはいつもの状態だ。嬉しそうに俺の腕にすり寄っている。それがいつものであることも困り者だが張りつめているよりは良い。


 ヒメはセラを連れていくことに賛成していた。なにより『魔王のTシャツ』を渡したままにするのは許せないとのこと。なんでも、もっと似合う子がいるそうだ。俺の服なのに誰に渡すつもりなのだろうか。


 ちなみに犬の着ぐるみも自分よりリーナに似合うと思ったから譲ったらしい。後「あれは魔性のアイテムです」とか言っていたが何のことやら。


「一応言っとくが逃げたいなら何も言わず勝手に逃げろ。追うつもりはない。だが、もしお前が俺たちに危害を加えるつもりなら・・・・あーヒメが黙ってないからな」


「私ですか」


「そりゃ手ぇだせへんなあ」


「じゃあ全員そろったし森を抜けるぞ」


 オーマはそう言うと、未だ木にもたれたまま眠っているシャルを担ごうと、ヒメに手伝うよう目配せをする。


「何自然に戦闘から外れようとしてるんですか。シャルは私が背負うのでオーマは戦闘を頑張ってください。オーマとリンさんの二人なら戦力に問題は無いですよね」


「僕とオーマの愛の連携をお見せできるというわけだね」


「ヒメ、あいつあんなこと言ってるが良いのか?」


「いいですよ?」


 いいんだ・・・。


「存分に他の方とも愛の力を育んでください」


「お前とも育んだ覚えがないんだがな」


 背負ったままでも魔法ぐらいは使えるのだが、ヒメはまた積極的に俺を戦いの道に進ませようとする。


 ヒメが既にシャルを背負ってしまったので、仕方なしにリンとの共同戦線が始まる。セラには自分で歩いてもらう。


「うちとも愛、育んでええんやで?」


「じゃあ行くか」


「リーナ君がいないようだが?」


「帰ってご飯を食べているはずだ」


「そうか、それはいいことだ」


 暗くなる前に森を抜けようと今度こそ俺たちは先を急いだ。


ぶふっ!


 何かを踏んだ。


「おおう」


ぶわっ!




 その後、俺のアイテム袋の中の治療系アイテムをヒメとリンと三人で均等に配分した。


 夜になった。







~シャル~


「えっとリーナさん、だったっすか?」


「はい、リーナちゃんです」


 シャルの目の前でふよふよと浮かぶ犬の着ぐるみの小さな女の子。最初にあった時から楽しそうな笑顔を見せているがこんな子供でも魔族であることに変わりはない。シャルはずっとリーナとの会話を避けていた。リーナに対してはクロよりも遥かに危険性を感じていたのだ。だが、この状況において見て見ぬ振りも出来なかった。


「何故こんなところに?」


「こんなところって、シャルさんはここがどこか、わかってるんですか?」


 言われて意識を向けるまでもない。リーナ以外全てが白く染まっている。見渡しても白い光景が連続するばかり。この光景をシャルは知っている。


「心象世界っすね」


「そうです。ここはシャルさんの心象世界です」


 何も存在しない無の世界。無でありながらも全てを内包する世界。望めば何ものをも存在させられる世界。拒めば何ものも存在できない世界。

 いつだったかちょっと無茶して魔法を使おうとしたときに来てしまった世界だ。あの時は変な扉があったので入っていろいろやっているうちに、魔力が増えた。魔法もあっさり使えるようになり、後でここがどういう場所なのかを知り、儲けもん程度に考えていたが。

 ここはいわばシャルの心の最も深い部分。自分と向き合うための場所だ。ならばこそ。


「勝手に入ってこないで欲しいんすけど」


「いや~、夢を見てる人がいると覗きたくなる性質でして」


「悪趣味っすね」


 ここにいることと夢を見ることとは全く別物であるはずなのだが、どちらにしろ悪趣味には変わらない。


「ですよね。あ、シャルさんの体はばっちり保護されて、今ヒメさんに可愛がられているので安心してください」


「そうっすか・・・・、ふふ、そうっすか」


 白の世界が青く滲んだ。哀しみの色。


「さて、本題に入りましょうか」


「本題?」


 おうむ返しに聞き返された言葉に、リーナは鋭い刃物のような言葉をシャルに向ける。


「シャルさんが閉ざしている過去について。あるいはあなたが気にしてる少年について」


 瞬間、今度は世界が赤みがかりわずかに波打つ。それは一言で言うなら苛立ち、その証左。


「・・・あなたは何を知ってるんすか?」


「何も? 私が知っていることは、シャルさんも知っていることです。でも、私と『シャル』とでは意思も記憶も考え方も違う。なら結論も違うものになるのは必然ですね。・・・私は、さっさと気づいてしまうべきだと思います」


 ふよふよとリーナがこの世界を自由に移動する。その先にあったのはそれまで存在しなかったはずの、シャルの意識の外にあった扉。


「・・・・・・扉?」


 鎖でがんじがらめにされ、氷漬けにされた開かずの扉。シャルが以前見たことのある扉は触れれば簡単に開いた。だが今目の前にある扉は、そう簡単には開かないだろう。当たり前だ。開かれてもらっては困るのだから。


「シャルさんが目を背けていた過去。そこへつながる扉です。鍵もあります。さてどうしますか?」


 リーナの手の中から金色の光が溢れだしている。鍵と言うのはそれの事だろうか。


「・・・目的はなんすか」


「興味本位です。あと、オーマおじさんのアドバイザーとして、お仲間さんにもそれっぽいことをしてみてるだけです」


「そうっすか。ならうちから言えるのは一つっすよ」


「なんですか?」


「人の過去に興味本位で踏み入らない方がいいっす」


「どわ」


 何かに煽られたようにリーナの体は飛ばされる。


「でないと、殺すっすよ?」


 シャルはそれまで誰にも見せたことの無い酷薄な微笑みを浮かべていた。


「あーれー」














 目を開く。暗闇に目が慣れていくとそれがテントの天辺であることがわかる。視線をめぐらすとシャルにかけられた毛布の上に目を回しているリーナがいた。


「・・・・・」


「あーらーれー」


 どうしようか悩むも、警告はしたことだしこれ以上の仕打ちは必要ないだろう。シャルはゆっくりと毛布をずらし、自分が抜け出してからリーナごとゆっくりと地面に降ろす。そしてテントを出た。


 とても気分が悪い。





「シャル?起きたんだ」


「どうも」


 テントを出てみればそこにはヒメがいた。焚火の傍で座っている。見ればその膝の上にはオーマの頭が横たえられていた。寝ているのか寝息が聞こえてくる。


「珍しいっすね」


「一緒に見張りをやってたんだけど流石に限界が来たみたい」


「何と言うか、御迷惑をおかけしたっす」


 本来ネクスタの町からミツメの町へは一日で移動できる道程だ。予定通りいけば今頃は宿屋のベッドの上だったろう。それを邪魔したのはまず間違いなくシャルの行動だ。


「私はいいんだけどね。オーマが起きてから言ってあげて」


「はいっす」


 少し歩いて焚火をはさんだヒメの対面に座る。


 シャルがいたテントの隣にもう一つテントが立てられている。オーマとヒメの二人が見張りをしていたと言うことはテントでは十鉄鈴と楊珠玉が休んでいるのだろう。


「自分だって疲れているくせに見張りを買って出るあたりお人好しと言うか」


 シャルはオーマが無理矢理その任につけられた、とか、既に一回交代した後、などの可能性を除外している。それに気づきヒメは微笑みを浮かべる。実際にはたまちゃんと一緒に寝ようと言い出したオーマをヒメが諌めたのだが。それはもう全力で。


「なんすか、その笑みは」


「別に?」


「・・・・・・そう言えばヒメ様はうちだけの時は敬語がとれるんすね」


「うん。シャルを敬う気にはならないから」


「割とぐさっとくるっす」


 それはまあ、シャルだって自分をそこまで偉いとは思っていない。あくまで魔法がそれなりに得意なだけのどこにでもいる魔法使いだ。それでもそれなりに役に立っているとは思いたいのだが。


「友達になりたいからだよ?」


「・・・・・・・」


「あれ?照れたりしないの?」


「何で、うちと?」


「シャルが良い子だからだよ」


「他の人は悪い子なんすか?」


「他の人ともこれから友達になっていきたい。シャルはその第一号」


「オーマ様は?」


「オーマは別枠」


「何の枠かは・・・聞くだけ無駄っすね」


「シャルは、オーマに興味ないんだよね」


「あるっすよ?滅茶苦茶無茶苦茶あるっす」


「研究対象として?それとも同類として?」


「一応教え子としてっすよ。なんすかその二択」


「シャルはときどきオーマのことを冷たい目で見てる。オーレリアさんと会ってからかな?」


「・・・・・・」


 何故、起きて早々こんなにも踏み込まれなければならないのか。ヒメ様は何を考えているのだろう。


「そのくせ、教えるべきことは率先して教えてる。まるで―――」


「ヒメ様も疲れてるんじゃないっすか?見張り、代わるっすよ」


「うーん、もう少しこのままでいたいかな」


 ヒメは膝の上に眠るオーマの頭を撫でる。それに対しオーマが眉をひそめ、厭わし気に身じろぎしたため苦笑いしている。それっきりヒメは話を戻すことはしなかった。


「あの、それはそうとそこに横たえられている人間のようなごみは何すか?」


 シャルは焚き火の傍らに置かれた黒い塊に目をやる。こんなゴミが出るような生活はしていなかったはずだが。


「逆や!ごみのような人間や!って誰がごみのようやねん!」


「まだ起きてたんだ」


 喋りだした塊にヒメはすげなく返す。ヒメ様にしては珍しい言動から推察するに、これは、敵かそれに類するものということだろう。


「なんで寝ないの?」


「寝られるかいな!さっきからずっと殺気向けられてこっちは戦々恐々とさせられとんじゃ!あ、今のは別にさっきと殺気をかけたギャグやないで?」


「誰っすか?」


「盗賊の首領だって。オーマの愛人候補」


「嘘っすよね」


「何故ばれた?」


「いや、まあ」


「というか、殺気以前に縄がきついんやけど?肌に食い込んで寝にくいんやけど!」


 その女性は黒い魔力でできた縄で縛られている。その状態でシャツ一枚で横たわっているものだからあられもないことになっているが気にすることでも無いのだろう。


「『影縄』ってことはオーマ様っすか」


「うん」


「無視せんといて・・・」


「・・・・・その、うちが離脱してから何があったか聞いて良いっすか?」


「むしろ私たちが聞きたいぐらいなんだけど。シャルの方で何があったのか」


「覚えてないっす」


「そう」


「それだけっすか?」


「ん?」


「追及しないんすか?」


「うん。そういうことなら仕方ない」


「どういうことっすか」


 記憶が無い。辿ってみても最後に記憶しているのは例の気配を感じ、ヒメ様達と別行動を始めた時点のもの。そこから何があったか覚えていない。なら離脱した理由だけでも話すべきかと思ったが、話した結果、あいつが気になって別行動をとったなどと思われたら気が触れそうになる。なので黙っておく。


「私たちの方では、盗賊を倒しつつ気絶してたシャルを回収。その後、森を抜けようとしたんだけど私が幻惑茸を踏んでパーティがばらばらになるも盗賊の首領を捕まえたのち再集合。やっぱり森を抜けようとするもオーマが幻惑茸を踏んでばらばらになりながらもなんとか集まることが出来たけど暗くなってきたから危険と言うことでここで野宿することに。何か質問は?」


「だいたいわかったすけど」


「わかるんや・・・凄いな」


「そこのごみ人間の口は塞いでおいた方が良いっすよ。仲間を呼ばれたら面倒っす」


「なるほど」


「え、ちょっ、そんなことされたら更に寝れなくなるやん!お休みできひんやん!ていうかごみ人間はひどすぎる!」


「敵に人権は無いっすよ」


「まあ、そこまでやるのは可哀想だってオーマは言うんじゃないかな」


「そうっすか?割とあのひと冷酷っすけど。うちも何回見捨てられたことか」


「それはシャルが可愛いからだよ。可愛い子にはヒメと仲良くさせろって言うでしょ」


「言わないっす、聞いたことないっす、本気で意味が分からないのでやめてください」


「皆もっと素直になるべきだと思うんだよ」


「素直そのものなんすけど・・・」


 シャルが責めるような目をヒメに向けるもヒメはどこ吹く風、全く堪える様子が無い。


「妙な動きをしたら何してもいいってお許しは出てるから。仲間を呼んだりするのは無理だと思うよ?私がその前に止めるから」


「オーマ様を膝に寝かせたままで?」


「うん」


 何の逡巡もなく頷くヒメ。本気でそうする自信があるのだろう。その自信が敗北につながる、と言いたくとも言えないほど実力に裏打ちされた自信。なら、もしもを防ぐのは周囲の役目なのだろう。


「なんで、こんなに扱いが酷いんや・・・」


「盗賊だから」


「盗賊になったからっすよ」


「そういうのあかんと思うわ!これには深い事情があってやな!」


「まあ、盗賊関係なくオーマに手を出した時点で希望の目は消えました」


「それも不可抗力みたいなもんやん!」


「不可抗力で済めば勇者は要りません」


「勇者の存在意義って何!?」


「大きな声を出さないでください。オーマが起きちゃうじゃないですか」


「理不尽・・・」


「ヒメ様節絶好調っすね」











~オーマ~


「お・・ちゃん、・きて、おにい・・ん」


「ん・・・」


 体を揺すられる。まるで揺り籠だ。これではたとえ起きる直前だったとしても眠りに落とされてしまうだろう。


「起きてってば!おにいちゃん」


「・・・?」


「ねぼすけさんめ・・・妹様が起こしに来ましたよー」


 薄く開いたまぶたの向こうで女の子がしかめっ面をしている。


「妹?」


「そうだよ。お兄ちゃん最愛の妹の、―――だよ」


 なんと名乗ったのか、聞こえたはずなのにその部分だけ意識からこぼれ落ちていく。


「ああ、そう言えばそんな妹も・・・」


「やっと目が覚めた?」


「いなかったな。これは夢だ。よし、寝よう」


 そう答えた『おれ』は再び布団に潜り込み、微睡みに身を委ねる。


「ひどっ!?おにいちゃん、起きてってば!」


「あ~。何だー?一緒に寝たいのかー?」


「起きるの!」


「一緒に寝たいか寝たくないかで言えばー?」


「寝たい!」


「じゃあ寝るぞー」


「うん!・・・・あれ?」


「ZZZ」


「まあいっか・・・。お休みなさい。ZZZ」


 妹が兄にあっさりと籠絡され。




こそこそ


ひょこ


「やっぱり寝てます。全くこの兄妹は・・・・」


もぞもぞ


「全く、全く・・・・」


すりすり


「ZZZ」


 もう一人、布団に潜り込んできて寝息をたて始め。





「おいこらそこの三人!もう朝だ、だらけるんじゃない!」


 口うるさいあいつがおれ達を叱りつけ。




 それは、何気ない、いつもの朝で。


 いつまでも続くわけではなくとも、もうしばらくはこんな朝を送っていくのだと思っていた。


 けれども。この日を最後に。


 俺たちは。















「・・・・!」


「あ」


 目が覚めると双丘があった。その向こう側からここ最近ずっと目にしている顔が覗き込んでいた。


「ヒメ?」


「はい。起こしてしまいましたか?」


「いや、何故に膝枕?」


「今一緒に寝ちゃうと私が何してしまうか想像できますか?」


 そう言われて何も浮かばないと言えない程度に幻惑茸は恐ろしいものを残していった。


「英断だったな」


「自分でもそう思います」


「・・・・・」


 起きたならばと体を起こそうとするもヒメはそれをやんわりと止めてくる。続けさせる気か。


「もう起きるんですか?全然寝れてませんよ?」


「いや、そもそも寝るつもりは無かったんだが。それになんか変な夢を」


「夢、ですか」


「・・・・あれ?」


「オーマ?」


「思い出せない」


「夢ですからね。そういうこともあるのではないでしょうか」


「なんか、昔の夢を見ていた気がする」


「昔ですか」


「なんとなく懐かしかった」


「それは覚えていないのが残念ですね。もう一度眠ったら同じ夢が見られるかもしれませんよ」


「どうしても続ける気か?」


「是非」


「はあ。じゃあ、悪いけどもう少しだけ寝かせてくれ・・・」


 上げようとしていた頭をヒメの膝におろし、目元に影を作るように腕を頭におく。


「おやすみなさい」


 そのまま目を閉じる。


「なあ、ヒメ」


「はい?」


「お前だけは、いなくならないでくれ」


「へ?」


「すう・・・すう・・・」


「オーマ?」





「なんか、二人だけの世界作っとるけど」


「・・・・・」


「なんか、返事して?」


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