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第二話 忘れ物

 そんなわけで俺たちは仲間に楊珠玉と十鉄鈴を迎え再び旅立つことになった。


「じゃあ、準備を済ませたら宿屋前に集合ってことで」


「その必要はない、準備などすぐに済む」


 そう言いたまちゃんたちは宿屋の俺たちの部屋の隣の部屋へと入って行き、直に出てきた。


「待たせたな」


「宿屋に泊まってんじゃねーよ」


 確か一部屋1000Gとか。やっぱりこいつらを手伝う必要なかったかもしれない。





 弁当はもらえなかった。前の城下町での物は本当にサービスだったらしい。ぞろぞろと宿屋を後にする俺たち。俺が先頭にたち、順にヒメ、シャル、リン、たまちゃんと縦一列に並ぶ。


○ぞ

○ろ

○ぞ

○ろ



「何故並ぶ?」


 振り返って全員に尋ねる。


「特に理由は」


「ないっすよ?」


「横に並ぶと」


「迷惑だからな」


 韻を踏むように、すらすらと返ってくる返事。


「行きましょう」


 彼女らのよくわからない行動に、ある意味規律的な行動に俺は促されるまま従うしかなかった。


「戦闘にスムーズに移行するための伝統的隊列です」


「最初からそう言え」


「その上、狭い一人分のスペースでも先頭が抜ければ後続も確実に通り抜けられます!」


「その理由なら、その時だけ並べばよくないか?」


「確かに」


 協議の結果。


「戦闘に入るまでは自由に歩こう。むしろ一列禁止」


 と、なった。


 なのに。


「おい、くっつくな」


「隊列ですから仕方ないです」


「何で俺に寄ってくるんだよ!」


 現状・・・・。


 ○○

 ○

 ○

 ○

 


 おかしい。何も変わっていない。むしろ悪化している。


「移動中はなるべくコンパクトな方がいいんです。私とオーマ、二人で一つなんです」


「相変わらず仲良いっすね」


「あほうだな」


「ほらっ、あほ呼ばわりされた!」


「同じあほならくっつかなきゃ損です!」


「お前が離れればあほ扱いされないんだよ!」






「オーマ選手、ヒメ選手!待ってください!」


 宿屋を出て、わーわー言い争いながら東口に向かおうとしたところで何者かに呼び止められる。俺が振り返ると後ろを歩いていた三人がさささと俺の背後に回る。謎の動き。


「誰だ?あんた」


「俺だよおれおれ」


「だから誰だよ」


「闘技大会でアナウンスしてた俺だよ」


「いや、わかんないから」


 背後から呼び掛けてきた彼は、立ち止まった俺たちに追い付き俺の正面にたって一度咳払いをする。


「この度は魔物襲撃による大会中断、まことに申し訳ありませんでした。つきましては、こちらで景品をどうするかを話し合った結果、どうやらお二人は旅を共にする勇者一行であったとか」


「ああ、まあな」


「そこで、お二人の決着はあえてつけず、お二人の優勝という形で景品を贈ることにいたしました」


「おお」


「というわけでこちら優勝賞品の『エンゲージリング』となります」


――オーマたちは『エンゲージリング』を手に入れた!


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 俺とヒメは視線を交わす。


「続いて、こちらが副賞の50000Gとなります。お納めください」


――50000Gを手に入れた。


 五万G、最近聞いたような金額に背後から視線を感じる。


 どっちも導火線に火をつける賞品だった。




 そういえばあのおっちゃんはどうしているんだろうか。どこにいるか分からなければ渡しようがないしな。とはいえまずはこの指輪の所有権をどうするか。


「やっぱり欲しいか?ヒメ」


「あ、いらないです。オーマの自由にしてください。私はこっちで満足ですから」


 あっさりそう言ってヒメは左手の腕輪を見せる。何かものすごい力を感じたのは気のせいだろう。ただの木の腕輪なのだから。


「そうか」


 正直この展開は予想していた。そのために渡したというわけでは無い。あくまで今まで世話になった分とこれから世話になる分の礼を兼ねてだ。だが結果として『エンゲージリング』は俺のものとなった。おっちゃんはどこだ。


「じゃあ、行くか」


「待たぬか!50000G手に入ったではないか!」


 やっぱり言われるか。


「これはあれだ。なんていうか俺たちの未来への投資というかだな。いや、あー」


 別に渡してもいいのだが、そうすると俺の重大な計画が崩れ去ってしまう。男同士で安穏と眠るという計画が!


「?」


 まずい。ヒメが不思議がっている。たまちゃんたちの同行を渋っていた俺が、ここで渡さないのはおかしい。何と言ってこの50000Gを守り抜くか、いや、渡さないようにするか、俺の作戦の成功の如何はここにかかっていると言っても過言ではない。


「失礼。君が勇者オーマかな?」


「へ?」


 そこへ声をかけてくるダンディな声をしたおじさん。


「ぶしつけにすまないね。私は向こうの酒場を営んでいるマスター=サカバノというものだが」


 どうやら酒場の主人らしい。そんな彼が一体何の用なのか。


「昨晩うちを訪れた女性が酒代を君にツケていったんだ」


 マスターは簡潔に明確に事態を告げる。


 え?


「もし今日旅に出るというのなら払って欲しいのだが」


 ちょっと待て。酒代?ツケた?誰が・・・。


「すまん、・・・その女性の名前って・・・」


「ああ、オーレリアと言ったかな『後はよろしく~』との伝言だ」


 恐ろしく渋い声での、かのオーレリアと全く同じ調子への変化。こいつ只者ではない。いや、そんなことはどうでもよかった。ただ無性に叫びたかった。


――クエストが発生した!


――ツケを払え!


(オーレリアーーーー!!!!!)


「あはは」


 ヒメが苦笑いをする。全く、とんだ置き土産だ。見逃すんじゃなかった。


「そのツケ、いくらだ?」


 幸い今、50000Gを持ち、今すぐに使いたい一心だ。渡りに船ともいえる。


「50000G」


「オーレリアーーーー!!!!!」


 あいつ倒せば50000Gぐらい落とすんじゃないだろうか。いや、魔族が金貨を落とすのかは知らないが。とりあえず見逃したことを後悔する。


「はあ」


 叫び終えたオーマは一つため息を吐く。


「おい、ぬし、まさか・・・」


「まあ、仕方ないか」


――オーマは50000Gを支払った


「確かに受け取った。ふむ、折角だ、これを是非冒険に役立てて欲しい。代金はサービスだ」


――オーマは星酒『天波』を手に入れた!


「どうも」


 お酒をどう冒険に役立てればいいのか。よくわからないが。これで無事作戦は遂行される。



――クエストを達成した!



「貴様は国の大事とツケとどっちが重要かもわからんのか!」


「皆まで言うな。わかってる。ツケの支払いの方が大事だよな!」


「そんなわけないだろう!」


 隊列を無視したたまちゃんが俺の胸元を掴み揺さぶってくる。


「あー、残念だったなー。ツケさえなければなー」


「この愚か者が!」


 仕方がないじゃないか。夜に安心して眠れないというのは一大事なんだよ・・・。





「あの二人、似てますね」


 言い募るたまちゃんとそれをのらりくらりと躱すオーマ。それを見てヒメが呟く。


「そうっすか?」


「うん」


 髪色が同じこともあってそう感じるのかもしれないが、特にツッコミという一点において近しいものを感じる。そう言う意味ではシャルも似ていたのだが、今ではすっかりスルースキルを身に着けてしまって。


「・・・・・・・」


 そんな会話の傍らでリンが男二人を見ながらあたたかな笑みを浮かべる。男性が見たら目を奪われそうな笑みを、しかし見ていたのはヒメだけだった。


「リンさん笑顔」


「失敬」


 指摘されたリンさんは笑みをひっこめる。表情を失くした能面のような顔は吸血鬼の少女とはまた違った趣で人形を想起させる。この顔がリン(金髪)さんになるのだからおもしろいものだと思う。


 実を言うとヒメはリンに対して苦手意識がある。今のリンはともかく、初対面のリンがのたまったセリフが許容できない内容であったからだ。私のことを天使と言ったり、突然告白してきたり。何というか、夢を壊された子供の気分。オーマに言って欲しかった。


 とはいえ、その正体がこの綺麗な女性であるならばヒメに避ける理由は存在しない。ノーカンだ。


「リンさんは女性なんですよね」


「・・・・・ええ・・・・まあ」


 何故か歯切れの悪い返事にヒメは彼女を口下手認定する。


「何で男の格好を?」


「それは・・・・」


「言いにくいことですか?」


 口下手相手に矢継ぎ早な質問は適さない。だがヒメは敢えてそうした。


「・・・・・・・・・・いえ・・・・その・・・・・と」


「「と?」」


 シャルと共に続きを促す。


「ともっ・・・・」


「「とも?」」




「何で、あっちは一触即発の空気になってるんだ?」


 黒いオーラがリンから漂っている。何かを言おうとしているようだが、それに対し身構えるヒメとシャル。触れてはいけない。


「・・・・・・・・・話を逸らすな」


 たまちゃんの眼光が俺を貫く。ああ、こっちも無駄に眼力あるなあ。初対面の頼りなさげな少年の顔などどこへいったのやら。


「最初にあった時の気弱な性格はどこへやったんだ」


「あんなもの演技に決まっているだろう。『模醜もぶ』という技だ。見つかりにくくなる」


「その技続けなくていいのか?」


「隠れる必要がなくなったからな。話を戻すが―――」


 戻されてしまった。





「ともだちが欲しかった!!!!」


「「・・・・・・?」」


 ついにリンが沈黙を破る。・・・が。


「待ってください、何で友達が欲しいと男装することになるんですか」


「男装すれば女の子の友達が出来ると聞いた」


「誰にっすか?」


「主に」


「「・・・・・」」





「おい、なんかすごい見られてるぞ、主」


「くっ」


 たまちゃんは手を離した。


「用事が済んだならさっさと行くぞ!」


「話を逸らすな・・・だろ?」


「仕方ないだろう!!あやつは人見知りで友人がいなかった!友人を作るにはまず性格をどうにかせねばならない!だから、ついあの時・・・軽い気持ちで言ってしまった」


『男装の麗人とやらは女友達が多いらしいな』


「それがまさか・・・男装の変人になるなどと思わなかったのだ・・・」


 言い得て妙だな。


 そんなたまちゃんの告白を聞いたヒメが何かに思い当たる。


「じゃあ、まさか『僕と愛について語り合わないか?』とか『共に歩んでいこうではないか』とかってまさか」


 ヒメが恐る恐ると言った様子で尋ねる。そんな事言われてたのか。そりゃ避けるわな。


「友達になってほしい」


「伝わりませんよ・・・」


 ヒメが脱力する。まさかの真実に俺も悲しくなってきた。


「そういや俺のこともやたら友だとかなんとか言ってたな。女ではないんだが」


 たまちゃんが突っかかるのを止めたので俺もその話題に加わる。


「もう人間なら誰でも良かった」


「やさぐれてたんですか」


「オーマが初めての友達」


「男友達もいなかったのな。しかも友達確定してるし」


 俺にとっても記憶上初めての友達なわけだが。それはそうとして――


 俺は今までリンと随分と仲良さげに振る舞っていた主様に視線をやる。


「主様は友達じゃないのか」


「主は主だ。友にはならん」


 そう言う事か。ぶっきらぼうにつぶやくたまちゃんに何となく二人の関係性を察する。それにしても、まじで女だったのか。いや、まて、二重人格で、あくまでも裏の顔は男なのでは・・・?そうだよな。どう考えてもあいつは男だったよな。


「そういうことなら、リンさん、私も友達になりたいです」


 ヒメはそれまでの確執をまるで無視して手を差し出す。


「・・・・わ、私は」


 恐れからか退くリンの手をヒメは素早く掴み取り握手する。


「・・・・・」(にこにこ)


「・・・・・?・・・?」


「これでもうお友達ですね」


「・・・へ?」


「その、投げ飛ばしてごめんなさい」




 その後、ようやく理解が回ったリンの不器用ながらもほくほくした顔は道行く男どもを立ち止まらせたとか。




「あ、自己紹介がまだでしたね。私はヒメ=レー・・・」


 自己紹介をしようとしたヒメが姓名の部分で言葉を止める。そして助けを求めるようにオーマに視線を向ける。


 どうしろと。おそらく王族であることを隠したいのだと思うが。シャルの時にもそうだったように。


「レー・・・・レー」


「レーレ・・・?」


 口ごもるヒメの言葉をリンはそのままつなげて受け取った。


「そう、それです。ヒメ=レーレです!よろしくお願いします!」


 勢いに任せてヒメの偽名が決定した。名も隠すべきだと思う。


「シャルロット=ウィーチっす。好きに呼んで下さいっす」


 シャルもヒメの自己紹介に続く。それだけ言って後は我関せずと言った態度だが、このタイミングで名乗ったということは友達になろうということなのだろう。微笑ましい。


「ヒメに・・・シャルロット・・・・ほおぉお」


 変な声を上げ感動するリン。友達が出来て嬉しいらしい。リン(金髪)さえ現れなければきっとすぐに友達にはなれたと思う。

 それを傍目にたまちゃんは目を鋭くする。


「ウィーチ、それに・・・ヒメか。随分な連れだな」


「何か言いたげだな」


「ふん」


 何か含むもののある発言。ヒメの正体に気付いたのだろうか。


「それを言うならそっちも結構な連れじゃないっすか。イース国の近衛隊『十鉄じってつ』その第二位、孤高の金鈴。よくそんな人をたかが使者が連れてこられたっすね」


「ちっ」


「シャル?」


「何でもないっすよ」


「ふーん」


 どうやら俺のよくわからないところで牽制しあっているようだ。そこらへん、俺は気にしないでいいだろう。ただ前に進めさえすればそれでいい。




 さて、おっちゃんを探すのはめんどくさいし、放置で良いか。などと考えていたら町の出口で腕を組んだおっちゃんが待ち構えていた。

 試しに素通りしようとするとおっちゃんは俺の行く手を塞ぐように移動して何か言いたげな目で見つめてくる。後退するとおっちゃんは元の場所に戻る。今度は割と早めに脇を抜けようとする。それを読んでいたかのようにおっちゃんが正面に移動する。

 だがぎりぎり抜けられる!俺はそのままスピードを緩めずに――。


――そう言えばおっちゃんと約束していた


 は?


――おっちゃんに話しかけよう


 いやいやいや。何だよ今の心の声。俺はそんな素直な性格してないから。


「オーマ?何してるんですか?」


「いや、町の外に出ようとしてるんだが。おっちゃんが邪魔で」


「ああ、クエスト発生してましたっけ」


「そやつに話しかければいいではないか」


「いや、そうなんだが」


 どかせばではなく話しかければ。話しかけるのが正解とでもいうのか。


「ちなみに町の反対側に回っても同じ光景が待ってますよ」


「何でだよ!」


「おっちゃんは素早いっすからね」


 うんうん頷く背後の連中。


「え、なにそれ、共通認識?クエストって途中でやめていいんじゃなかったのか?」


「サブはいいですよ」


「はい?」


「メインはダメです」


「メイン?」


「どうしてもと言うなら方法は一つあります。ただ、その犠牲にこの町は滅びます」


 何でそうなる。


「話しかければいいんだろ・・・」


 俺は諦めて素直におっちゃんと会話する。


「『エンゲージリング』持ってきたぞ」


「流石は兄弟!どこまで親切心に溢れてるんだ!ありがとよ、これで弟にプロポーズできらあ」


「・・・・・頑張れよ」


 もう、どうでもいい。


「おう、成功したら式にはきっとあんちゃんを呼ぶからな!それとこれは礼だ、受け取ってくんな!」


――オーマは『おっちゃんのランニングシャツ』を手に入れた!


「・・・・・・・・」


「それは・・・・」


 シャルが驚きの声を上げる。何か凄いものなのだろうか。


「『おっちゃん』に転職できる幻のアイテム・・・」


 あ、いらないです。


 俺は自然にアイテム欄から『おっちゃんのランニングシャツ』を選び『捨てる』を選択する。


―――『おっちゃんのランニングシャツ』は捨てられない。


 捨てられない。仕方がないので『渡す』『たまちゃん』へと変更する。


―――オーマが持っていないと意味は無い。


 渡せない。


「の、呪われてる」


「じゃあな。あばよ、あんちゃん」


「・・・・・・・・とにかく用事は全部済んだ。改めて出発するぞ」


「おー」








 相も変わらず地平線まで続く平原を五人で歩く。誰も背負っていないのは久しぶりだ。


「それにしても、まだ何かすることがあったような気がするんだが・・・・」


「クロちゃんのことを気にしてるんですね。大丈夫、また会えます」


「え、いや、まあ、そうだな」


 きっと俺とヒメが思い浮かべたのは同じものだろう。あいつの無邪気な笑顔を。


(・・・・・・・・・・・・)


 クロって誰だっけ?


「そうっすよね、きっとまた、会えるっすよね」


 シャルまでがしみじみと呟く。


 全く考えていなかったとは言えない雰囲気。思い出せ、俺。










「オーマ、オーマを呼ぶのじゃ!」


 ネクスタの町の自警団の駐屯所。その一室で暴れる一人の女の子がいた。


「こら、お嬢ちゃん、暴れるんじゃない。すぐに親御さんが迎えに来てくれるからね~」


 ぶかぶかの着物がその動きによって大きくはためくが不思議なことにそれ以上乱れることも肌蹴ることも無い。そしてそんなことはお構いなしに幼女は目の前の男に暴虐の限りを尽くす。


「わらわに親はおらぬ!さっさとここから出さんか!」


 幼女は扉の前に立ちふさがる男のすねをえいえいと蹴りつける。それに堪える様子が無かった男が今しがたの幼女の言葉に愕然とする。


「おい、この子、昨日の戦いで親を・・・」


「ああ。くそっ、俺たちは・・・・俺たちはなんのために戦っているんだ!」


「はあ、はあ」


 壁を殴り己の無力を悔やむ男二人。息を荒げる幼女一人。そこへ一人の偉丈夫が入ってくる。


「俯くな!私たちは私たちにできる最高の戦いをした!これから私たちがするべきなのはそれでも守れなかった人のためにこの子を笑顔にすることじゃないのか!」


「団長・・・!」


「その通りであります!」


「オーマを呼べといっておるのじゃ!オーマが来ればわらわは満足なのじゃ!」


「さしあたり私たちにできるのは・・・・そう、いないいないばぁだ!」


「団長!!」

「団長!!」


「ではゆくぞ!私渾身の!!!いないいない―――」


「あほじゃこやつら・・・」


「―――ば、ぐほぉあっ!!!?」


 顔面凶器を今にもさらけ出さんとしていた団長が何かの飛来物に直撃し壁に顔面を強打する。


「団長!?」

「団長!!?」


「ごめんごめん、カリン。忘れてたよ、オーレリアとイーガルが」


 そして幼女の前に立っていたのは同じく幼女。同じ背丈に帽子の影から覗く同じ黒髪。服装こそ着物とワンピースと違いはあるものの歳の近い姉妹に見えないこともない。


「むう、迎えが来てしまったの」


「流石団長、とんでもない、いないいないだぜ」


「ああ、いないいないでこれじゃあ、ばぁで一体何が起こるってんだ・・・」


 団員の二人がそんな突然の乱入者に全く構うことなく壁に埋もれた団長を注視している。


「見えておらぬのか」


「そういうこと。じゃあさっさと帰ろっか」


「全く、収穫はオーマが抱きしめてくれたことだけなのじゃ」


「カリンはお姉ちゃんのこと疑ってないの?」


「それはないの。あやつらの娘がそのようなことをするはずがないのじゃ」


「クオウと知り合いだっけ?なんかいいな。今度カリン達の話も聞きたい」


「善哉善哉。苦しゅうないぞ」


 自警団員二人の前で満更でもない顔をする一人の幼女が姿を消した。


 その後捜索されたその幼女はこの町のどこにも存在しなかったことが判明した。彼女が一体何者なのか。親を亡くした古の亡霊ではないか。そうささやくものも後を絶たなかったという。








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