プロローグ
かつて世界には人族と魔族が存在した。互いに対立こそすれど、争いはない平和な日々。しかし、それを脅かすものが現れた。
魔族の王たる魔王の、唐突な世界征服宣言。魔王率いる魔王軍は暴威を振るい人間の領地を徐々に、しかし着実に奪っていった。危機感を覚えた人族の王は、古より伝わる勇者召喚の儀式にて事態の打開を図る。
かくして誕生した勇者は、魔王軍への快進撃を始めた。
魔族の軍勢、四天王、幾たび戦力を送り込もうと討ち取れぬ勇者を、魔王は危険視する。たった一人破竹の勢いで魔王軍を蹴散らし魔王の本陣、魔王城へ切り込んだ勇者は、魔王に挑み、激戦を繰り広げる。圧倒的力を誇る魔王、戦力の差は大きく、勝利の糸口さえ見つけられず、勇者は殺されてしまう。
しかし勇者は蘇り敗北を糧に再び挑む。何度目の邂逅だろうか。やがて勇者の力は魔王に拮抗するまでに至る。魔王は隠していた力を解放し再び優勢に立つ、しかしさらなる戦いの果て――ついに勇者の聖剣が辛くも魔王を貫く。
戦争の勝敗は決した。
人族による魔王軍の駆逐。勇者の凱旋。訪れる人間だけの平和。人族はこれからの繁栄に心を躍らせた。
そして―――世界は崩壊した。